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PWSが面白い:eSportsの「観戦」と「応援」について
数ある「eSports」と呼ばれるものの中で、私が一番多く見ているのがPUBGの競技シーンです。最近やってるPWS(PUBG WEEKLY SERIES : EAST ASIA)が結構面白いので、かなり見てます。
前半が、「PUBGの競技シーンの話と、PWSが私にとっては面白いという話」で、後半が「eSports全体の応援や観戦の話」です。ムダに長いので、最後の「PUBGの競技シーン運営に対する苦言」だけ読んでいただいても結構です。
・初期はあんまりおもしろくなかった
PUBGの競技シーンはけっこう昔から見ていますが、私として面白い時期と面白くない時期が交互に来ている感じです。今は面白い時期です。
始まったばっかりの頃は、あんまりおもしろくありませんでした。今と比べると全体的に競技のレベルも低く、(記憶違いだったら申し訳ないんですが)ゲーム内の設定も今と違ったと思います。物資や車の湧きやエリア関連とか。
今よりも索敵技術やムーブも洗礼されていなかったため、全体的にエリア取りも上手くなく、少ない物資と少ない車でエリア内に向かい、移動した先に敵がいたら全滅して終わり、というシーンが少なくなかったように思えます。バトロワゲーの悪い部分が多く出ていたように感じました。
そこから、「eSportsモード」や「スーパールール」の導入、さらに全体的な競技レベルの向上もあり、PUBGというゲームの競技シーンは面白くなったと思います。
・PJS:「観戦」はするが「応援」はしてなかった
PUBGの競技シーンは面白くなり、PJSというリーグも面白かったと思うんですが、「応援」はしてませんでした。特に応援するチームがなかったからです。
こればっかりは私の都合なので、リーグのシステムが悪いとか、そういうことではありませんが、色々と書きます。
PJSは、出場するチームが非常に多くありました。Grade1だけでなく、Grade2やPaRまで含めると、出場チームだけで単純に16×3の48チームもありました。シーズンごとに出場するチームが入れ替わったりもするので、実際はチームはもっと多くあります。
これに関しては、「競技」としてはとても良いことだと思います。PUBGというゲームを競技として楽しむこと、チームで試合に出場して少しでも良い結果を残そうと努力すること。私はそういうことが「eSports」だと思ってるので、そういう観点からすると多くのチームや選手が競技に参加するのは良いことです。
ただし、それは「競技」としては良くても、「プロの試合の観戦・応援」という観点からすると、あまり良くないかもしれません。
野球と比べるとプロチームの多い「Jリーグ」でもよく言われることですが、チームが多いと選手だけでなく、ファンもスポンサーも分散します。
いい選手が集まらないとレベルの高いプレーができない。ファンやスポンサーが分散することでお金が集まらず、いい選手を獲得したり設備等のお金をかけられなくなり、チームが弱くなってしまう。チームが弱いとファンやスポンサーが離れ、いい選手も移籍してしまう、という悪循環が起こってしまいます。
ただし、これが必ずしも悪いかと言われればそうでもありません。Jリーグは地域性が大きなポイントで、地元のチームを応援するという要素がかなり大きくあり、海外やJ1のチームよりは弱かったとしても、地元のJ2のチームを応援するという人は多いと思います。私もそうでした。Jリーグというものが、そういうことを理念・目的とし、ブランディングできればいいと思います。
(これらのことは、記事の後半に詳しく書きます。)
話をPUBGに戻しますが、PUBGというバトロワゲームの性質と、PJSという多くのチームが参加するという状況から、特定のチームを応援するということが難しかったように感じます。
私がPJSを見るときは、応援するチームがありませんでした。長く競技シーンにいるチームや選手のことは知っているので、試合ごとに「最後に残った3チームの中なら、このチームを応援する」ぐらいのことはあったと思いますが、シーズン全体を通して、特定のチームを応援するということはありませんでした。
