作業環境を広げた話
良いキーボードが使いたい
これまで私は 60cmx47cm の折り畳み机を使い作業をしていた。狭いので MacBook 12inch とコップとビールくらいしか置けない。
ただ私が使っているのは、エディタと画像表示ソフトとブラウザくらいだ。全てのアプリケーションを画面ギッチギチにして使っているため、物理的な場所が狭くても問題はない。
昔と違って今はソフトウェアもデジタルアーカイブもすごいことになっていて、この程度のスペースでも大量の資料を扱いながら本を書いちゃったりできてしまう。実に素晴しい時代になったものだといったところである。
もともと小さいものが好きなことと、どこにいても常に同じ作業環境が確保でき、引越しの時も楽といったメリットもあり、ずっとノートパソコンのみで作業を続けてきた。
しかし MacBook のキーボードが駄目すぎて、大量に入力をしていると爪が痛くなってくる。良いキーボードを使いたいとは思うものの、60cmx47cm しか面積がないためキーボードを置くと MacBook が邪魔だといった問題が発生する。新しい MacBook のキーボードはマシになったみたいだけど、頻繁に持ち運びをするので1kgより重いノートパソコン使いたくない。
そんなこんなで外付けのキーボードを使うために、作業環境の拡張を試みた。ところが借りている部屋が狭く、なんとか確保できたのは 80cm×55cm といったスペースである。このスペースに改善された作業環境を作るのが今回のミッションである。
というわけで簡易生活的に考えながら環境を構築していく。ちなみに簡易生活とは明治時代に誕生した生活法で、だいたいのところは次の記事にまとめてある。
もっと詳しく知りたい人は私の本を読んでみてください。
面倒くささを超越するために
スペースを作るためにも収納を工夫するなど色々したのだが、これは住環境によるところが大きいので割愛、広い家に住むのが一番だと思われる。とにかく私に与えられたのは 80cm×55cm といったスペースで、ここに必要なものを置いていく。
当初は机に MacBook とキーボードを置けばいいだろと考えていたのだが、とにかく面倒くさいことは続かない。かなり昔にマルチモニタとキーボードみたいなので作業をしようとしたことがあるんだけど、ノートパソコンを接続するとその場所に移動するのが面倒くさすぎて使うのを止めたことがある。
ケーブル一本つなげるだけで使えるわけだけど、それはこれまでなかった行為なので、面倒くささが発生する。面倒くさいことするくらいなら、ノートパソコン使ってりゃいいだろってなる可能性が高い。
面倒くさいことを続けるためにはどうすればいいのかというと、『悪いより良いほうが簡易であるから「良くなるように心掛ける」』で、つまり接続することでメリットが発生する仕組みを作り、面倒くささを超越する必要がある。
もともと本体にケーブルをつなげるタイミングも存在していて、それは充電するための作業である。だからキーボードを接続すると充電できるような環境を作ればいい。
これで面倒くささは多少は減るような気がするのだが、充電とか寝る前にしたらいいだろといった感じなので、使おうと思った瞬間にケーブル一本つなげるついでに「充電もできる」という『良さ』では、面倒くささを超越できない可能性が高い。
というわけで、ここに本体より大きく解像度の高いモニタを加える。スペースの問題で Macbook を閉じた状態で使うことになるので、マウスも追加する。
こうすると大きなモニタとまともなキーボードとマウスが使えて、Macbook が充電できる環境になる。これならケーブルをつなげてギリ使ってもいいかなと思わないでもないといった感じになると思われる。
机とモニタとキーボードとマウスの選定
簡易生活では『「機能を中心に選択する」と必要なものが選べるようになる』と考える。だから機能に着目して、必要な要件を考えていく。
なにか買おうと思った時に、選択肢が多くて大変みたいな状況になることがある。でも自分が必要とする機能を決めておくと、それに適した商品はほとんどない状況になり、あまり迷わなくなる。商品には色々な要素があるわけだけど、バランスをムシって自分が本当に必要としている機能を優先するっていう感じである。
今回必要なのは、「爪が痛くならないキーボード」で、「爪が痛くならないキーボード」を設置するための机の面積と、使う気になるための充電しながら映せるモニタとマウスが必要っていうことである。
