【23-24 AFCボーンマス第1節】イラオラ監督戦術分析~プレミアリーグ第1節VSウエストハム~
名将マルセロ・ビエルサの後継者として呼び声高いアンドニ・イラオラ監督。21~23までスペイン1部ラージョ・バジェカーノを率いて強豪バルセロナを破るなど結果を出し、23-24からボーンマスの監督に就任したイラオラ監督のデビュー戦を見て感動しました。できれば、詳しくボーンマスがウエストハム相手に遂行した戦術を知りたいのですが・・・
どうもさかりーにょです。
本記事はイラオラ監督&ボーンマス推しの方のこんな悩みを解決するために23-24シーズンプレミアリーグ第1節VSウエストハムの試合を基にその戦術を4局面分析したいと思います!
本記事の信頼性
・年間平均200試合以上を分析しながらオリジナルの「さかりーにょ分析メソッド」開発
・JFA公認指導者ライセンスB級
・IFCO公認サッカー戦術アナリストベーシックコース修了
・AEFCA公認マッチアナリストコース修了
・元海外プロサッカー選手&指導者
23-24プレミアリーグ第1節 AFCボーンマス VS ウエストハム
スタメン
スタッツ
マッチアップ図
イラオラ式フットボールの基本
イラオラの基本布陣は4-2-3-1であり、攻撃時にはボールを可能な限り早くゴールまで運ぶことを原則としている。基本的にはライン突破するパスと相手SBの背後を取ることをビルドアップのゴールにしている印象であるが、これだけにとらわれず状況に応じて前線へのロングボールを多用する。また、ボールを奪われればすぐさまプレッシングを開始する切り替えの速さとその強度の高いインテンシティはまさにビエルサを彷彿とさせる。
また、攻撃、守備ともに「自動化」が落とし込まれており、ある程度の型の中で選手たちが個性を発揮する点もまたビエルサと酷似している。
局面①:ボーンマス『攻撃分析』
プレミアリーグの開幕戦であるウエストハム戦では緻密に相手を分析するイラオラが仕込んだ攻撃の原則が垣間見えた。ここでは、「ビルドアップ」と「ラスト30mの崩し」に分けてその特徴を分析していく。
a)ビルドアップ
対戦相手であるモイーズ監督率いるウエストハムは守備時に<4-2-3-1>から<4-4-2>の3ラインに可変し、2トップで前線からパスコースを限定して後方でボールを奪うゾーンディフェンスを採用している。
この2トップによるプレッシングを回避するために、イラオラはGKと4バック、そして1CHの5枚で台形を作り、多くの場面で2トップによるプレッシングを剝がすことに成功した。
b) SBにボールが入った際にSHが1つ中のレーンに入る
ウエストハムの4-4-2のゾーンプレスを回避するために仕込んだもう1つのビルドアップの原則が、「SBにボールが入った際にSHが1つ中のレーンに移動して楔を受ける」というものだ。これをすることでパスコースを確保することが容易になる。
ラスト30mの崩し
a) ロングボールをCB / GKから配給
ボーンマスはCB / GKからシンプルにロングボールをCFのソランケに配給し、2列目3列目から飛び出していく崩しを採用し、決定機を創りだしていた。
また、GKがボールをもって比較的余裕がある際にはウエストハムの高さがある両CBを外し、意図的に左SHのアンソニーをロングボールのターゲットにして空中戦の勝率を上げていた。このあたりの緻密さからもイラオラ監督の分析の細かさを感じ取れる。
b)相手SBの背後を取る動きの自動化
4-4-2のゾーンディフェンスを敷いているウエストハム相手にこの試合でとても印象的だった崩しが両サイドのSH、SBが連携し、3人目の動きと絡めて相手SBの背後へ侵入するというものだ。
c) 10番ライアン・クリスティーンのテクニックと豊かな創造力
圧倒的なキープ力と創造力豊かなスルーパスやドリブルを兼ね備えるスコットランド代表のライアン・クリスティーン。運動量も豊富でオフザボールの際には2列目から積極的にスペースに飛び出す動きを連続して行うことができる。
ウエストハム戦においてもそのキープ力で可変する時間を作るだけでなく、多くのチャンスを演出していた。
局面②:ボーンマス『ネガトラ分析』
アイオラ監督のネガトラの原則はボールを失った際にボールに一番近い選手が即座にプレッシングを実行するというものだと分析。ビエルサ監督のチームを彷彿とさせるような激しい切り替えがこの試合でも随所に見受けられた。
一方で、ボーンマスは攻撃時に両SBと1CHを押し上げるために後方は8番のロスウェル1枚になる。
もともと守備的な選手ではないためにカウンターの際の防波堤としては機能せず、この試合ではロングカウンターを発動されるとほとんどのシーンでフィニッシュまで持ち込まれていたことは改善が必要であろう。
局面➂:ボーンマス『守備分析』
ウエストハムは攻撃時にあまり立ち位置を崩さずに攻撃をする。このような特徴を受けてボーンマスは守備時に4-4-2に可変し、2トップのプレッシングに後方が連動し、ボールをサイドエリアに誘導して奪うという明確な狙いがあったように感じられた。実際に多くの場面で相手のSB、SHからボールを奪うことができていた。
一方で、3ラインの距離感が広く、ライン間を簡単に使われる場面も多く見受けられた。また、2列目から飛び出してくる選手への対応が曖昧で、「受け渡すのか」、「ついていくのか」が明確ではなく決定機を創られるシーンも目立った。このあたりが次節でどのように改善されるかを注目するとより楽しめるのではないだろうか。
局面④:ボーンマス『ポジトラ分析』
ウエストハムのディフェンスラインはCBズマを除いてスピードに難がある。また、ズマはアスリートとしてのスピードは速いが、ポジショニングが悪く一本のロングパスで背後を取られるシーンなどが多いことが特徴だ。
このような相手ディフェンスラインの特徴を考慮してか、本ゲームのポジトラの最優先事項はディフェンスラインの背後へのパスであった。そして、CFのソランケはそのフィジカルとスピードを武器に見事に好機を演出しいていた。
一方で、失点シーンに直結するボールロストをしたロスウェルはボールを失う場所が悪かった。彼はポジトラ時にドリブルで長い距離を前に運んでくれる良さがある半面、中央でのプレーになるためにポジトラ時にボールロストをすると決定機を相手に与えてしまう。この辺りは次節以降の課題であると言えるだろう。
さかりーにょEYES
手主体でエネルギッシュなフットボールを体現したイラオラ監督。「小さなクラブを躍進させることを得意としている」と自身で話す通り、そこには明確なビジョンと原則が垣間見えた。
イラオラ監督が解任にならない限り「このスモールクラブをどのように躍進させていくのか」というテーマの下でイラオラ監督のマネジメントを連載していく。
世界中の多くのスモールクラブにとって有益な情報となることを願って。
Twitterで細やかな分析を行っています!是非遊びに来て下さい!
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