プロダクトマネジメントと意思決定のはなし
1/ 想定読者
意思決定を日々してる人
2/ 序文
ヘルスケアスタートアップのバックテックでプロダクトマネージャー(PdM)をしてる坪井(@yamato_tsuboi)です。
今のポジションになって半年ほど経過するのですが、PdMって難しい意思決定をする機会とてつもなく多いなと思ったので、意思決定について整理したいと思います。
PdMの役割も会社によって色々みたいなので、前提を共有しておくと、バックテックは社員がまだ10名満たない会社で、PdMは私一人、代表の福谷の直下で動いています(2021/03/09時点)。
3/ そもそも意思決定って何だ?
一般には,ある目標達成のための諸手段を考察し,分析し,その一つを選択決定する人間の認知的活動をいう。
引用:コトバンク
僕としては、下記がポイントだと思ってます
1. あくまで目標達成が前提
2. 判断ではなく決断
4/ 良い意思決定とは?
身も蓋もないですが、良い意思決定かどうかは、目標達成できたかどうかの結果で判断するしかないと思います。
裏返せば、意思決定する前の段階では、その意思決定が良いかどうかは、仮説の域を出ず、常に不確実性を孕んでいると思います。
5/ 意思決定に影響する変数
マインドマップで変数を分解してみました。
細かくすれば、いくらでも分解できますが、こんな感じかなと思ってます。重要な変数が抜けてたら教えてください(きっとあると思います)。
一つ一つ、強弱つけつつ、説明します。
【意思決定の対象】
■ 目標設定:
目標は本質的に自分達が達成すべきものに設定されているかが最重要です。
目標設定が間違っていると、その後の意思決定プロセスすべてが狂ってしまいます。目標にも、ミッション、ビジョンレベルの上流のものから、KPIレベルのものまであります。
目標設定が正しいか迷った時は、上流のレイヤーまで戻って、そもそもどうあるべきかから逆算して、考え直す必要があります。
PdMとしては、全社のミッション、ビジョン、OKRや経営戦略から逆算して、開発チームの目標をアラインしていくことが重要です。
ただ「言うは易く行うは難し」の典型で、未来の姿を解像度高く描けるようには時間がかかります。最近少しずつですが、未来のプロダクトで実現したい世界の解像度が上がってきてます。
■ インパクトの大きさ:
連続/非連続のどちらの成長を狙っているのか、逆にリスクはどれくらいあるのかによって、意思決定の難易度は変わります。
ただ、リスクある所にチャンスありです。非連続な成長を求めるなら、リスキーで困難な道を選ぶべきです。ただし、無鉄砲にリスキーな道を選ぶのは違います。
これに関しては、ファーストリテイリング柳井社長の「経営者になるためのノート」で書いてある下記のフレーズが印象に残っています。
リスクは、しっかり計算すること
「リスクを恐れず」と言っていますが、時々誤解する人がいるので、あえて伝えますが、これは「リスクを計算しないで」と同義ではありません。
リスクを取ってでも挑戦するべきか、逆に挑戦しないことによるリスクはあるのか、などを短期的ではなく、長期的な目線で計算する必要があります。
こちらにある「死亡前死因分析、事前検屍 (premortem)」という方法も参考になります。
下記の問いをするという方法です。
「今が1年後だとして、今決めた計画を実行しました。しかし大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのかを簡単にまとめてください」
人は自分の決めたことを楽観視しやすい動物です。一歩ひいてみるクセが重要です。
■ 不確実性の大きさ:
極論、白黒答えがはっきりしてることに関して、意思決定する必要はないと思います。それなら機械で十分です。
PdMが扱う意思決定の対象は、たいていの場合、ある程度以上の不確実性を孕んでいるはずです。確実性の高いものは、メンバーにどんどん任せて良いと思います。不確実性が大きい対象ほど、意思決定が難しくなり、PdMの出番です。
スタートアップでは、課題、ビジネスモデル、実行可能性など、様々な不確実性と向き合い続けることになります。
不確実性と向き合い続けるのは、想像以上に胆力がいります。不確実性の大きいものから取り組み、様々な検証を通して、不確実性を小さくしていく必要があります。
■ 1-way / 2-way door:
後戻りできない1-way doorなのか、後戻りできる2-way doorなのか。
経営理念>戦略>戦術といった具合に、上流ほど1-way doorに近いと思います。ただ、個人的には、1-way doorも突き詰めれば、2-way doorだと思っているので、グラデーションで考える方がしっくりきてます。
なお、PdMレベルであれば、ほとんど場合2-way doorだと思って、失敗しまくる方が良いと思ってます。
弊社では、挑戦した上での失敗は歓迎するカルチャーなので、幸いにも失敗しやすいです笑(でも、失敗怖いですよね...失敗する数をこなすしかないのでしょうね...)