応援するチームがあるファンの人も多いと思うんですが、バトロワゲームなので、どうしても1チーム対1チームの競技よりは応援をしにくい部分があると思います。活躍しているシーンが映らなかったり、序盤~中盤にやられてしまって、応援するチームが退場してしまったり。
あるいは、戦わずに4人生存のほうが順位は伸ばしやすいし、家屋に突貫するアツいファイトよりも、安全な場所からの一方的な射撃やキルスティールの方が、キルポイントを伸ばすのには効果的です。そのへんも、バトロワゲーの宿命です。
応援しているチームのポイントが増えることを願うならば、あんまりアツい展開でないほうがいいということになってしまいます。もちろん全てがそういうわけではないですが。
これに関しては、しょうがないとは思います。それでも安定して上位に残れ、ドン勝つを取れる機会も多い強いチームなら十分に応援できますが、中~下位のチームを応援し続けるというのはかなり難しいことだと思います。
・PWSの奇跡の噛み合い:WWCDルール
そんな中で、今もやっているPWSというものが、私としてはかなり楽しく観戦・応援できています。
これは、かなり(私にとって)都合のいい、複数の要素の奇跡の噛み合いが起こっているからです。
・「応援」の要素
競技の観戦は、競技そのものを見るということももちろんあるんですが、やはり「応援」したほうが楽しめます。
上述のように、私には応援する特定のチームがありません。しかし、PWSは日本・韓国・台湾から集まったチームが試合をするので、日本チームを応援すればいいのです。
これは、応援するチームのない私にとって都合のいいことです。PWSに出ていないチームのファンとしては、見ても面白くないかもしれません。
・ルールの違い:SUPERとWWCD・MC
PWSはSUPERではなく、WWCD・MCルールが採用されています。このWWCDルールとMCルールについては、批判も多くあります。
3R_GamingのnGO氏の記事が、短くまとまっていてわかりやすいと思います。
PUBGというゲームが何を競うものなのか、撃ち合いの強さなのか、ムーブの上手さなのか、あるいはエリアを引き寄せる運の勝負なのかとか、そういう議論はあるとは思いますが、そういう話はひとまずおいておきます。
ともあれ、競技として実力が発揮されるのは、SUPERの方だと思います。シーズンの最終的な結果として、ポイントが多いチームが勝者であり、強いチームであるということに異論はありません。
ただし、「観戦」や「応援」という観点からすると、難しい話になってきます。
SUPERルールは1シーズンのトータルとして勝敗を決めるのには良いと思いますが、1試合・1日ごとの価値や盛り上がりが欠けてしまうことは否めません。
1日に4試合あったとして、ドン勝つは0回だったとしても、順位ポイントとキルポイントの合計で30ポイント稼げた、とします。この結果に対する感想が、「結構よかったんじゃない?」というものにしかならないような気がします。
逆に、4試合で10ポイントしか稼げなかったとしたら、「あんまりよくなかったね」というしかありません。
16チームが同時に戦うというバトロワの性質と、シーズンを通してポイントを稼いでいくというシステムの都合上、1試合や1日の「勝利」や「敗北」という要素が薄くなってしまいます。
もちろん1日ごとの区切りで最多キル賞などが設けられたりもしますが、「シーズンを通しての結果」以外の要素があまり多くありません。
野球やサッカーでは、1試合ごとに勝敗が決まります。例えば私は野球ならば横浜ベイスターズのファンですが、シーズンを通して優勝できるとは思ってません。しかし、1試合ごとの勝利を願って応援します。2020年シーズンは4位で、56勝58敗(6分)でした。約半分の56試合は「勝って嬉しい」、58試合は「負けて悔しい」試合でした。4位のチームといえど、約半分は「嬉しい試合」なわけです。
「どうせ優勝できないでしょ」とは関係なく、「目の前の1試合」を応援でき、その結果で喜ぶこともできます。
ではPUBGのスーパールールで、(野球でいう4位ぐらいの)真ん中より少し下ぐらいの順位のチームを応援しようと思った場合、「勝って嬉しい試合」と「負けて悔しい試合」は、どれほどのもんでしょうか。
