対面+Zoomで3週間が経過した
250人の大人数講義科目において,Zoom形式で最初の2週間,対面とZoomのハイブリッド形式で次の3週間が経過した。いくつか気づいたことがあるのでまとめておこう。
セッティングは大変
対面2教室+Zoom用のセッティングを3週やって多少慣れたものの,二人がかりでも20分以上はかかる。使用機材については前回まとめたが,一式を教室に運ぶのも大変だ。授業を行う教室は研究室のある建物とは繋がっていないため,機材を運ぶのにキャンプ用のカートを購入した。
カバーもついてるし,車輪も太いので,雪が積もってからも安心して使えそうだが,授業で使っている人はほぼいないだろう。
教室の収容率を定員の60%まで上げることができれば,対面教室は一つで済む。しかし,感染者が増加傾向にある札幌の現状を踏まえると,それは望めないだろう。
やはり対面は楽しい
教員にとって,画面の向こうに学生がいるだけよりも,目の前に学生がいて表情を見ながら授業する方がやっぱり楽しい。
授業では毎回,向かい合わないようにしながら学生同士が意見交換する時間を設けているが,学生の様子も楽しそうだ。昨年度は,話し合いに参加しない学生も必ず一定数いたが,今年度はいない。皆,待ってましたとばかりに話し合っている。話し合い時の学生は本当に楽しそうで,昨年度は教室内を歩き回りながら一段落ついてまったりしているグループには声かけしていたが,今年度は学生同士で盛り上がっているので,話しかける隙もないし,邪魔できない雰囲気が出ている。
Zoom受講者との温度差はないのか?
Zoom受講者はどう感じているのだろうか。Zoomだけの時はカメラ目線で話すので,自分たちに向かって話しているという雰囲気を感じられたと思う。しかし,今は教室の受講生を見て話しているところをカメラで撮ってZoomに流しているので,受講感が低下しているのではないかと心配だ。
対面で学生同士の話し合いを行うときは,Zoomでもブレイクアウトルームを作って話し合っている。対面の学生同様に盛り上がっているのだろうか。カメラとマイクはオンにするよう指示しているが,全員そのようにして話し合いに参加しているのだろうか。
受講形態の推移
小中高校が対面授業を行っているのに大学はなぜ対面にできないのか,対面にせよという報道はよく目にするが,学生はどう思っているのか。私は,対面出席者とZoom出席者の推移を注視している。対面出席者の割合を見ると,第3週は約71%,第4週は約62%,第5週は68%と推移している。平均すると,毎週30%程度の学生はZoomで受講している。細かく見てみると,毎週対面で受講している学生は約54%,毎週Zoomが約19%で残り約27%は対面とZoomを都度選択している。
なかなか興味深いデータである。朝一の講義で,ほとんどが教員による講義時間であるにもかかわらず,54%の受講生は毎週対面で受講しているのだ。この54%の学生は,2講目どうなっているのだろうか。対面授業があるのか,オンライン授業があるのか,または授業はないのか。調べてはいないものの,2講目も対面授業という学生は,いてもごく少数だろう。やはり対面で授業を受けたいという学生が一定数いることは間違いない。
ちなみに,出席率はすこぶる良い。履修登録だけして一度も出席していない学生を除けば,ここまで出席率は毎週約99%を保っている。ただ,Zoomに接続しただけで,実は講義を聴かずに他のことをしている学生がいるという報告を受けた(ブレイクアウトルームに移動してもカメラ,マイクオフで無反応だったと)。そこで前回は,Zoom参加者に対して授業中に二回,投票機能を使って抜き打ちの受講確認を行ったところ,一人だけ二回とも投票しなかった学生がいたので,欠席扱いとした(Zoomに接続しただけの学生は出席と認めない,ということは事前に周知してある)。
Zoomと対面のハイブリッドだからこその効果もある
以前書いたとおり,この授業ではCommentScreenを使い,受講生にいつでもコメントや質問などを打ち込んでもらっている。対面受講者にもCommentScreenの使用は認めているが,使っている人はほぼいないようだ。聞いてみると,授業中にスマホを弄るという行為には抵抗がある,スマホを見るとLINEなども気になって集中力が削がれてしまう,などの理由があるとのことだ。
したがって,授業中に流れてくるコメントの数は一気に減ったが,それでもZoom受講者はCommentScreenを使ってくれる。それらのコメントは,対面受講者も教室前面のスクリーンに流れるので見ることができる。それがZoom参加者との一体感を演出してくれて良いのだ。対面受講者にとって,私の問いかけ等について頭で考えていることをZoom受講者がCommentScreenで流してくれる。きっと「そうそう,それな」みたいな感じで読んで人もいることだろう。
対面+Zoom,これはやめられない
対面だけ,Zoomだけの方が教員にとっては楽でやりやすいに違いない。しかし,一度ハイブリッドを体験すれば,もはやどちらか一方のみには戻れないだろう。Zoomがあるから授業は自動で録画でき,その日の午後には不要な前後部分をカットしてアーカイブとして公開できる(さほど多くはないが,復習として視聴している学生もいるようだ)。
もちろん,グループワーク主体の演習科目で同じことができるかと言えば,課題はあるだろう。
しかし,Zoomが頻繁にアップデートされているように,授業で使われるようになれば,それに合わせて使い勝手は進化していき,より便利なツールも登場してくるものだ。テクノロジーの進化で学習者がより主体的に学ぶことのできる授業が成立するのであれば,当然そこを目指すべきであろう。
対面とZoomの受講者割合,出席率の推移など,今後も定期的にふり返ってまとめていこう。