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字牌ビタ止めニキがあらわれた!
これだけは切れない
みなさんは麻雀中どんな時にそう思うだろうか?白と發が鳴かれていて中を持ってきたとき?国士の河で全ツしている人がいて4枚目を持ってきたとき?ほとんど筋が通っていてWドラの赤5を持ってきたときだろうか?
Mリーグのファインプレーで見るような、普通の人ならば切ってしまうような牌をビタ止めし、放銃を回避する。とてもかっこいい。そんなもの実際に目の当たりにしてしまったら…
濡れる。(ビビッて手汗で)
麻雀打ちならば必ず1度は経験したことがある”これだけは切れない牌”ですが、刺さるかどうかはさておき、切れないと思う理由が必ず存在するのです。何も特徴のない盤面で”これだけは切れない”となることはほとんどありません。
しかしある日とんでもない牌をビタ止めするバケモノが到来しました。
やっほー!やまきだよ!
みんなは元気に毎日麻雀していますか?私はほぼ毎日麻雀をしています。なのになかなか強くなりません。
誰かタスケテ
………ってのは今日は置いておいて、
こんなに毎日のように麻雀をしていても、ありがたいことにSNSで話題になるようなヤバい人と対面する事はありませんでした。その原因は私が務めている雀荘のオーナーが肥え×とかいうふざけた名前の麻雀YouTuberだからです。彼は変な人を見つけるとすかさず動画やnoteのネタにして拡散します。
お店に来るお客さんのほとんどが彼の動画を見てやってきます。ですのでネタにされた麻雀中の行動が人に笑われてしまうということをしっかりと理解できるまともな人たちばかりなのです。
麻雀検索サイトやGoogleMapに「胴上げまでOK。」とか書いていて一見無法地帯の雀荘に見えますが、実際は、そういったジョークが分かるお客さんばかりで変なクレームをいう人だとかイキリ散らすような人は全くいません。
お客さんも従業員も、私の周りは本当にみんないい人です。まじで恵まれているなぁと感謝の気持ちでいっぱいです。
しかし、そんな平和な日常に突如
災害級のイキリ雀士が来店しました。
信じるか信じないかはあなた次第。
今日は世にも奇妙なクセ強雀士〜字牌ビタ止めニキ編〜を書いていこうと思います。
ちなみにこれを読んで「もしかして俺のことじゃないよなぁ…」って心配している最近私に会ったそこのあなた。
ハッキリ言います。100%あなたじゃありません。いい人に限って「これっておれのこと…?」と疑問に抱きがちです。これ何かしらの発信活動してる人なら全員分かると思うんだけど、いい人に限ってそういう心配してます。ほんとうにヤベエ奴はまったくこれっぽっちも自分のことだとは思わないようですのでご安心くださいね!!
それではさっそく書いていきます。
レッツスタート!
そのときは突然に
開店したばかりでまだお客さんが一人もいない静かな店内。これから徐々に人が集まってわいやわいやと賑わってくる。私はフロアを掃除しながら今日の一番乗りのお客さんは誰かなと考えていた。すると来客を知らせるチャイムが店内に響き渡った。
扉がガチャリと開いた。
「いらっしゃいませ〜」
新規のお客さんだった。
「1人で来たんですけど…」
「ご新規様ですね!ありがとうございます!」
初めて見る顔だった。この時はまだ字牌ビタ止めニキはただの好青年だった。ドリンクをお出ししてルール説明に入る。
見た目は若め。名前は太田さん(仮名)。少しぽっちゃりしていて、Tシャツ短パンにクロックスという雀荘でよく見るラフなファッションだった。髪は長めで小動物系の顔立ち。
ルール説明する前にちょっとおしゃべりをするのが私のやり方。これから一緒に麻雀するんだからどんな人なのかちょっと気になるしね。まずは世間話から…
「普段はどちらで打たれてるんですか〜?」
全くひねりのない雀荘でありがちな質問。もっと面白いことを言えるようになりたいけど、まぁ最初の会話くらいは普通にね。
しかしめちゃくちゃ予想外な返事が返ってきた。
「港区の方ですね〜。」
港区をめちゃくちゃ強調して答えてきた。
え?……港区?幅が広すぎる!