もちろん、ドン勝つを獲得したり、大量にポイントを盛れる日もあるとは思いますが、中位~下位のチームではそういう日が少なく、応援のしがいがありません。
野球やサッカーでは、1試合ごとに勝利を願い、試合に負けても「次の試合で勝てばいい」と思えるんですが、PUBGのスーパールールでは、「ある程度のポイントは盛れて、しかし上位に進出できるほどは稼げなくて……」という、応援するには興奮も落胆も少ない、平熱のものになってしまいがちです。
野球は1試合あたり9イニング(+延長)の結果で勝敗を決め、それを143試合行い、順位を決定づけます。それが試合ごとの区切りがなく、143×9=1,287イニングの得失点で順位を決めるとなると、どうでしょう。毎回の攻撃も守備も、盛り上がりに欠けてしまうと思います。
長くなってしまいましたが、SUPERルールで1シーズン応援することは、「1日や1試合ごとの盛り上がりが少なくなってしまい、特に下位ほど応援することが難しくなっていく」という難点がありました。
とは言え、WWCDルールならば良いかと言うと、そんな簡単な話でもありません。
PWSはWWCDルールを適用しています。この「ドン勝つをとったチームから勝ち抜け」というシステムは、はっきり言ってどうかと思うルールでもあります。(しかし、私にとっては良いものでした。)
まず、「勝ち抜け」というのは、「視聴興行」としては致命的です。勝つと配信に映れなくなります。そんな馬鹿な。
様々な競技では、スポンサーのために様々な努力をします。自転車のロードレースの大きな大会では、強いチームに総合では勝てないとわかっているならば、日ごと、あるいは区間ごとにトップ争いをして、目立つことが選手の役割でもあります。
それが、「勝つと試合に出られない」というのは、ファンやスポンサーにとってはどうなんでしょう。(もちろん、勝つことはWeekly Finalへの出場へと繋がり、出番も増えるんですが。)
ただし、PWSを見る私にとってはそれがプラスになります。先述の通り、「特定のチームを応援していない」かつ、「日本チームを応援している」からです。
2021/08/11に行われたPhase2 Week4 Day1では、1試合目にZETA、2試合目にE36がドン勝つを獲得しました。
ZETAやE36のファンからすると、勝ったことは嬉しいですが、Finalまで出番がありません。しかし、私からすると「日本のチームが勝つことは嬉しい」し、勝ち抜けても「別の日本のチームを応援すればいい」だけです。私にとって、非常に都合がいい。
そして、「ドン勝つすれば次に進める」という要素も、1試合あたりの価値が薄まってしまうSUPERルールに比べて、観戦して楽しめる要素になっています。1試合ごとに価値があり、1週ごとに区切られているため、シーズン全体としての結果しかないレギュレーションよりは、それぞれの試合や週を楽しむことができます。
・楽しいのは、今のパワーバランスだからか
これは、チームのパワーバランスの絶妙さもあると思います。差は小さくなっているかもしれませんが、やはり総合的に見たとき、日本のチームよりも外国の、特に韓国のチームの方が強いでしょう。
国際大会は過去に何度もありましたが、やはり日本チームは実力が劣っていたことは間違いないでしょう。
SUPERルールの場合、総合的な結果では、どうしても中位~下位に沈んでしまいます。言い方が悪いですが、それは見る前からもわかっていたことであり、応援する立場からすると、「なんとか1回でもドン勝つしてほしい」ぐらいの気持ちでもあり、同時に「1回ドン勝つしたところで……」と思ってもしまいます。
それがWWCDルールだとドン勝つ1回で勝ち抜けなため、その結果を素直に喜ぶことができます。
ただし、これは「日本がチャレンジャーの立場であり、そこそこ勝てるようになってきたから」という絶妙な力量だからこそ楽しめているのかもしれません。
韓国の強いチームや、そのチームのファンからすると、やはり運の要素も大きいドン勝つ偏重ルールは、気に入らないかもしれません。
応援しているチーム(や国)が圧倒的に強いわけでも、全く手が出ないほど弱いわけでもないという、ちょうどよいバランスだからこそ、楽しめているのかもしれません。SUPERルールだと徐々に敗けていくだけなのが、WWCDルールだと、ある程度なんとかやれてる(感がある)ので。