机の機能は、物質を適切な位置に置き、作業する場所を確保することである。だから 80cm×55cm の製品を選ぶだけでいい。奥行はもっとあったほうがいいんだけど、狭いんだから仕方ない。あと私は座り方がおかしいので、高さは60cmのものを選ぶ。当時はコロナで机不足になってたこともあり、このサイズと高さの机はひとつしかなかった。ものの見た目が好きな人は大変かもしれないけれど、座ってる時に見えるのは机の天板だけなんで、気にしなきゃ大丈夫だと思う。
モニタの機能に着目すると、視野の中に必要なものが表示され、疲れなかったらなんでもいいということになる。ケーブルでゴチャゴチャするのは簡易ではないので、USB Type-C ケーブル一本で充電しながら画面表示できる製品を選ぶことになる。値段は普通くらいで 4K で気休めだけどブルーライトカットがついているものにする。あとできれば白色がいい。こういう制限を付けると選択肢が消滅し LG の 27UL850-W しかないといった状況になった。
画面の大きさは距離で決めた。モニタから1mちょいは距離を取れるので、27inchでギリギリ、画面が広いと視点を動かす必要が出てくるので 24inchくらいの画面が良かったんだけど、そんな製品を発見することができなかった。厳密にいうと本体に ThunderBolt 付いてたら選択肢はあったんだけど、それだとパソコンを買い替えなくてはならない。ノートパソコンは1kg 以下で消費電力が低くてショボい充電器でも充電できる商品じゃないと嫌なので MacBook だと選択肢がない。
Windows パソコンも視野に入れると、そういった商品も存在している。ただどの程度の信頼性のある商品なのか、USB PD がどの程度ちゃんと動くのか、該当するモニタと接続できるかなどを調べて、US配列じゃないと嫌なので個人輸入した後で macOS と同じ環境を作って……とか考えてると面倒くさすぎてゲボでそうになったので妥協してるんだけど、人生こんなものだと思う。
ワイヤレスのマウスやキーボードは充電しないといけない。ケーブルはなけりゃないほうがいいけど、二つも充電するディバイスが増えるのは面倒くさい上に簡易ではない。あと機械の寿命が電池の寿命っていうのも嫌なんで、本体に電池が入っていないワイヤードの製品を選ぶ。
インプットするためのディバイスが変わると、新しいものに順応するのが面倒くさい。だから耐久性も考える。耐久性のあるキーボードやマウスは概ね品質も良いはずで、自然に良いものを選ぶことができるだろうといったところである。
昔はキーボードが好きで色々と試していて、NEC の古いキーボードとか Apple の初期の拡張キーボードが好きだったんだけど、中古で変なの買ってくるとか、そんな疲れることはもうしたくない。新品で普通のを買うのが一番だと思う。
ただちょっと問題があって、私はかなり昔から文字入力の時だけ Dvorak 配列、コマンドやらショートカットは Qwerty 配列といった入力環境で、これを維持するためにはものすごく普通の US 配列が望ましい。スペースが限られているので、エルゴノミクスキーボードは少し難しいので除外、スイッチが良く、なるべく小さくワイヤードでそこそこ安い普通の US 配列のものを選ぶと、自然に Niz のキーボードになった。耐久性は未知数だが、スイッチが良いのは確かではある。
Niz のキーボードは「REALFORCE」や「Happy Hacking Keyboard」と比べると、雑なところはある。そのかわりに一部の性能が少し上といった商品である。商品だけでなくサポートページやら商品の解説も雑なんで、微妙なところではあるんだけど、機能的には問題なくて安いという特徴がある。なんか値上りしているようなので、メリットなくなってきているような気がしないでもないけど、基本的には良い製品だと思う。
私はキーボードは好きだがマウスに関しては好みもなにもない。昔はマウスの重要度が高い環境で作業していて Kensington のトラックボールが好きだったが、今はキーボード中心の生活をしているので、あんまりどうでもいい。それでも変なマウスは嫌だという感じで、妥協して変なのを買ってしまい、気に入らずに買い替えみたいになるのは簡易ではない。でもあんまり興味はない。
こういった状況下で私は、最もマウスを使いまくっているような人間の選択肢を真似するという手法を使う。これだと最短で最適解が得られる。
現在、最もマウスを使っているのは誰なのかと考えると恐らくゲーマーで、ゲーミングマウスの中から評価の高いものを選ぶ。キーボードとモニタの裏が白いので、マウスも白、スイッチのメーカーが良さそうなものというと、これしか選択肢はなかった。