どこの雀荘に行くかを聞いてそんな返答されたのは初めてだった。大体みんな店の名前を答えるのに。
でもまぁ捉え方によっては場所を答えるよね。解釈の違いというのはこんな他愛もない会話でも生まれてしまうことを学んでしまった。私、また一つ賢くなっちゃった。
しかし港区については正直全然しらない。港区を強調した意図が分からなかった。
港区。
そういえば新橋って港区だったよなぁ。新橋はイカついバトルができる雀荘があるということを聞いたことがある。Xでも激しいバトルの末星になった麻雀打ちを見かけるし。
それともマンション麻雀かな?名前を出せない理由があってあえてそう答えているのかもしれない。だとしたら相当強いんだろうな。そんな強い人と同卓したら負けちゃうよ。怖いなぁ。
色々と予想してみたけど本人に聞かないと真実は分からない。
「なんていうお店なんですか?」
他店の雀荘の話題を出すのはあまり良くないことだと思っている。松屋の店員が吉野家のメニューの話をするわけがない。と思いつつも私はもう気になって気になって仕方がなくなってしまったので聞いてみることにした。私は好奇心の塊。私の50%は好奇心で出来ているのよ。バファリンは私のライバル。
「え~、あんまり言いたくないんですよねぇ~」
あ、やっぱりそうなんだ。若いのにイカつい麻雀を打っている人なんだな。
「えぇー!教えてくださいよ~。どんな雀荘なのか気になります〜!」
「まぁ…隠す必要は無いんですけどね…」
すると彼はキャバ嬢に実際の5倍の年収を答える時のようなドヤ顔で
「マー〇ャオです。」
と答えた。
いや誰でも知っとるうぅ!!!最初から店名で答えんかい!!なんだそのスカし芸!わざわざもったいぶって港区とか答えるんじゃない!あんま言いたくないってなんだあああああああああああ!!!私の好奇心返せ!
「えっ」
「?」
日本一のチェーン店の名前が出てきてツッコミたい気持ちをどうにか抑えた…つもりだったけどあまりにも予想外だったので声が漏れてしまっていた。いけないいけない。初対面だぞ。
ふぅ〜。とバレないくらいの大きさの一呼吸して気持ちを整えた。もしかしてこれはツッコミ待ちなのか?
私の脳内はなんて返答するかの会議で大忙しだった。
「いやマー○ャオかーい!!知ってるよ!w」ってツッコむか?いやでもあのドヤ顔は何なんだ!?"写真で一言"の大喜利に使われそうなくらいのドヤ・オブ・ドヤ顔で答えたよ?下手にツッコんだら彼の気分を害しちゃわないか?!仮にもご新規のお客様だ。
「そうなんですね!」
ツッコミ待ちだったらごめんと思いながらも、あまりにも真面目な顔で答えていたので普通の相槌をした。ボケで言ってたらもう少しなんというかさ、おちゃらけて話すと思うんだよね。
というか普段だったら初対面だろうがここからツッコんだり会話を広げていこうと頑張るんだけど、この時はなぜかその一言を発するので精一杯だった。
私の中の何かが彼に対しての苦手意識を感じていた。
うっ、がんばれ私!話してみたらいい人かもしれないし、苦手意識を捨ててフラットな気持ちで接していかないと!!
そう思おうとしているのに、不思議となかなか世間話を始められなかった。「今日は暑いですねー。」とかまじで何でもいいのに、なぜだか全然会話が浮かんでこなかったんだ。仕方ない。もうルール説明しよう。
全然聞いてくれないルール説明
会話が思いつかなかった私はルール説明を始める事にした。麻雀の話をしたら「他の店とはここが違うんですよー♪」とか何でも会話は出来るし、仲良くなれるかもしれない。
「東南戦3人打ちの、30,000点もち30,000がえ…」
「うんっうんっ!!」
「北は共通やくは…」
「あーね!」
「白ぽっちが入っていて、リーチ後えい…」
「あね!!」
「花牌が入っていて、抜きド…」
「あね!!!」
項目をまだ読み終わってないのに、太田さんは食い気味に相槌をしてくる。しかもやたらと相槌の声がでかいんじゃぁ〜。私の話ちゃんと聞いてくれええええ。もしかして私の声が早まって聞こえてる?逆いっこく堂じゃん!
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んなわけあるか!と自身にツッコミを入れながら、めげずにいつもよりゆっくり丁寧に説明をしていく。
そんな努力もむなしく「あーね!」も省略されて「あね!!」「あね!!!」って元気よく連発している。
もぉ〜!聞かなくて損するのは太田さんなんだからねっ…。そう思いながらも私はちゃんと理解してから遊んで欲しいからめげずに説明する。既にバトルは始まっているかのようだった。
どれだけいつも以上に丁寧に説明してもあんま聞いてなさそうだから「ここまで大丈夫ですか?」「何か質問はありますか?」って何度も何度も確認した。
てかそもそも「あーね!」っていう相槌あんま好きじゃないんだよなぁ。なんか雑すぎない?本当に聞いてる?って思っちゃうんだよね。もはや太田さんは「あね!!」だったけど。
「……となりますが、ここまでで質問や気になった事などあれば何でも聞いてください!」
「大丈夫大丈夫〜。打てば分かるっしょ!○ーチャオと大体一緒だもんね、アリアリでしょ?」
「う、う〜ん。」
…話聞いてた??