国内の大会でも、特に選手からすると、やはり運の要素が大きくなってしまうようで、不評なようです。チームのファン、特に実力上位のチームのファンからすると、応援しているチームは安定して上位になりポイントを稼げる実力があるのに、ドン勝つという運要素の大きいもので決まってしまうというのは、気に入らないかもしれません。
あくまでも、「WWCDルールが、応援・観戦していて面白い可能性も十分ある」というだけで、WWCDルールがSUPERより優れているとは思いませんし、競技者としては不満があることも承知しています。
さて、PUBGやPWSの話はここまでで、話題に挙げた「観戦」や「応援」についての話題になります。
・「応援」は、競技観戦に必要な要素
特定のチーム(や選手)を「応援する」ということは、その競技において非常に重要なことだと思っています。
まず「応援」というのは、「応援する対象(個人やチーム)が良い結果を出すことを願う」ということです。簡単に言えば、「勝ってほしいと思うこと」です。
これは、「競技」において非常に重要です。一般のスポーツやeSportsが、ただの遊びやレクリエーションで体を動かすことや、娯楽目的でゲームをすることと異なるのは、「競技性」にあると、私は思っています。
(※競技性に関しては、過去の記事の3章で触れました。娯楽として遊ぶだけじゃなくて、競技をするのも楽しいよって話でした。)
競技として必要な理念や目的の一つとして、「勝利」や「結果」を求めることが挙げられると思います。
(「勝ち負けより楽しむことが重要!!!」とかいう言明もありますが、それは「競技性」には必要ないことで、「ゲーム」や「遊び」の領域です。「eSports」には必要ないものだと思います(そして、勝利を求めることも楽しいことです)。詳しくは過去の記事参照。)
チームもファンも「勝利」や「結果」を求めるという共通の目的があってこそ、競技観戦というものは成り立つと思います。
チームは勝利を目指しているのに、ファンは勝ち負けなんてどうでもよく、面白い珍プレーが見たいとか、プレーはどうでもよく、ただ可愛い女の子が見たいとかいうのは、競技シーンとしてはふさわしくありません。
逆に、チームのファンは勝利を願っているのに、チームや運営がそうでない方針をとることがあります。これに関してはファンもチームも一枚岩でなく、難しい問題になることがあります。
野球でいえば、引退が近いレジェンド級の選手の扱いでそういう問題が生じたりします。有名な人気選手を見たいというファンもいれば、もう衰えているのだから試合に出さずに若手を出してほしいというファンもいます。
(※麻雀の「Mリーグ」が、そこらへんが上手くいかなかったという記事を以前に書きました。)
繰り返しになりますが、「応援する」ということは「勝利を願う」ことであり、「応援される」ということは「勝利を目指す」ということです。当たり前のことですが、重要です。
「応援」の要素がなく、ただなんとなく見て楽しむだけでは、極端に言えば、視聴者は「勝っても負けてもどうでもいいよ」と思っているということであり、選手も「勝利を目指す意味が薄れる」ということにもなります。
(麻雀のMリーグはそのへんが、ファンとチームとMリーグの理念とが上手く行っていない感じがあります。チームの勝利を願っているファンは、実力よりも見た目や知名度が優れている選手を加入させたチームに不満があります。)
・どのチームを応援するか、どう応援させるか
多くのスポーツでは、チームのファンになる・応援する要因のうち大きな者として、地域性があります。
そうではない場合ももちろん多くあるんですが、やはり地域のチームは地域のファンが多くいます。野球の甲子園大会も、毎年出場校が違い、知らない選手ばかりなことがほとんどですが、多くの人達は自身にゆかりのある「都道府県」のチームを応援しています。
ただし、eSportsにこの地域性を求めるかといえば、微妙ではあります。もっとアマチュアのeSportsが盛んになり、野球の甲子園のような大会や、都道府県代表による国体のようなものが増えてくれば、その都道府県のチームや選手を応援するというのは自然ではありますが、プロの競技シーンとなると、そういうわけにもいきません。
