Chapter1 始まりの街プロロギアス
国を出たら最初に訪れたい場所を、私はずっと幼い頃から決めていた。
始まりの街プロロギアス。
街全体が半円状の階段のような形になっていて街の中央に行くにつれて徐々に低くなっている。各段には民家や商店が所狭しと立ち並び、街の人々は活気に満ち満ちている。街の高低差は身分の高低を表すものではない。これは最底部、中央のあるものを観るための造りだ。
「ねえリリちゃん、聞いてる?」
「ごめんライカさん聞いてない。ねえ、ここから観てもいい?」
「もう、勝手なんだから。まあ構わないわよ」
2階のテラス席で私はライカさんとお喋りをしてそれが始まるのを待った。
「お二人ともー!もうすぐ始まりますよー!」
そう言って店番そっちのけで1番前の段まで駆けていく店員さん。
「ようやく始まるのね」
始まりの街たる所以がすぐ目の前にある。それをようやく拝顔できると思うと、胸の高鳴りを抑えることはもはや不可能だった。
テラス席から街の中央のオルケストラに目を向ける。向かって左側には淡い赤色のブラウスを着た女性たちと、右側には真っ白なシャツを着た男性たちが肩を並べて立っていて、彼らの前に立つ指揮者の合図を待っている。
そして一呼吸置いた後、指揮者の合図で彼らは一斉に歌い出す。
『劇団赤い鳥が』
『劇団赤い鳥が』
力強い男声の後に美しい高音の女性が続く。
『始まりの街プロロギアスに』
『やってきた』
『我々赤い鳥が織りなす儚き演劇、ご賞味あれ。それでは皆様ご一緒に』
『『赤い鳥!!』』
そうして私が楽しみにしていたプロロギアスの演劇が始まった。
○
私がこの街に着いたのは、山際が白くなり始めた曙の頃っだった。紫がかった雲が帯状に細くたなびいている様子は、冬の余寒を忘れさせる美しさだった。それが私には入国待ちの大行列に加わる人々を歓迎する景色に思えた。
「ようこそ始まりの街プロロギアスへ。お仕事で来られたのですか?それとも観光ですか?」
「観光よ」
「では演劇を見にいらしたのですね。本日は正午よりオルケストラにて開演でございます。尚、コロスのプロロゴスは必ずお聞きになるようお願い申します」
いきなり知らない単語と恐ろしい単語をぶつけられて戦慄する私だったが、大行列を前に門兵さんにあれこれ質問する度胸を私は持っていない。さらりとお礼と労いの言葉を渡して入国する。
無事入国を果たして門をくぐった私の目に心待ちにしていた景色が飛び込んできた。白く輝く閃緑岩でできた段々畑状の街並みが朝日を浴びて幻想的な輝きを放っている。桃源郷とはまさにこのことだろう。
「そういえば門兵さんがオルなんやらとか殺すとか言ってたけど、どういう意味かしら⋯⋯」
「ひょっとしてお嬢さん、この国は初めて?」
そう声を掛けてきたのは、黒い髪のよく似合う大人びたお姉さん。戸惑う私を見兼ねて駆けつけてきてくれたのだろう。なんて心の優しい女性なんだろう。
「ええ。今着いたばかりよ。あなたは?」
「ライカよ。この国でカフェを経営しているわ。折角だから少しこの街を案内して差し上げましょうか?」
そうして私は大人びたお姉さんもといライカさんに始まりの街プロロギアスを案内してもらう事になった。
演劇で有名な街だったから演劇関連のものが多いのかと思っていたが、どうもそうではないらしい。ライカさんはとっておきのスポットをたくさん紹介してくれた。
「ここが一番人気の食品街道よ。ドーナツやクレープ、たい焼きとか甘い物がたくさん揃っているから私はスイーツストリートって呼んでいるわ」
「随分立派な通りね。わっ、美味しそうなドーナツ!1つ頂こうかしら」