【意思決定者】
■ 決断力:
決断力がないと、意思決定を先延ばしになり、成長スピードが落ちます。スピードの低下は、スタートアップにとって致命的です。失敗することを恥ずかしがったり、恐れてしまうと、意思決定のスピードは遅くなります。
先述した1-way / 2-wayとも関連しますが、たいてい2-way doorなので、失敗したら学びに変えて、また違う方法で挑めば良いと思うと、決断の心理的ハードルは下がります。個人的には、何事も「実験」と捉えると、どんどん挑戦しやすくなる気がしています。
あとは誰かが意思決定で迷っている時は、一人だと思い詰めてしまうので、周りのメンバーが、上記のような声かけで背中をそっと押してあげるのも非常に効果的です。
ちなみにバックテックには"the faster, the better"というValueがあるので、速さは称賛されます。
■ 視座の高さ:
自分たちが創っていくべき、未来のあるべき社会や会社、プロダクトの姿を解像度高く描けているかも重要です。
ここに関しては、ラクスルCOO福島さんのインタビュー記事で、首がもげるほど、なるほどと思いました。
(一部抜粋)解像度を持てる未来の時間軸は、自分の在籍期間とだいたい同じぐらい。入社半年の自分は、事業責任者として1年後の未来を描く時間軸を持ってなかったですね。
特にバックテックでは、代表福谷直下で、開発チームがあるので、経営と開発の距離感がかなり密接です。そのため、開発チームにも、常に経営者の視点が求められ、ハードルは高いですが、やりがいも半端ないです。
ただ、視座の高さは一朝一夕にあがるようなものではなく、絶賛もがきまくってます笑。今は日々、福谷と5分間壁打ちをして、鍛えられています。
また、株主のサイバーエージェントキャピタルの竹川さん、ビザスクCEOの端羽さん、エムスリーのVPoE/PdM/CDOの山崎さんなどに、開発組織やプロダクト、ビジネスモデルの相談をさせていただく機会がありました。
自分にとっては稲妻が走るようなアドバイスをいただけて、外部で自分よりも何百倍と視座が高く、経験豊富な方に相談できる環境はとても心強いです。
経営者やビジネスサイドよりも、開発サイドは、外部との接触が少なく、内に意識が向きがちになってしまうので、意識的に外部に出ていく重要性を感じました。
■ 持ってる情報:
ここでは、情報量(幅)と質に分けています。
量に関しては、意思決定する上で、自分の視点だけでなく、すべてのステークホルダーの視点で、必要な情報を集められているかが重要です。
質に関しては、二次情報はだいたい歪んでしまい、意思決定を狂わすので、できる限り一次情報を取りに行くクセはつけた方が良いと思います。
また、情報がないから意思決定できないという人がいますが(過去の僕)、必ずしもそうとも限らないと思います。
情報がない時は、例えばですが、フェルミ推定などの方法があります。地球に蟻が何匹いるかなどが良くある例ですね。
さらに、インパクトや不確実性の大きさにもよりますが、情報がないのであれば、作れば良いのです。先述した「実験」を最小コストですることによって、意思決定の質とスピードを早めることができます。
■ コンディション:
意思決定は想像以上に疲れます。まじで疲れます。
PdMになる以前やインターン時代も、やるべき仕事はいくらでもあるので、大変でしたが、それとは明らかに異なる疲労です。個人的な感覚では、手を動かしてる方が、ずっと楽でした笑。
僕の場合、一日に意思決定できる数は、せいぜい1〜3個くらいです。
意外と見落とされがちな気がしますが、心身のコンディションが悪いと、良い意思決定はできません。
そのため、できるだけ重要な意思決定は、自分の脳がクリアな時にするべきです。そして、良い意思決定をするためにも、意思決定する頻度の多い人は、心身のコンディションも維持してください。
6/ 最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。感想やコメントいただけると泣いて喜びます。
こんな感じで整理はしたものの、まだまだできていない部分がたくさんあります。
一朝一夕にはいかないので、今は基礎力を鍛えつつも、自分一人でやろうとしすぎないのも大切だなと考えてます。個人プレーではなく、会社の総力戦で、良い意思決定をできれば、良いんだろうなと。
7/ We're hiring!!
バックテックでは"ヘルスケアの未来の常識を創る"というミッションのもと、今は第一ステップとして、法人/健保向けにポケットセラピストというサービスを展開しています。
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