ほとんどのeSportsは一般のスポーツのようにホームスタジアムがあるわけでもありません。オフラインの試合で相手のホームタウンに移動して試合するという形式ができなくもないですが、オンライン大会が当たり前な時代に地域で分けるというのは、ややナンセンスかもしれません。 (「Overwatch League」は、「New York Excelsior」や「 San Francisco Shock」というように、チームに地域の名前がついていますが、その地域だから応援するという人が多いかどうかはよくわかりませんし、選手の国籍もチームの地域とは関係ありません。ニューヨークのチームは全員韓国の選手です。)
「プロゲーミングチーム」という、「プロ」として活動しているチームも多く存在します。それぞれのチームが、様々な活動をしているとは思いますが、「ファンの獲得」という点については、今ひとつマーケティング不足なチームが多いことも否めません。地域があるスポーツと違い、競技シーンに出場しているだけで勝手にファンが増えてくれるもんでもないでしょう。
そのあたりも、「プロチーム」や「プロリーグ」の課題の一つでしょう。それが、以下に述べる「ブランディング」だったりします。
・「競技シーン」と「プロチーム」のブランディング
私のスタンスは、eSportsは「ゲームを競技として楽しむこと全般」であり、「eSportsは「プロありき」ではなく、プロの視聴興行だけがeSportsではない」というものです。
もちろんプロの存在はあってほしいですし、レベルの高い「プロリーグ」というものを観戦・応援したいという気持ちもあります。ただし、そのためには、ブランディングされた「プロリーグ」というものが必要になります。
先にも少し書いたのですが、ゲームを競技として楽しむこと、すなわちeSportsを多くの人たちが楽しむことは良いことだと思います。PJSにおいても、PaRから勝ち上がってレベルの高いリーグでプレーするという活動や、この記事を書いているときにちょうどVALORANTのVCTが行われているのですが、VCTは「プロ」だけのリーグ戦ではなく、アマチュアから勝ち上がったチームも戦うトーナメント形式です。
(これに関しても、過去の記事で触れました。eSportsは、視聴興行が先ではなく、競技が盛り上がった結果として興行となるべきだと思うのですが、なにぶん昨今のインターネットは視聴興行が先に来ています。以下の過去の記事を参照していただければ。)
「競技」としての発展は、アマチュアチームも含めた競技活動が盛んになることは良いことだと思います。しかし、「観戦」や「応援」という意味では、そうでない方が良い場合もあります。
ただの「観戦」ではなく「応援」、それも個人やスポンサーがお金を費やしてまで「応援」するためには、それなりにブランディングされている必要があります。応援するには、応援するだけの「価値」が、選手やチーム、あるいはリーグ全体になければなりません。
殆どのプロスポーツは、プロリーグに出場できるチームが決まっています。プロ野球は12球団ですし、Jリーグは昇格・降格等もありますが、ある程度決まっています。出たい人やチームが出られるわけではありません。甲子園大会を圧倒的な実力で優勝したとしても、その高校のチームが来年からセ・リーグやパ・リーグに加入ということはありえません。選手も、チームに実力を認められ、ドラフトで指名されなければプロになることはできません。
だからこそ、「プロ」というものに価値が生まれています。アマチュアの競技シーンで結果を残し、実力を認められた選手のみが、数少ない「プロチーム」に加わることができ、そのトッププロたちが勝利を目指して真剣勝負をしているのが「プロリーグ」です。そして、ファンもそのようなトッププロたちが集まっているプロチームの勝利を願って応援しています。
「プロの選手」や「プロチーム」、そして「プロリーグ」はそれほどの価値があるものとしてブランディングされているからこそ、プロスポーツは興行として成立しています。
・eSportsは、そのへんをどうするか。
上の方でも書きましたが、「プロ」と呼ばれるチームが増えることは、いいことばかりではありません。チームが分散すると、人材もお金も分散します。
