リーズナブルな回らないお寿司屋さんに行ってきた話
鮨屋のうおきん。おまかせの鮨コースが8000円?安すぎるから行ってみようということで、予約してみたんだ。十年来の友人と一年ぶりに会う。
新橋西口通り
エッチなお店がいっぱいある地区の中に、目的のお店がある。
いっぱいあるエッチなお店が目的ではない。
断じてないのだ。
周辺の景色
ここは目的のお店の向かい側にある、おいしそうなラーメン屋さんである。が!
しかし!
ラーメン屋の壁にB1スクールキャバクラの看板がめりこんでいる!異様な光景だ!この町の人はなんとも思わんのか?ラーメン屋も拒否しろよな!
外観
ここが目的地、うおきんの入り口だ。
看板のデザインがおさかなで素敵だ。
ぼくは「ついたよ」とメールをした。
友人から「なかにいるよ」と返事が返ってきた。
ほんとだ。なかに友人がいますよ。
L字型のカウンターの中に板前さんがいた。
ごく普通の髪型(ざんぎり頭?)、ねじりハチマキ、短い顎髭という見た目だった。
いいなぁと思った。ぼくは髪もヒゲも無い。
友人は「俺7kg痩せたよ」とシェイプアップをアピってきた。
ぼくは「全然わからないよ。太ってるよ」と言った。
友人は酒豪だが健康に気を使ってノンアルコールビールを頼んでいた。
ぼくはお酒が苦手なのであったかいお茶を頼んだ。
シマアジ
小鉢にあらかじめ用意されていたつまみが一気にきた。
キングオブキングフィッシュ、シマアジのお刺身だ。
シマアジ好きなんですよ。
見た目はハマチみたいだけど、食感が違う。弾力があっておいしい。
シマアジを初めて食べたのは10年前だ。
活けのシマアジを初めて捌いた時の記憶も蘇った。
寿司職人0年生のある日、いけすから網でシマアジをすくったものの怖くて殺せず、
呆れる店長に半身にしてもらったやつの、がんばら(肋骨)を掻こうとした瞬間、
死んでるはずのシマアジの半身がビクビクビクビクッと動き、ぼくは悲鳴を上げた。手に残る殺しの感触。
「びびってんじゃねえ!板前になれねえぞ!」と怒られたのを覚えている。
その後店長にがんばらをオーブンで焼いたものを食べさせてもらって、
単に焼くだけでこんなにうまいものがこの世にあるんだと感動したのを思い出した。
10年前の話だ。今は毎日普通に生物を殺している。なんとも思わない。
牡蠣
カキは苦手だ。
出てきた瞬間、しまったと思った。
食べたくない。
苦手は事前に電話で聞かれていたのに、苦手な食べ物はありませんと言ってしまっていた。
なぜカキが苦手なことを忘れていたのだろう。
というか、お寿司屋さんでカキが出てくるとはまったく思っていなかった。
20年振りに食ってみるか。
ノロウイルスに当たって以来避けていた生ガキを食べた。
微妙だった。
やはり、食べ物はおそるおそる食べてはいけない。
多分この全く生臭くなく、新鮮でひんやり、ツルっとしたカキは、好きな人が食べたらおいしいはずだ。
でもぼくはおいしいと思わなかった。
これは完全に食べる側の事情だ。
もったいないし、作ってくださった人にも申し訳ないことをしてしまった。
サワラのかぶら蒸し
サワラ、きめ細かくて白くてふわふわの身が好き。
最近豊洲で買ったサワラ、寿司にしたり焼いたりして食べて超おいしかった。
すりおろしたカブを白身魚に乗せて蒸し、器に盛ってから銀餡をかけて仕上げるめんどくさい料理、かぶら蒸し。
自分では絶対に作りたくない。
だが、当然うまい。最高。
人が作ったかぶら蒸し、また食べたい。
トロ
中トロ、あっさりしてておいしかった。
味が濃くないマグロだ。
序盤だから味が濃くないマグロを出す。とても理にかなっている。
関係ないけど石の皿を持ち上げてみた。
重たかった。
石抱(江戸時代の拷問)を思い出した。
イワシ
イワシ、若干生臭みを感じた。
でもこれも先入観かもしれない。
ぼくは普段イワシは食べる直前に皮を引く。
ここのお店では迅速にスシを提供するために、あらかじめ皮がひいてある。
イワシの皮が引き立てではないなぁと思いながら食べてしまった。
おいしいイワシを楽しむというより、
生臭みを探しながら食べてしまった。
「このイワシは皮が引き立て出ないから生臭いのではないか」と思いながら食うイワシは生臭くて当然だ。
というのを1秒ぐらい心で思ったけど即座に打ち消して
「おいしい!イワシ好き!」と言った。
友人も美味いねと言った。
友人は上喜元という日本酒を注文した。
北寄貝
もっと炙って欲しい、と思いながら食べた。
ここまで書いていて思ったのは、ぼくは文句多すぎってこと。もう僕は寿司を純粋に楽しめない人間になってしまったということだ。
クッソうるせえウザイジジイコース確定の残念人間になってしまった……
少なくとももう人が作ってくれた寿司を食って感想言うのは辞めようと思った。
とにかく自分の心の声がうるさすぎる!文句があるなら自分で作って食えよ!このハゲ!
