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オンライン授業,何が問題なのか?

 コロナ禍以前の社会では,私も教育は対面でするものでしょう?と思っていた。実際,日本ではMOOC等のオンライン授業はさほど流行っていないし,やっぱり目の前に学生がいてこそ教育効果は出るものだと考えていたのだ。しかし,いざオンライン授業をやってみると,意外と対面より良いこともあると気づいた。

 100%オンラインが良いとは思わないが,100%対面が良いとももはや思えない。オンラインと対面のブレンド型が良いだろう。オンラインと対面の割合は授業の特性によるし,学生の学びのスタイルにもよる。大学だけではなく,初等中等教育でもブレンド型を目指すべきではないかと思う。
 しかし,突然このような状況に陥ったため,大学教員も学生も十分な準備ができていなかった。だから,さまざまな課題が出るのは仕方のないことだ(学生も大変だろうが,教員も大変だ)。現在問題となっているのはどのようなことなのか。私なりに考えている。この記事では,課題多すぎ問題に着目しよう。

課題多すぎ問題の本質

 特に一年生でこの問題が顕著なようだ。しかし,半期に10科目以上も履修すれば,課題が増えるのは当然である。実はこの問題の本質は,コロナ禍以前から存在している。単位の上限を決めるキャップ制を取る大学は多いが,実質的に機能していないところが多いのではないか。この点についてまとめておこう。

 大学設置基準によると,大学の授業は1単位あたり45時間相当の学修が必要な内容で構成される。すなわち,2単位授業では90時間,15週の授業では90−30で60時間を予復習等の授業時間外学修に充てることになる(30は90分授業を2時間で計算するため)。そうすると,1科目1週あたり4時間の学習時間となる。10科目履修していれば,授業時間外に1週間40時間を確保せねばならない。そこで,10科目履修する学生を例にとって生活スタイルを考えてみよう。授業は1日平均2科目となるので,平日の午前中に授業を受けて,午後から他の授業の予復習等に充てるとする。そうすると,昼食を取った後,毎日13時から8時間学習すれば平日に40時間の学習時間を確保できる。

午前中に2コマ授業を受け,12時から13時まで昼食休憩,13時から18時まで予復習して,夕食休憩を1時間挟み19時から22時までまた学習する。

 平日5日間この生活を送れば,当然アルバイトはできないし,友人と遊ぶ時間もほぼ取れないだろう。平日はびっしり勉強,土日にアルバイト,サークル・部活動,そして友人と出かけるというような生活に耐えられれば良いが,とても無理そうである。

 では,大学設置基準が無茶を言っているのだろうか。確かに無茶な数字であるが,124単位を4年間かけて取得すると考えると,できないことはないのだ(私の計算では1単位あたり30時間,2単位で60時間の学修であれば可能だし妥当な数字だと思うが)。したがって,半期8科目程度に履修制限すれば,課題が多すぎるという問題は解決可能なのではないか,といえばそうではない。

 そこに立ちはだかるのは,大学4年目の就職活動である。昔から問題視されているのに,全く改善されない。日本の大学では4年目に就職活動するため,3年間で多くの単位を取っておかねば,就職活動に響いてしまう。そしてそのせいで,大学生は取れる時に単位を取っておかなければという行動様式になってしまうのだ。こればかりは大学だけでは解決できないので,産業界の変革を強く求めたい。

 話は逸れるが,私は9月入学も併せて検討すべきだと考えている。若者にもっと時間的余裕を与えて,さまざまな経験を積ませた方が良いからだ。超高齢化社会で元気な高齢者も多いのだから,これまでよりも働く年齢をやや後ろにシフトして,成長期の若者に自由な時間をたっぷり与えた後に働いてもらった方が,社会にとって良いだろう。

 話を戻そう。もう一つ本質的な問題は,課題に対するフィードバックの少なさにあると考えられる。課題を提出したは良いが,受け取って貰えたのか,正解だったのか,自分の改善点はどこなのか,そもそも先生はちゃんと見てくれたのか,そういったフィードバックがない中で,大量の課題に取り組むのはモチベーションの維持が困難になる。

 大学では,高校までと比べて受講生が一気に増える科目も少なくない。受講生が100人以上,500〜600人なんてことも大学の規模によってはある。そうなると,一人一人の受講生に毎週フィードバックするのは大変なので,全体にまとめてフィードバックする教員もいる。また,たとえ受講生が多くなくとも,自分が学生だった頃にフィードバックを受けてこなかった教員は多いので,そもそもフィードバックはしない教員というのも一定数いるのである。

 コロナ以前は,教員からのフィードバックがない分,受講生同士で課題の答え合わせをしたり,授業について話し合ったりすることで学生同士の相互フィードバック機能が自然と働いていた。しかし,オンライン授業が主体となり,受講生の中に友達がなかなかできない状況においては,そこが機能しなくなる。

 以上のように,課題多すぎ問題の本質は別のところにある。したがって,単にそこに注目して課題を一斉に減らしてしまうと,教育の質低下を招く恐れがある。

 ではどうすれば良いのか。私が思うに①課題について相談できる友人をつくる,②課題の出し方を見直す,③課題に対するフィードバックをしっかり行うという対策があるだろう。ただ,通学もままならない状況でどうやって友達を作ればよいのかという問題はあって,これに対する妙案は私にはなかなか思いつかないので,②と③について言及しよう。しかし,これ以上続けると長くなるので,いったんここで止めておく。 

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