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親魏倭王の小話集(小説編)

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本、主に小説についての小話集。Twitterに投稿した中でツリーを形成する長文ツイートを転載。
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#ガストン・ルルー

親魏倭王、本を語る その28

【ポンペイ夜話】 『死霊の恋・ポンペイ夜話』はテオフィル・ゴーティエの代表的な怪奇幻想小説5篇を収録した作品集である。「死霊の恋」は吸血鬼ものの古典として広く知られているが、「ポンペイ夜話」もなかなかおもしろくて好きな作品。ポンペイの廃墟で見つかった「女性の胸の押し型」を見て心惹かれる男の前に夢か幻想か、古代ローマの麗人が現れ逢瀬を楽しむ。ファンタジーの傑作である。 同時期にプロスペル・メリメが「ヴィーナスの殺人」を書いているが、この時期のフランスに一種の骨董ブームがあったよ

親魏倭王、本を語る その04

【鮎川哲也の後継者】 鮎川哲也は日本においてクロフツ流のアリバイ崩しを完成させた立役者だが、その後継者と言えるのが津村秀介。津村は一貫して時刻表トリックにこだわった人で、『影の複合』など初期のノンシリーズものはけっこう読みごたえがあるのだが、ルポライター・浦上伸介を主人公とするシリーズものを書き始めるとだんだん展開がパターン化してきた。 鮎川哲也風のアリバイ崩しと言えば、鮎川哲也賞を受賞した石川真介も外せない。鮎川哲也賞受賞作『不連続線』は原稿の枚数規定のため結末部分が不完全