いい選手が集まった少数チームのリーグの方が、全体として競技レベルは上がっていきます。チームに優秀な選手が集まれば、チーム内でも競争が生まれます。そのチーム内競争で結果を残し、試合に出られるようになった選手と、別のチームの優秀な選手が試合をし、切磋琢磨することで、リーグ全体のレベルが上がります。
アマチュアやセミプロレベルの人たちにとっても、「厳しい競争を勝ち抜かなくても試合に出られる」という状況は、競技レベルの向上にはなりません。
(プロ野球なんかでは、厳しい競争を勝ち抜かなくてはなりません。甲子園で優勝したぐらいでは、ほとんどの選手はプロになれません。そこから大学のリーグに進み、同じチームのプロ入り間違いないレベルの選手と競争し、試合に出て、同じくプロ寸前の相手投手と対戦しなければなりません。
そういう試合で結果を残し、やっとドラフトで指名されたと思ったら、現役バリバリでプロやってる一流選手と競わなければなりません。
自分が順調に成長し、一流選手が衰えてきて、やっと自分の出番が回ってくると思ったら、メジャーリーグの選手が年俸2億とかで加入してくることもあります。そういう選手との競争にも勝たなければなりません。
そういう、限られた一部のトップ選手しか活躍できないリーグで、それに出場している選手であるからこそ、ファンもスポンサーも応援するだけの価値があると判断しているわけです。)
少数精鋭の方が都合がいいというのは、ファンやスポンサーについても同様です。eSportsはかなり市場規模が大きくなっているとはいえ、競技シーンに出場している選手全員に十分な年俸を払えるほどではないでしょう。
プロリーグに出場しているチームが少なければ、なんとかやっていけるかもしれません。例えばPJSでは、Grade1だけで16チーム、Grade2やPaRを含めるともっとたくさんのチームと選手数になるのですが、そのチームと選手全員に十分な年俸を払うのは、ファンとスポンサーの資金を集めても厳しいでしょう。
しかし、(PUBGでは無理ですが)プロリーグのチームが5チームだけというのならば、ファンやスポンサーからの資金でやっていけるかもしれません。
そのような、「プロの競技としての価値」を高められるのならば、ファンも応援することができるし、興行として成功し、選手やチームも金銭的に困ることがないかもしれません。
記事の初めの方に、「中位~下位のチームを応援する難しさ」について触れているのは、そのような理由があります。「プロリーグ」が、十分に応援されうる上位チームだけになるならば、観戦・応援あたりは十分に機能するでしょう。
私としては、多くのチームには申し訳ないんですが、プロチームが増えることには反対です。プロの競技シーン、すなわち「プロリーグ」には、一部の限られたチームだけが出場できるのが理想だと思っています。
競技のレベルも上がり、「プロの選手」や「プロチーム」を支持するファンやスポンサーの都合としても、そちらのほうが良いと思います。
アマチュア活動は、いくらでも増えてもいいと思いますし、もっと盛んになるべきだとも思います。高校や大学でのeSports活動というものも、少しずつ増えているようです。
アマチュアで優秀な選手は、そのチームがプロリーグに参加するのではなく、「その選手がプロチーム入りする」という、サッカーや野球のような一般的なスポーツの方式が、「プロの競技シーン」のブランディングとしては、良いものだと思っています。
限られたチームしか出られないトップリーグだからこそ価値があり、そこに出られる選手だからこそ応援しようと思えるのです。
しかし、現実のeSports界隈はそうはなっていません(一部、そうなってるものもありますが。Overwatch Leagueなんかはそうです)。
「競技的な意味でのプロ」ではなく、「儲かるんなら自分たちも参加させてよ」という、「興行的な意味でのプロチーム」が、たくさんあります。プロチームに加入することを目指すのではなく、プロチームを作ってしまうのです。そして、興行的にも競技的にも上手くいっていないことがほとんどです。
10代や20代前半の、若い年代の人達の人生を預かるのですから、「プロチーム」としてやっていくならば、「プロとして加入させるけど、上手くいかなくても知らんよ」というのは、チームとしてもリーグとしても、良くないと思います。