甘い香り漂う通りに並ぶ商品は、それだけで私の幸福感を満たしてくれた。何時間でもいて居られる程に素敵な場所だった。
「次はこの国で単価が一番高い商店街、リッチベリーよ。ブラックベリーをふんだんに使ったパンケーキが有名でね、各国のお金持ちがこぞって集まるのよ」
この通りの店舗は例外なく全て内装に金をあしらっている。通りの石畳にまで金色が散りばめられていて、土足で踏み入れるのが躊躇われるほどだったがライカさんはお構いなしに突き進む。
「あの、ライカさん。ここは場違いじゃないかしら。歩きたくないわ」
通りの豪奢な雰囲気に不相応だと感じた私は、遠目から眺めるだけにしておいた。彼女は気にならないのだろうか。
そして次。知る人ぞ知る隠れた名店街で、チーズケーキが特に美味しいそうなのだけれど。
「隠れたってこういう意味?どこも『閉店』って書いてるわよ?」
ここの通りはどこも例外なく『閉店』の2文字が掲げられていて、なかには『経営難のため全従業員をリストラしちゃいました』とか『来世ではもっと頑張ります』とかふざけたことを書く店もあり、名店が隠れているとはとても思えない。
「実はここ、全ての店が営業中よ。ドアを2,3回ノックすると開くようになっているの」
「2,3回ってどうやって叩くのよ……」
こんこんこつ、と器用にドアをノックするライカさん。
ーーーー。
ーーーーーーーーーー。
「気を取り直して次のお食事処はーー」
「あのー!!食べ物以外で何かないかしら。ちょっと疲れちゃった」
「うん、無いわね」
「んなアホな⋯⋯」
この人の頭には食べ物の事しかないのだろうか。観光客が集まる雑貨屋さんを目の前にして言うセリフではないはずだけど。街の案内と言うよりは、食い倒れの旅に無知な観光客を振り回しているだけに思えた。
「んー、確かに少し疲れたわね。じゃあうちのカフェで休憩にしましょう?」
そうライカさんが指差したのは、白く針のように細かい花の咲き誇る小洒落たカフェ。看板には女の子っぽい丸い文字でこう書かれていた。
『チョコレートカフェ ライカ』
行くわよ、とライカさんは私の左手を引っ張り、軽やかな足取りで私たちは『チョコレートカフェ ライカ』へと向かった。
「ここってお魚料理はあるのかしら」
「うん、無いわね」
○
ビターな香りの広がる店内では、テーブル磨きにご執心の店員さんが開店準備(テーブル磨き)を行っていた。開店まではまだ時間があるようだった。
「あ、ライカさんおはよう。今日は休むんじゃなかったんですか?」
「おはよう。たまたま街で旅人さんに出会ってね、ちょっと街を案内してたのよ。それと、もうテーブル磨かなくてもいいわよ。擦り減ってるから」
テーブル磨きにご執心の店員さんに磨かれたテーブルは、中央に向かって窪むように擦り減っていた。それはこの街の全容を体現しているように見える。これはこれで話題性があるかもしれない。
「案内って、食い倒れツアーに振り回していた、の間違いでしょうに⋯⋯」
そんな事ないわよ、と平気で嘘をつくライカさん。まあ楽しかったから別に良いのだけれど。
テーブルさんに軽く挨拶をして私とライカさんは2階のテラス席へと進んだ。開店前の閑散としたカフェに入ったのは初めてだったのでなかなか感慨深かった。席について外に目をやると入国時よりもうんと人が多く、街はより一層の賑わいを見せた。『チョコレートカフェ ライカ』の静謐さが更に街の喧騒に拍車を掛けている。
「素敵な場所ねぇ。連れてきてくれてありがとう、ライカさん」
お魚は無いようなのでココアとトーストを頂くことにした。
「いえいえ。ところであなたのお名前、聞いても良いかしら」
「あ、名乗ってなかったわね。私はアマリリスよ。よろしくね」
