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親魏倭王の小話集(小説編)

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本、主に小説についての小話集。Twitterに投稿した中でツリーを形成する長文ツイートを転載。
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#怪奇小説

親魏倭王、本を語る その21

【江戸川乱歩賞受賞作についての雑感】 今までに読んだ江戸川乱歩賞受賞作でおもしろかったのが、 『13階段』高野和明 『脳男』首藤瓜於 『連鎖』真保裕一 『放課後』東野圭吾 『写楽殺人事件』高橋克彦 『プリズン・トリック』遠藤武文 『翳りゆく夏』赤井三尋 あたりである。 1990年代以降は社会性の強い作品が多くなり、格段に読み応えがあるものが増えたが、反面、テーマや内容が重くなり、読んでいて疲れることも増えた。2000年以降の受賞作で最高傑作だと思っているのが『13階

親魏倭王、本を語る その03

【黒死館殺人事件】 ミステリー=推理小説に三大奇書と呼ばれる作品群がある。小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、夢野久作『ドグラ・マグラ』、中井英夫『虚無への供物』である。 このうち、小栗の『黒死館殺人事件』だけ読んだことがあるが、たいがい奇抜なミステリーを読んできた自分でも太刀打ちできなかった。その理由はふたつある。ひとつはストーリーがよくわからないこと。確かに殺人があって最後に犯人が明らかになるが、謎解きのプロセスが明らかでない。もうひとつはストーリーとペダントリーの主客逆転で、