全然一緒ではないんだけど…。い、いや、大きく括れば関東三麻だから大体一緒とも言えるのか?
このまま進めて大丈夫かぁ?でもいくら丁寧に説明しても聞いてくれないから同じ事を言ってもあんまり意味ないもんなぁ…。
モヤモヤしながらルール説明を続ける。
「ちなみに三麻の特殊役も採用してるんですけど三連刻などの特殊役には馴染みはありますか?」
「あね!うん!だいじょぶ!!」
まぁ普段三麻打ってるならこの辺は大丈夫だろうな。なんて思ってたらここで初めて太田さんから質問があった。
「これは東南西じゃないとダメなの?」
三風についてだった。
「これは東南西北どれか3つがアンコなら大丈夫ですよ!鳴いてもオッケーです。」
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「あーじゃあ北もいいってことね!あーね!!OKOK!北だけでも鳴いていいの?」
…さっき北は共通役牌って言ったんだけどなぁ。やっぱり全然聞いてないんじゃ…。
…いや、私も雀荘に遊びにいったら一回じゃルールを覚えられないしな。きっと悪気はないんだろう。私も何回も質問しちゃうタイプだし人のことをとやかく言えない。
「はい!北は共通役牌です。花牌が抜きドラになります。」
めげない心!!そして私は胴上げまでOKなキチガイ雀荘の店員さん!
例え聞いてなかったんだとしても大事なことだから何回も説明してあげないとね!
しつこいかなと思いながらも最後にもう一度聞いた。
「ここまでで何か分からなかった事や質問はありますか?」
「んー大丈夫大丈夫〜。」
本当かなぁ…。なんでかは説明できないけど、なんかあんま大丈夫な気がしないんだよなぁ。でも本人が大丈夫って言ってるしこれ以上何も言えないもんなぁ。
「かしこまりました!ではさっそくやりましょうか!」
まぁ私も卓に入ることになるからその都度また言えばいいや。卓を立てる準備に入る。
「預かりが20,000ソシーからお願いします。」
ウチの雀荘はそんなにイカつくは無いが、多めの預かりでお願いしている。20,000ソシーを余裕をもって出せない人はお断りさせていただいているのだ。
「ソシーの余裕は心の余裕。そういうお客さんだけ来てくれればいい。」
とオーナーの肥え×がキモいドヤ顔で言っていた。実際とても民度が良い。するとさっきまでイケイケな雰囲気だった太田さんが
「……え?いや…」
不穏な空気を醸し出した。
不穏な空気
ん?今、え?って言った?
これはフリー雀荘での必要儀式。避けては通れないし、今まであまりここで疑問を持たれることもなかった。
しかし太田さんの方を見ると、きょとんとした顔をしている。聞き間違いじゃぁ…無いってこと??
「あ、あの…20,000ソシーです。」
「え?いや、俺いつも10,000ソシーなんだけど」
「……ほぇ」
キャバ嬢に散々イキリ散らしておきながらお会計が足りなかったおっさんを見た時のような気の抜けた声がでちゃった。太田さんは気にせず続ける。
「10,000ソシーでやりたいんだけど。」
「な、なるほど…。」
今まで一度もそんな事を言われた事が無かった。だからどうしようか戸惑った。私はどうしていいか分からず、他の従業員に助けを求める目線を送った。別に10,000ソシーでも遊べないことはない気もするけど…。勝手にいいよとも言えないしなぁ。
港区の雀荘私は行ったことがないんだけど、そこではそうなのかな?
ってかそんな事よりも、ど、どうしよう…。
(タスケテ…)
そうすると何かを察してこちらに気を向けていてくれたベテランメンバーが、私の目線にすぐに気がついてくれて爽やか笑顔で間に入って助けてくれた。
「すいません〜。皆様20,000ソシーからお願いしておりますのでご協力お願い出来ませんか?」
「俺今日は気軽に遊びたかったんだけどなー。今日は。」
っていうかさっき「いつも10,000ソシーでやってる」って言ってなかったっけ?途中からやたらと今日は気軽に遊びたかったって強調してるように聞こえるけど…。いつもは20,000ソシーだけど今日だけは気軽に遊びたいってこと?でもそしたらいつも10,000ソシーって言わなくない?も、もしかして強がってる???
