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親魏倭王の小話集(小説編)

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本、主に小説についての小話集。Twitterに投稿した中でツリーを形成する長文ツイートを転載。
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#チャールズ・ディケンズ

親魏倭王、本を語る その06

【ケストナーの大人向けユーモア小説】 ドイツのエーリヒ・ケストナーは『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』などの児童文学で知られるが、大人向けの小説もいくつか書いている。その中で有名なのが、ユーモア三部作と呼ばれる『雪の中の三人男』『消え失せた密画』『一杯の珈琲から』で、創元推理文庫に収録され、前者2冊は入手可能である。 このうち『消え失せた密画』だけ読んだことがあるが、これは古い細密画を巡る保険会社社員と盗賊団の攻防を描いた犯罪小説で、全編をユーモアで彩ったことで独特の味わいを醸し

親魏倭王、本を語る その05

【将棋差し人形とエドガー・アラン・ポー】 エドガー・アラン・ポーの作品の一つに「メルツェルの将棋差し」というものがある。取り上げられているのは18世紀に作られたチェスをする自動人形で、19世紀半ばに焼失した。人形は「トルコ人」と呼ばれ、ハンガリーの発明家ケンペレンによって制作され、死後、ドイツの発明家・技術者メルツェルが譲り受けた。 この人形のからくりを推理したのが「メルツェルの将棋差し」で、創元推理文庫の『ポオ小説全集』に収録されているが、短編小説ではなく評論あるいはエッセ