物語のクオリティを上げるコツ3選
今回は物語のクオリティが上がるちょっとしたコツ3選を紹介したいと思います。
①主人公は基本いいヤツに
物語を作る上で重要になるのが主人公に感情移入できるかです。
もし、主人公に感情移入できないと、その物語にうまく入っていけないため、物語がどの様に展開してもイマイチ楽しめない作品になります。
そういう意味では、多くの人が感情移入できるようにするためには、好感が持てる人物の方が適しています。
しかし、中には主人公が泥棒(ルパンⅢ世など)や海賊(ルフィなど)、法外な治療費を要求する闇医者(ブラック・ジャックなど)のように反社会的な行為を生業にしているケースもあります。
こういう、一般的には認められない特徴を持つ主人公の場合は特に注意が必要です。
やっていることがどうあれ、好感の持てる性格であったり要素を入れることがポイントですが、ブレイク・スナイダー著「SAVE THE CATの法則」ではディズニーのアラジンを例にこのように解説されています。
1億ドル超のスマッシュ・ヒットとなった『アラジン』の最初のシーンで観客が目にするのは、お腹をすかせたアラジンが食べ物を盗む姿だ。その後アラジンは、偃月刀(えんげつとう)を振り回す宮廷の護衛に追いかけられ、町中でさんざん逃げ回る(中略)。
やっと追っ手をまいて路地へと逃げ込んだアラジンは、早速盗んだパンを食べようとする。ところが目の前には同じくお腹をすかせた子供たちがいるじゃないか。するとアラジンはパンを彼らにあげるのだ。これで観客の心はアラジンと<一緒>になる。怠け者でこそ泥という原作のアラジンとは違うが、観客はこれで確実にアラジンを応援したい気持ちになる。
②観客と共通の秘密を作る
共感という意味では主人公(たち)と観客が秘密を共有するという方法も有効です。
バットマンやスパイダーマンの正体は主人公に親しい一部の人物しか知りません。名探偵コナンやプリキュアも同様ですね。
先程と同じ「SAVE THE CATの法則」では、作者自身の作品(Nuclear Family)についての会議を題材にこの様に紹介されています。
家族がパワーを身につけたことをマスコミにかぎつけられ、テレビのレポーターにもみくちゃにされるのはどうか?と。そうしたら、スティーブン・スピルバーグは言った。ダメだと。そして理由を説明し始めた。
ご存知のとおり、『E.T.』(82)にはテレビのレポーターなんか出てこない。『E.T.』は地球外生命体が地球にやってきて、「Nuclear Family」と似たような家族とともに暮らす話だ。もちろん状況としてはマスコミが押しかけてきてもおかしくはない。本物のエイリアンがいるのだから!けれど、脚本家のメリッサ・マシスンと話し合ってみて、スピルバーグは気がついたという。そういうシーンを入れると、映画全体の前提が崩れてしまうと。E.T.の存在が、家族や隣近所、そして観客の間だけの秘密になっているからこそ、映画全体がリアルに感じられるのだ。
③唐突に登場させない
これは以前、私が漫画教室に通っていたときに、作品の添削をしてもらっている中で教えてもらったことです。
それは、物語の進行に関わるキャラクターを唐突に登場させないということです。
その当時の私の作品でいうと、建物の中で主人公が見つかってしまうことで展開する場面がありました。ここで主人公の友人の妹というキャラクターをこの場面で始めて登場させていました。
しかし、この場面で初登場させてしまうと、いかにもストーリーの都合で唐突に登場させた感じがあり、不自然に感じてしまいます。
そこで、どの様に修正したかというと、主人公の友人(つまりこのキャラクターの兄)と一緒にいる描写を事前のコマに追加したのです。
こうすることで、展開の都合で急に登場したキャラクターではなく、元々存在したキャラクターと認識することができ、唐突感はなくなりました。
ヒットしている作品はこの当たりは丁寧に踏襲していると思います。例えばONE PIECEを例に取ると、強敵や仲間になるキャラクターはあらかじめその存在を匂わせてから登場しますよね?
ジンベエに至っては、その存在が始めてほのめかされるのは首領クリークを倒し、ナミを追ってアーロンパークに向かう第69話ですが、その姿が初めて登場するのがインペルダウン篇の第528話、仲間に加わるのはワノ国篇の第976話です。
以前の記事で不自然に感じるセリフという話をしましたが、この話とも根本は同じかも知れません。
AIの驚異はシンギュラリティじゃないらしい
https://note.com/yamashun/n/nea46cb3d46bf
いかがだったでしょうか。
①や③は比較的、出来上がった物語に対しても修正しやすい項目かと思います。ストーリーの完成度が今ひとつ上がらないときには、ぜひ今回ご紹介した項目を確認してみてください。