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親魏倭王の小話集(小説編)

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本、主に小説についての小話集。Twitterに投稿した中でツリーを形成する長文ツイートを転載。
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#エドガー・アラン・ポー

親魏倭王、本を語る その26

【すべてはポーから始まった?】 コナン・ドイルやH・G・ウェルズ、スティーヴンソンらが活躍した19世紀後半~末は大衆小説がミステリー・SF・ホラー・ファンタジーなどに分化してくる時代で、この時期にそのジャンルの開祖となる作家が大勢生まれている。ミステリーはドイル、SFはウェルズ、ファンタジーはジョージ・マクドナルドといった具合である。 ところが、そうした個々のジャンルが分化する以前に、それぞれのジャンルのほとんどをエドガー・アラン・ポーが小説化しているのである。これは何度読み

親魏倭王、本を語る その16

【G・K・チェスタトンのトリック創案率】 G・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズはトリックが豊富に用いられていることで知られる。短編ミステリーブームの火付け役となったコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズにもトリックが用いられた作品はあるが、19世紀末~20世紀初頭の他の作家と比較して、チェスタトンのトリック創案率の高さは群を抜いているように思える。 この時代の作品は、今まで傑作集という形でしか紹介されてこなかったので、一作家当たり単行本1冊、おおよそ10篇程度し

親魏倭王、本を語る その05

【将棋差し人形とエドガー・アラン・ポー】 エドガー・アラン・ポーの作品の一つに「メルツェルの将棋差し」というものがある。取り上げられているのは18世紀に作られたチェスをする自動人形で、19世紀半ばに焼失した。人形は「トルコ人」と呼ばれ、ハンガリーの発明家ケンペレンによって制作され、死後、ドイツの発明家・技術者メルツェルが譲り受けた。 この人形のからくりを推理したのが「メルツェルの将棋差し」で、創元推理文庫の『ポオ小説全集』に収録されているが、短編小説ではなく評論あるいはエッセ