良くしてくれた人に自己紹介もしないなんて、失礼この上ない。初めての旅であったこともあるが、主に食い倒れツアーの疲労のせいで完全に忘れていた。私の落ち度ではない、と思いたい。
「じゃあリリちゃんって呼ぶわね。で、リリちゃん。門兵さんの言っていた単語がわからなくてブツブツ言っていたんでしょう?」
そういえばそうだった。ドーナツを食べた瞬間に綺麗さっぱり消えてしまっていたが確か、オルなんやらとか殺すだの殺さないだの言っていた気がする。だから改めてライカさんに訊いてみた。
「まずはオルケストラね。オルケストラはあそこ、国の中央の一番低くなっている場所よ」
今私たちが眺めている丸いスペースがオルケストラというようで、広さは一般的な広場と変わらないくらい。そこで演劇が行われるということらしいが、劇を行うには少し広い気もするし、丸いとスペースを使いきれないのではないか。
「演劇って3カットくらいでやるの?正面と左右側面からお送りします、みたいな」
「ごめんなさい、その発想はよく理解できないのだけれど⋯⋯」
私の間抜けな発想に困惑しながらも、ライカさんは続きを説明してくれた。
曰く、オルケストラは音楽隊の人たちが歌い踊る場で、劇は後ろの舞台で行われるのだそう。そしてこの音楽隊の名前がコロスというらしい。殺意を抱く相手にいう言葉だと認識していたが、それも改めなくてはいけない。そのコロスの人たちが演劇前に歌い踊るのをプロロゴスというそうだ。門兵さんが絶対に聴けと言っていたが、それほどにまで良いものなのだろうか。
「それで、舞台ってどこかしら?ここからは見えないのかなー」
後ろの舞台で行われるということだったが、背景の壁と質素な木の板があるだけでそれらしきものが見当たらない。後ろの壁が中央から障子のように開かれるのか、どこかの弟が舞台を背負ってくるのか、皆目見当がつかない。不思議そうに首を傾げる私にライカさんは「ふふっ」と笑みを溢しながら教えてくれた。
「あそこに木の板があるでしょう?あれが舞台よ」
ライカさんが指差した木の板はとても舞台と呼べる代物ではなかった。高さは膝上くらい、幅は木の板3枚分。後付け感満載の台がそこにはあった。それは私がさっき見ていた質素な木の板だった。
「嘘でしょ小っっさ!予算配分下手すぎでしょ」
「前はあんなの無かったんだけど、皆んなの意見を取り入れたらああなったのよ」
「いや意味わかんなーい」
簡単に説明すると、立派な舞台を建てたい人たちと今までの状態を維持したい人たちの二つの意見を、国が中途半端に取り入れた結果だそう。あまりに酷い。
「お二人ともー!もうすぐ始まりますよー!私は一番前で見てきますからー!」
テーブルさんが店の外から私たちを見上げて叫んでいた。私が国の残念な事情に頭を抱えているとは露知らず、陽気に駆けて行った。ここは任せた先に行く、と訳のわからない言葉を残して。
「⋯⋯お店、大丈夫なの?」
「ええ。既に代わりの子が来てくれているから」
テーブルさんが悪い意味で信頼されている事がわかったところで、街の喧騒が一段と大きくなった。オルケストラ周辺には続々と人が集まり、コロスの皆様が入場する。
そして指揮者の合図で合唱が始まった。観衆の「赤い鳥」コールを皮切りに歌声は大きく力強くなっていく。甲高い女性の歌声は風に揺れる風鈴の音色のようで、響く男性の重低音は揺れる大地のようにパワフルで。相互にバランスを取り合い見事なハーモニーが完成する。それに合わせて観衆もヒートアップしていき、歌詞を口ずさむものや手拍子を打つもの、踊りを真似る人たちもいた。
お芝居の前に合唱が行われると聞いていたから、場慣らし程度の前座のようなものと思っていた。ここまで熱いとは想像の埒外だった。私を含め、街全体がコロスに魅了されていた。