もしもいつも10,000ソシーだから20,000ソシーがちょっと厳しいならそう言ってくれたらいいのになぁ。でも私から聞くのはちょっと気まずい。
「じゃあ10,000ソシーで遊べる店紹介してよ。ここら辺の。」
「え?」
知らんがな。〇ーチャオ行けよ。
まさかの要求
どうするの、これ…。
でもせっかく来たなら遊びたいよね。今だけならどうせ暇だし、誰かが来るまでだったら優しく遊んでもいいか。
「誰かが来るまででしたら特別に優しく遊びますか?」
ウチの雀荘はかなり融通が利く。立てれるものは高くない限り何でも立てる。しかし、優先が決まっていて、立てれなくなったらそこでおしまいである。今は丁度太田さん一人。他のお客さんが来るまでなら優しいルールで打ってあげようと思った。
今思えば本当に余計だった。
なんだかさっきからちょいちょい引っかかるんだよなぁ〜。でもきっと悪い人ではない。私ももっとフラットな気持ちで!接していかないと!!
そう自分に言い聞かせた。
こうしてなんやかんやあったけどようやく立卓した。
強がりのレート設定
ついに対局開始だ。メンツは私、太田さん、メンバーだ。
「よろしくお願いしまーす!!」
なんとも説明できない違和感を感じながらも、いつも通り元気に挨拶をして対局が始まった。
「どのくらいの優しさにしますか?」
私は太田さんに質問した。
「いいよー。いくらでも。お姉さんが決めていいよ。」
ソシーを無限に持っているかのような余裕で答えてきた。
…ほう?リャンピンって答えてやろうか?ああん?
………嘘です。すいません。そんなイカつい麻雀打てません。
てか20,000ソシー払えないならいくらでもいい事はないと思うけど…。
なんかちょっと上から目線やなと思いつつも、優しければ優しいほど嬉しいんじゃないのかな。そう思って私は一番優しいやつにした。私もリーパイを右から順にする練習をしたかったのでちょうどいいや。
それにこのイキリ方。麻雀はきっと弱くは無いのだろう。勝っているからあんな雰囲気を醸し出せるんだ。私は麻雀が弱いのを自覚しているし、何か勉強になることもあるだろう。
対局開始
ついに開幕。私が起家だった。配牌は悪くない。
不要牌を全て切ったらこんな牌姿でテンパイした。
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これこれ。こういうのが永遠に来ないかなー。何も考えずにテンパイしてリーチ打てたら麻雀勝てるのに。
待ちは47p。オラオラー!親リー様だ!!
麻雀が始まってしまえばそちらに集中するため相手が誰だろうと割と楽しい。
数巡経ったがツモれない。他の二人もあまり押しているようには見えない。筋や現物で回っているようだった。
15巡目、太田さんが叫んだ。
「うわぁ〜これだけは切れない!でもいきてぇな〜。」
この時点でもう結構色々な牌が通ってしまっていた。くそぅ、私のアタリ牌止められちゃったか〜。なんて思っていた。
「いやぁ、やっぱりこれだけは切れんわー。くそー!」
といいながら無筋の7pを切ってきた。
「ろ、ロン」
なんか知らんがあがれた。
すると太田さんが楽しそうな顔をして、
「あぁ〜、中は通るんだね!これだけは切れなかったんだよー。いやぁ怪しいと思ったんだよね!!」
と中を1枚見せて言ってきた。中はション牌。今回私はたまたま頭として使ってたけど危ない牌。
「中は確かにション牌で切りにくいですもんね!」
字牌とはいえ終盤でション牌ならかなり切りにくい。やっぱり強い人なのかな?そう思いながら次の局へと進んだ。
太田さんの放銃
5巡目にメンバーからリーチが入った。私の手はリャンシャンテン。まだまだ情報が少ないリーチだけど、ここからじゃ戦えないとオリに回った。
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しかしメンバーのリーチ一発目に太田さんは無筋の5sを切ってきた。
お、戦う気があるのかもしれないな。こっちにも警戒しなきゃな、なんて思っていた。
そしたら太田さんがまた、
「あ〜これ来るのかよ!絶対切れねーじゃん!くぅ〜。」
と苦しそうな表情で言っていた。正直まだほとんど何も通ってない。太田さんにはこの河を見たらより危険な牌が分かるのだろうか。そうだったらすごいな。
「うーん、回るかぁ。」
と言いながら太田さんは全人類が目を疑うような牌を切った。
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何かの食べ物とビールを美味しくいただきます