クルマエビ
クルマエビ、好き。この、見てください、しっぽの部分を斜めにキメているのを!かっこいいですよね。
アジ
アジ、好き。おいしいアジだけ一生食べたい。
漬け
江戸前の漬けや!
チュルンとしてて綺麗!美味しそう!
おいしい!
お酒が飲みたい!
メシ食っててお酒が飲みたくなったのは初めてかもしれない!
日本酒もリーズナブルな価格だったので1番高いやつを迷わず注文した。
純米大吟醸尾瀬の雪どけ。
お酒、甘くて美味しい……。スシに合う……。
白子ポン酢
ぼくは持病に痛風というカスがかかる病気を抱えている。左足首と右の足の甲が年がら年中痛い。
痛風患者が食べてはいけない料理筆頭がこの白子だ。
日本酒と白子を交互に口に運ぶ。もう死んでもいいので。
クルマエビの頭
クルマエビの頭は硬いが、油で揚げることで美味しく食える。
シマアジ
刺身で出てきたシマアジが寿司でも出てきた!
普通刺身で使ったネタは鮨では出てこないので、これはセオリー外の構成であった。
嬉しいサプライズ。
シマアジ好きなのでとても良かった。
甘エビ
2種類目のエビが出てきた。茹でておいしいクルマエビの次は生で食べておいしい甘エビ。
「まだ出てくるの?」
「まだまだ出てくるっぽいよ」
僕たちは喜びと驚きを分かちあった。
ネギトロ
マグロの味の濃い部分が出てきた。
コースの終盤ということだ。
当然美味しかった。
マグロってなんで美味しいんだ?
もしぼくが入院したらネギトロを点滴して欲しい。
アジのガリ巻き
海苔、アジ、ガリ(生姜の甘酢漬け)、シソ、きゅうり、ゴマが入っているようだ。多分入っているはず。今写真を見ながら必死に思い出しながら書いてる。だってもう酔ってたから覚えてないんだもん。
マグロのすき焼き
確かマグロのすき焼きと言っていた気がする。
目の前の鍋で甘辛い出汁で調理してくれた。マグロの腹のスジが強い部分。加熱すると柔らかくなっておいしい。
この時点でもはや美酒と美食により頭の中はヘブン状態である。
ウニ
ウニ、好き。
これを食ったら大量のプリン体の摂取により両足切断確定だが、食べた。
明日から両足義足の海賊船長として生きていこう。海賊王に俺はなる!
いや、両足義足の海賊は海賊王にはなれない。最弱の海イーストブルーの藻屑となるだろう。
なんの話?
鉄火巻
まだマグロ食べれるの嬉しい。もっと食べたい。
しそが効いててうまい。
ありがとう。ありがとう。
玉子焼き&べったら漬
完全にコースは締めに入った。ああ、もー終わりかー。
美味しかった〜。
ご馳走様でした。
アナゴ
締めた後にアナゴが出てきた!アナゴ好き!
皮目をもっとバリバリに炙ってくれよォ〜!
でもおいしい。
炙りトロ
コース終了。
ここで板前さんが「お好きなネタ2貫サービスします。どうぞおっしゃってください!ウニは勘弁してください!」と言った。
お客さんたちはサプライズに感動し「おおお!」と声をあげた。
ぼくは漬けマグロと炙りトロを注文した。
おなかいっぱいだがまだマグロなら食える。
当然大満足した。
死ぬなら今しかない!心臓発作、今来てくれ!今が人生の絶頂なんだ!頼む!
抹茶のお菓子
ういろうかようかん。なんだったか忘れた。
結論、全人類みんなが行くべき店
2人で会計が2万円だった。
「もっとお酒頼まないと申し訳ないね」と友人は言った。その通りだ。
安すぎるからお酒が飲める人たちはたくさんお酒を注文してお店を応援しようね!でないと潰れちまう。
こんな安くておいしいお寿司屋さんがあるなんて。僕はお寿司屋さんを開く自信がなくなった。一生雇われで生きていこう。
おしまい
追記
写真を撮り忘れてるけど煮だことするめいかの一夜干しのツマミもコースに入っていました。
ガリは竹生姜の甘酢漬け。柔らかくて美味しかった。