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親魏倭王の小話集(小説編)

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本、主に小説についての小話集。Twitterに投稿した中でツリーを形成する長文ツイートを転載。
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#アレクサンドル・デュマ

親魏倭王、本を語る:特別編(デュマの『三銃士』とその周辺)

アレクサンドル・デュマ(父)の代表作『三銃士』は、ガスコン男児ダルタニャンを主人公とする大河小説で、『三銃士』として広く流布しているのはそのいわばプロローグに当たる部分だという。昔、全巻の翻訳が出ていたようだが、今は見当たらない。 この「ダルタニャン物語」とでも言うべきシリーズの掉尾を飾るのが『仮面の男』で、角川文庫から邦訳が出ているが、抄訳らしい。 これはルイ14世の時代、バスティーユ牢獄に顔を隠して収監されていた、いわゆる「鉄仮面」の物語で、作中ではルイ14世の双子の弟

親魏倭王、本を語る その12

【江戸川乱歩の傑作集について】 江戸川乱歩の短編のうち、狭義のミステリーの代表作は「二銭銅貨」「D坂の殺人事件」「心理試験」「屋根裏の散歩者」の4編だと思うが、乱歩の作品集で最も纏まっていると思われる東京創元社『日本探偵小説全集』は「D坂の殺人事件」が欠けている。 乱歩の傑作集は多く出ているが、狭義のミステリー作品が纏められているものは意外と少なく、僕が目を通した中では新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』が上記4編を纏めて収録していてよかった。併録されている「二癈人」もミステリーと