ロゴとかケーブルの色とか思うところはあるが、それ言い出すと MacBook のリンゴやらモニタの下のほうも変な形なので、まあいいかっていう感じである。マウスは普通にヒュンヒュン動いていた。
ケーブル問題
ケーブルがゴチャゴチャしているのは簡易ではない。というわけで整理する。基本方針は目に入る場所がうっとうしくなくなれば良いというものである。今はこういう感じで不快ではない。
100均でケーブル整理するアイテムが売ってるんで買ってきたら良いと思う。
マグネットがついている USB のハブも購入した。モニタの後ろに張付けられて便利であった。小さめの商品を購入してモニタに固定してしまうのはなかなか良いと思った。
使い始めてモニタを結構動かすなと思ったのでアームをつけた。
アームはなにが良くてなにが悪いんだか分からないので、昔からの定番商品にした。
最近はデスク回りを整えることが流行っているみたいで、かなり参考にさせてもらった。私がやってるのも他人とやってることはだいたい同じなんだけど、電源アダプターの長さを最小限にするとスッキリしやすくて良い。
アダプタ本体はこちらに収納している。
特に目新しいノウハウはない。それでもなんだかんだで、そこそこのところにまとまったと思う。
個人的にはケーブル自体それほど嫌いでもなくて、まとまっている姿を見るのはなかなか良い。
下から見るとこういう感じ。
こういうことをしているとなかなか面白く、マウスを分解してケーブルつけかえて全部白にしようかなとか思ったりもしたんだけど、私は別に部屋に興味があるわけではない。不快じゃなければそれでいいといったスタイルなので、これで納得している。
パソコンの環境構築
OS は macOS 主に XQartz 上の Emacs を使っている。XQartz の Emacs のフォントの大きさを変えるのが面倒くさいので Cocoa Emacs を使うことにした。
使用感は XQartz 版のほうがシャッキリしていていいが Emacs は Emacs といった感想で、もうずっと以前から Emacs 以外のエディタを使いたさがあるのだけれど、Epwing の辞書を使いたいのと、文字入力の際には Dvorak それ以外は Qwerty 配列を使いたいという課題がクリアできなくて、なかなか移行できずにいる。
入力の問題はなんとかなるような気もしないでもない。しかし辞書の問題は大きい。市販の辞書のソフトは出ているものの、Emacs で使う lookup より良いものを見付けるのは難しい。お金を出して使い難いものを使うのは狂った感じがしている。内容が古くなってるので新しい辞書が欲しいけど使いにくくてゲボ出そうな商品だと辞書自体を使わなくなってしまうので、内容がいくら良くても意味ないといった雰囲気である。
操作感は劣化するけど、macOS の標準の辞書ソフトなら他のエディタで制御できそうではある。そして標準の辞書ソフトで Epwing 辞書を使えそうな雰囲気もあるのだが、頑張って劣化したものを作り出すというのも狂った感じがする。
変化を嫌うのは簡易生活的には誤りだが、問題ないのに変えて環境が劣化するというのも簡易ではないので、このあたりは難しいところだと思う。
その他、変更した点としては、モニタがデカくなったのでウインドウを操作するためのソフトを入れた。
これは必須だと思う。その他には特別にしたことはない。
感想
指が痛くならないのは良かった。マウスは軽すぎて無理だと思ったんだけど、慣れてきたらいけるようになった。
画面が広いのはあんまりどうでもいい感じで、MacBook の性能がイマイチなのか、トロくさい時がありストレスある。
あと27インチのモニタは全部を見ようとすると目を動かさないといけない。これは結構なデメリットだった。全部が視野の中に入っている状態でアプリケーションをキーボードで切り替えて、目に移る情報を変えるみたいなスタイルで作業するので、目を動かすのがダルいみたいな雰囲気があった。ただし国立国会図書館デジタルコレクションの書籍が多少は読みやすくなった。集中して5冊くらい一挙に読むみたいな状況下では効率が上がった。
やってみて分かったんだけど、画面が2倍になると作業効率が2倍になるわけでもないし、キーボードが良くなると大量に入力できるようになるわけでもない。結局のところ大量にインプットして、考えるのが私の活動の中心なのだなといった雰囲気だ。あと狭い部屋で無理矢理置いたので、すごい邪魔っていうデメリットもある。でもまあ仕方ないといったところで、私は部屋に関してそんなに情熱があるわけでもなく、引っ越そうともならない。平和に生きていけたらそれでいいと思う。