それはとても素敵な雰囲気だった。
だがしかし。
この歌詞、どうにも気がかりだった。
「えらく説明くさい歌詞なのね、鑑賞の注意とか劇のあらすじとか。もっと情熱的な歌だと思っていたのだけど」
「それが彼らの役割じゃからな。そしてこの国では劇本編よりも人気なんじゃよー」
そう得意げに話すのは年長者の貫禄があるおじ様。いつの間にか『チョコレートカフェ ライカ』は開店時間を過ぎていたようで、店内には演劇を観るためにお客さんたちが集まっていた。
「そうなんだー。で、おじさん誰?」
他に席が空いているのに何故か相席してくるおじさん。ここ二人席なんだけど⋯⋯。
「わしはシェイクじゃ。ーーえ、もっと劇について聞きたいって?ならこれをやろう」
「私何も言ってない⋯⋯」
「リリちゃん、その冊子に何が書いてあるの?」
シェイクさんから貰った冊子をペラペラとめくって軽く中身に目を通す。分量は結構なもので本一冊分はあるだろう。全て読み切るには骨が折れそうだった。
「ふむふむ。何かの台本のようねー。あなたが書いたの?」
「いかにも。わしの自信作じゃ!劇を見ながらよーく読んでおくれ」
それじゃあ、と道化じみたお辞儀をしてシェイクさんは去っていった。
「財産相続を巡る国王と3人の娘のお話しかぁ、重そう」
「面白そうじゃない!見せて見せて」
「へえ、ライカさんってこういうの好きなのね」
「お金大好き」
人は見かけによらないもので、ライカさんの目はl燦然と輝く太陽のように眩しかった。
シェイクというよく分からないおじさんの台本を丁寧に読み進めるライカさんだったが、2ページほど読んだところでページをめくる手が止まった。そしてこう言った。
「ちょっとこれ、今日の劇の台本じゃん!」
なんと、シェイクさんは、今日の演劇の脚本家であらせられたようだった。
「タイトルはなんていうの?」
その時ちょうどプロロゴスが終わったようで、本日上演する劇のタイトルコールがなされた。
『リアム王、開演です!』
そうしてシェイクさん渾身の一作『リアム王』が始まった。
○
某国国王リアムには3人の娘がいた。どの娘も自慢の娘だったが、中でも特に彼が可愛がっていたのが三女だった。
ある時リアムは権力と領土を分け与えようと、娘たちに自身への想いを語らせた。
長女と次女は心にもない甘言でリアムのご機嫌を取ったが、三女は最低限の感謝のみを伝え、リアムの素行の悪さについて言及した。その結果、長女と次女には権力と領土が与えられ、リアムの気分を著しく害した三女は勘当されてしまった。
『あの子よく言ってくれたわね、ちょっとは気分も晴れたわ。これでちょっとは大人しくしていてくれると助かるんだけど、あの人』
『ぬるいですわ。お姉さまのあの人への憎しみはもっと深いでしょう?私にいい考えがありますの』
ここから悲劇の歯車が回り始めた。
長女と次女は権力と土地を手に入れた途端、リアムを老害扱いし、酷い嫌がらせを始めたのだった。彼の態度が改善されなかった事も一つだけど、2人の憎しみは既に閾値を大きく超えていた。
初めはリアムの部屋に虫の死骸を入れたり、紅茶に汚れた雑巾の搾り汁を入れたりと可愛げのあるものだったが、徐々にエスカレート。食事に針を仕込んだり、階段の手前にワイヤーを張ったりと、一歩間違えれば死んでしまうような仕掛けを彼女たちは行った。身の危険を感じたリアムは屋敷を離れ、恥を忍んで三女の元へ行くことを決意する。
リアムの失踪に気づいた2人は「王が誘拐された」として捜索隊を派遣した。もちろん捜索隊は建前で、実際はリアムを始末するための討伐隊だった。
