香川照之さんについて思うこと。(テレビ局、トヨタ、出版社、そして広告代理店d社)

私は、今年の3月まで広告代理店「d」に勤めていました。

d社は、ご存知のとおり日本の広告代理店の中で売上高1位で、
その売上の多くはテレビの広告(テレビCM)によるものです。
そして、そのd社でもっとも売上を上げているスポンサー(一番の太客)が
トヨタ自動車でした。

テレビCMを扱う会社の一番の太客がトヨタなので、
もちろん各テレビ局の太客もトヨタになります。

そして、香川氏はトヨタのCMに出演している。

おそらく、香川氏の報道があってから、以下のようなことが起きたのではないかと想定されます。


8月24日、週刊新潮で例の報道。
・香川氏&香川氏の事務所ーーなんとか今の仕事に大きく影響が出ないようにしたい
・トヨタ自動車ーー困った。このままだとトヨタのイメージまで下がってしまう。せっかく作ったCMも無駄になる
・各テレビ局ーー困った。香川氏がCMを降板すると、トヨタがCMの出稿をしばらくやめてしまう。テレビ局へのスポンサー収入が激減してしまう
という3者の思いがあったはずです。

そして、各社と関係のあるd社が取りまとめ役となり、
「この事件は3年前だし、告訴の相手も香川さんではなくクラブのママであるということを理由に上手くごまかそう」となり、
トヨタは「それであればCMの起用をしばらくは続けよう」
テレビ局も「それであれば加熱した報道は控えよう」「THE TIME,も継続してもらおう」
と両社納得し、事は沈静化したように見えました。

正直、ここまでは私も「うわ、今回は上手くやったなd社」と思っていました。


ただ、誰もケアできなかった会社がありました。

週刊新潮です。

本来であれば、出版社(週刊新潮)も広告収入を得て利益を生み出していますから、
広告を持ってきてくれるd社には頭が上がらないはずです。

しかし、この5年ほどで雑誌に広告を掲載するスポンサーが一気に減り、出版社とd社との関係は大きく変わりました。
出版社は「代理店に忖度するのはやめて、過激な記事を載せることで発行収入(雑誌を買ってくれる人からもらうお金)を増やした方が良いのではないか」と考えるようになりました。

これが顕著に顕れたのが、d社の高橋まつりさんの事件です。

20年前であれば、この事件も出版社(このときは週刊文春)はd社に忖度して掲載しなかったに違いありません。
こんな記事を掲載すれば、d社から「そんな記事載せるんだったら文春さんもう広告出しませんよ」と言われてしまうからです。

それが、前述のようにそもそも雑誌の広告売上が減っていたので、
d社に忖度する必要もなくなりました。

今回もトヨタやd社に忖度することなく、週刊新潮は2回目の記事を掲載。
さすがにテレビ局も取り扱わないわけにもいかず、トヨタもCMを降板させないわけにはいかず、、、
d社を中心とした香川氏の延命措置は破綻してしまいました。


さて、ここまで香川氏を取り巻く各社の動向を見てきましたが、
事件そのものについて。

クラブのママが髪を引っ張り上げられている写真が掲載されていましたが、個人的にはあれの何が楽しいのかまったく理解に苦しみますが、
ああいったことが意外と他の人でも、割と日常茶飯事に起こっている気がします。

おそらく、歌舞伎役者が銀座のクラブに行くということは、毎回多額のお金がクラブに支払われていたと思います。
銀座でクラブを経営するということは、賃料も高く、女の子への給料もそれなりに払わないといけませんから、
歌舞伎役者のような太客の存在は無視できません。
むしろ、せっかくお客さんとして来てもらっているのに、「そんな遊び方するなから帰ってください」なんて言えるわけありません。
「あの店は融通が利かない」などという評判が立てば廃業まっしぐらですし。

そういうこともあって、「その店」はそういう卑猥な行為や暴力行為を容認していたのだと思います。
「ママ」を訴えた方の状況はよくわかりませんが、もしかすると、入店したてで、そういうことがまかり通っているクラブだと知らずに働いていたのかも。だとしたらいたたまれないなとは思います。

そして、そういう行為をしていた香川氏や周りの人々は罰せられるべきだとも思います。

一方で、香川氏だけが悪いのかというと、私はそうは思いません。

そもそも、歌舞伎役者というのは酒の飲み方が荒い文化圏の人たち。むしろその場の「ノリ」に付いていけなければ役者としてはみ出されてしまう。
金は持っていて、クラブで遊ぶのが「いつものこと」。歌舞伎役者に来てもらえるクラブは、多額のお金を落としてもらえるので非常にありがたい。迷惑行為があっても目をつぶる。

酒を飲んで暴れるように遊ぶ「歌舞伎役者」という文化と、それをある程度受容してきた「遊び場」の関係というだけです。

こう見ると、別に誰も悪くない、むしろ持ちつ持たれつの関係。PTSDを発症された方には申し訳ないが、そういったある意味「常識から外れた」文化に迷い込んでしまった運のなさ、致し方なさがある気がします。


こういった文化を日本から徹底的に排除するのかどうかの瀬戸際に、今来ています。


個人的には、双方納得のうえで、社会に迷惑がかからない範囲でやれるのであれば、問題ないと思っています。
今回は、「納得」のない子がターゲットになってしまった。クラブのママからの説明が不足していたと思います。

「暴れるほど酒を飲む」みたいな文化も、傍で見ている分には(自分に悪い影響が飛んでこない分には)楽しいと思うのですが、もうそういう文化が存在していること自体がダメなんですかねえ。








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