長距離走
最寄り駅前の駐輪場でセミが死んでいた。
彼らが地表に出たのはつい最近だと思っていたのに
8月に入る前に蝉の死骸を見るとは。
早く開けてくれと思っていた梅雨もいつの間にか去ってしまった。7月も明日から居なくなる。
梅雨といえば、よく部活で外周させられてたな。
雨でテニスコートが緩くなった日は走らされた。
大体1600m×3セットぐらい。
僕は走ることが好きだった。
基本的に勝てるし、達成感があるから。
走り終えた後の疲労感が心地良く、気持ちいい。
「今日も、がんばった。」と思えることがいい。
せっかくなので長距離走を走り抜くコツを言語化してみようと思う。
長距離走とはただひたすら無心になってゴール向かい走り続けるように思えるが、実はそうではない。
頭の中ではひたすらに「問いかけ」が投げかけられていて、同時に僕らは必ずどちらかを選択し続けている。
走り終えるまで永久に。
その「問い」とは、
「なぁなぁ、ちょっとペース落とさん?」だ。
走るペースの決定権は常に自分にある。
辛ければいつでもペースを落とすことができる。
だから心には「ペースを落とそうかな」という気持ちが常駐して消えることはない。
だけどそれに僕らは「NO」と選択し続ける。
ちょっとペースを落としたとしても怒られたりする環境では無かったが、僕はペースを落としたくなかった。
極度の負けず嫌いなのか、ペースを落とすことは負けを意味すると考えていた。そして少しでもペースを緩めると、どんどん緩めてしまうのものだ。
そうなりたくない、そんなんダサいから「NO」を選択し続けていた。
今日結果を出したいと思ったなら、走る前に「今日はペースを落とさない!」と決断するのではない。
走る前に大きな決断を1度するのではなく、
走る間に小さな決断を絶えず行なうのだ。
瞬間瞬間に決断を行っている。1秒1秒のほんの一瞬。
瞬間瞬間に「問いかけ」が止まることなく、その瞬間瞬間「NO」と言い続けている。
昨日の自分に勝つためにはこれをしなければいけない。
そして問いかけに対して「NO」を選択し続け、ゴールした時。初めて達成感を得ることができるのだと思う。
長距離走を走った後に感じる達成感とは、問いかけに「NO」と言い続けれた結果なのだ。
己に勝てたこと、耐え切ったこと。
途中でペースを落としてしまえば不完全燃焼で終わってしまう。
この「NO」と答えるための原動力は色々なものが混じっている。
成長したいという欲求、諦めてしまう自分になりたくないという恐怖、俺が勝ちたいというエゴ。
頑張ってる姿を女の子に見てもらいたいとか。
「走る」こととは自分に「勝つこと」だが、負けるきっかけは常に自分にある。
大事なのは、「今日は全力で走り続けるぞ!」という大きな決断ではなく、毎秒毎秒で「ペースを落とさないぞ」と小さな決断を続けることだったなと当時を思い出した。
持久走校内順位3位程度ですが、僕にとっての長距離を走る時の答えです。