『捜索隊が見つけたのは、謀反を企む誘拐犯。反逆罪で即刻打首。その後王は見つかるも、既に事切れた後だった』
『ふふっ、最高の筋書きねお姉様。誘拐犯がバカな妹ならもっと気分がいいのだけれど』
彼女らの悪巧みは順調に進む。
無事三女の元に辿り着き再会を果たすリアムたちだったが、同時に討伐隊に包囲されてしまっていた。
『お父様には素行の悪さを改めて欲しかった。時間を稼ぐから逃げて。ーー次は失敗しないで』
『わしはお前を、お前の事を!』
三女はリアムを突き飛ばした。
『来なさい下郎ども。この命に変えてもお父様の元へは行かせないわ』
彼女は懐から短剣を取り出して討伐隊に立ち向かう。
その後の展開は長女の筋書き通りの展開となり、長女と次女は莫大な利権を手に入れた。
しかし皮肉なもので、長女と次女の所業は討伐隊の隊員によって告発され、2人は国家転覆罪で処刑された。
大きな刃が2人の首を跳ね飛ばしたところで、『リアム王』は幕を閉じた。
○
「悲しいお話しだったわね」
「そうね、私は何度見ても三女の最期のシーンで泣いちゃうわ」
ライカさんの頬には涙の跡がまだ少し残っていた。
「いいシーンだったものね。でもどうして三女はリアムを守ろうとしたのかしら。勘当されたのに」
「分からないのリリちゃん。愛よ、愛。慈母の如き三女の愛はそんなことでは揺らがないのよ」
「ふーん。なんだか一人だけすごく可哀想な役回りね」
「自分の信念を押し付けて場を弁えない発言をした彼女も悪い、ていう見方もあるのよ」
なるほど、人の数だけ解釈があるのね。それを踏まえた上でもう一度見ると、また違った劇に見えるんだろうな。
劇の余波で街の人々はしんみりとしていた。三女の最期に涙を流す人もいれば、悪役が処刑されてスッキリした表情の人、周りに合わせてしんみりしておこうという私みたいな人もいた。
そこに街の静寂を破るものが現れた。
「いやー、やっぱり一番前は最高ですねー。見て下さいこれ!」
周りの様子なんて気にする様子もなく陽気にテーブルさんが戻ってきた。とても満足した表情で、何か丸いお土産を持ってきてくれた。
「えっと、これは何⋯⋯かな」
「長女の首です!」
「なんて物渡すのよ!
思わず放り投げてしまった。「一点物なのにー」とか言って首を追いかけていくテーブルさん。石膏の作り物とはいえ、やっぱり気持ち悪い。なんだか呪われてそう。
「終わって早々縁起悪いわね。これお清めの粉よ、良かったら使って?」
「悪いわねーライカさん。⋯⋯これは?」
四角いんだけど。甘い香りもするし。
「角砂糖よ」
「えいっ」
ライカさんの口の中に入れて差し上げた。これで呪いも解けるだろう。
おふざけはこの辺にして、私は席を立った。
「いいものが見れたわ、ありがとう」
「あら、もう行くのかしら?」
「うん、見たいものは見れたしね」
初めは何日か滞在しようかと思っていたけど、この国があんまりにも良い所だったからずっと居ていたくなってしまうと思った。
「それにここが始まり。私のプロローグだから」
「そう。また来てねリリちゃん。お元気で!」
「ええ。ライカさんこそお元気で」
ライカさんはにっこりと微笑み、私が国の門お出るまで手を振り続けてくれた。どこまでも良い人だ。こんな人と出会えて私は幸せ者だ。振り返って、小さくなったライカさんに向かって叫ぶ。
「次はお魚、用意しておいてねー!」
ライカさんの姿は見えなくなっていた。
この広い世界、みんながライカさんみたいに優しい人ではない。それでも私はもっとたくさんの人と出会ってお話しがしたい。出逢った人たちとの縁を大切にしたい。
「さて、次はどこへ行こうかしら」
私の旅はプロローグを終えたばかり。新たな出逢いに期待を膨らませて次の場所へと私は進む。