細野晴臣『あめりか』は控えめに言ってもサイコー!
Amazonで細野晴臣の新作『あめりか』
のややネガティブなレビューを見かけたので、僕はそうではないと思いちょっと書いてみようと思います。
意外や意外、ソロとしては初のライブアルバム(もちろん、これまでのライブ音源はあちこちでたくさん聴くことは出来ますが)は、2019年に行われたアメリカツアーから最終日LAでのライブを収録。アメリカではLight in the Atticというレーベルから氏のアルバムが続々とリリースされており、当時の新作だった『HOCHONO HOUSE』リリースを記念して企画されたようです。
先にニューヨークでの2回の公演が組まれて迎えた最終日、その音から察するに細野さんとバンド「8ビート・コンボ」は最高潮だったと窺えます。いつも控えめな細野さん、よくライブのMCでは『盛り下がり最高!』とか始まって早々に『早く終わって帰ろう』と照れもあってのネガティブ発言もよくされますが、淡々とされているのはいつものこと。この演奏からは静かで熱いものがとても伝わってきます。
まずは御歳72歳(当時)とは思えない張りと艶のある声に驚かされます。そして縦横無尽に弾きまくる高田漣のギターと野村卓史の鍵盤(特に序盤のアコーディオン!)。そしてこのバンドの馬力を生み出す強力リズム隊(特に伊藤大地の地を這うようなドラミング)も素晴らしいです。近年はホールでの公演が多かったのでそのPAからはあまり分かりませんでしたが、ライブハウスの臨場感が感じられるこのライブ音源ではバンドの凄さを体感出来ます。なお、細野さんとスプリット・シングルをリリースしたマック・デマルコがその曲『Honey Moon』で本人も感激の客演で歌声を披露してます(1番がマックで2番が細野さん)。昨年予定されていたマックの来日公演が中止となって本当に残念です(共演もしていたであろう・・・)。
そしてこのアルバムは録音&ミックスも素晴らしいと思います。近作は50年代ブギウギ音楽が多かった細野さんだからか、録音はモノラル定位のような優しい音響でしたが、ライブでは抜けが良くかつ各楽器の分離も良くて迫力あるステレオサウンドが脳天に突き刺さってきて、バンドの凄さをまざまざと伝えてくれます。
71分の収録時間にぎっちり曲が詰まってるのでMCはほとんど収録されておらずそこだけはちょっと残念ですが(伊賀航のベースソロで笑いが起きてるが何があったのだろう!?)、一部の演奏の模様は映画『No Smoking』で見られるのでMCを聴くことも出来ます。開演前から会場を取り囲む大勢のお客さんの様子も見られますが、ライブ中の会場の盛り上がりも良く伝わってくると思います。
ジャケットのデザインは細野作品ではお馴染み岡田崇氏。カバーの写真が最高ですが(Smokingだ!)、これは公演中の舞台裏で撮られたものなのか。まるでジャケット用に撮られた写真のようです。ブックレットの写真にはLAのSunset SoundやYMOが公演を行ったグリーク・シアターの前に佇む細野さんの写真が載っています。『No Smoking』では出てこなかったと思うので、アメリカ滞在中のドキュメントをもっと見たいと思います(映画には出てきたVan Dyke Parksの写真は後ろ姿で顔が写ってない・・・)。
『FLYING SAUCER 1947』から始まり『HoSoNoVa』、『Heavenly Music』、『Vu Jà Dé 』そして『HOCHONO HOUSE』と立て続けにリリースしてきた細野さん近作群の集大成として、このライブ盤『あめりか』は位置付けられるのではと思います。控えめに言っても『サイコー!!』です!