親魏倭王、本を語る その01
【『天保図録』と護持院ヶ原の仇討】
松本清張に『天保図録』という天保の改革の顛末を描いた歴史小説の大作がある。昔、角川文庫から刊行されていて、上中下の3巻構成、いずれも500ページを超える大長編だった。現在は春陽文庫から再刊されている。 この中に「護持院ヶ原の仇討」という事件の顛末が載っていて、奉行所の検視報告が引用されている。これは幕臣で剣術師範の井上伝兵衛とその弟で松山藩士だった熊倉伝之丞を本条辰輔が殺害した(金銭トラブルとも言われる)ことに対する報復で、伝之丞の子・伝十