ですので、多くの競技(主に、一般のスポーツ)のプロチームには、最低年俸の保証や、チームの運営についての規則があります。十分な資金力があり、運営ができるチームでないと、プロチームとして認められないことがほとんどです。選手がプロならば、チームもリーグもプロでなければ、価値のあるものにはなりません。
・後半のまとめ
・プロの競技シーンはただ見るだけではなく、「応援」という要素があってこそ、「勝利を目指す競技の観戦」というものは成り立つ。「応援」でなければ、「勝っても負けてもいい」になってしまい、「競技」とはいえない。
・「応援するため」、あるいは「応援されるため」には、様々な要素が必要になってくる。特にeSportsは地域性がないため、試合をしているだけではファンはつかない。
・「プロの価値」を、どのように作り出していくか。私としては、(簡単に言えば)少数精鋭であるほうが、競技のレベルとしても、金銭的な面からしても良く、「プロを応援する価値」が生まれると思う。
・注
「アマチュアチームをトッププロたちの試合に出られるようにするのは、興行的なブランディングとしては良くないのではないか」という主張ではありますが、それはアマチュアチームの活動を否定するわけではありません。
むしろ、極端に言えば私はeSportsはアマチュア活動がメインだとも思っています。競技としての活動の結果として、プロがあると思っています。
プロリーグに出られるからeSportsをやるとか、儲かるからチーム運営をするとかではなく、ゲームを競技として楽しむために、チームとして活動すること、すなわちeSportsを楽しむために活動するチームは、素晴らしいと思っていますし、そういう活動が盛んになってこそ、真に「eSportsが流行っている」と言えると思っています。
・PUBGの競技シーン運営に対する苦言
ここまでで1万文字超、長くなってしまったんですが、もともとPUBGの競技シーンの運営に対して文句を言いたくて、記事を書き始めたみたいなところはあります。すなわち、ここからがメインです。
昔っからなんですが、PUBGの競技シーンは、あまりにも説明不足です。今行われているのが何の試合で、どのチームが出場していて、現段階でどういうスコア状況なのかというのが、全然わかりません。
例えば、この記事で話題にしている「PUBG WEEKLY SERIES: EAST ASIA」について調べようと、上記ワードでGoogle検索すると、一番上に出てくるのは「Liquipedia」という、「Team Liquid」による英語のページです。Team Liquidは拠点がオランダのチームで、PWSには関係ありません。
そして、なんならこのページが一番わかり易いかもしれません。英語が苦手な私でも、PWSのルールとチームを把握するのはそこが一番だと思ったぐらいです。
試合は、Youtubeの「PUBG: BATTLEGROUNDS JAPAN」のチャンネルで配信されています(Twitchにもありますが)。その配信の概要欄には、実況と解説、スポンサーの名前は載っているんですが、出場チームも選手も載っていません(Twitchの方は概要欄すらありません)。
概要欄にあるTwitterのリンクに飛ぶと、「PUBG Esports JAPAN」のTwitterは見ることができます。そのTwitterでは試合結果等を逐一報告しているのですが、もっと全体的な情報(出場チームや結果、レギュレーション等)を知りたいのです。Twitterアカウントのリンク先は、国内大会の「PUBG JAPAN CHALLENGE」ですが、そこはPJCのページなのでPWSの情報は載っていません(そして、PJCについてもわかりにくいです)。
再び、「PUBG WEEKLY SERIES: EAST ASIA」で検索すると、「PUGBの(アジア)公式サイト」のようなページが引っかかり、そこで「PWS:EAST ASIA PHASE2 開催のお知らせ」を読むことができます。ここで、出場チームとレギュレーションについては確認できました。
しかし、結果がどこにもかいてありません。WWCDルールであり、まだ試合に出ていないチームやすでに勝ち抜けているチームもあり、どのような試合状況かを知りたいのですが、それができません。
各週ごとのWeekly Finalの結果によって、最終のGRAND FINALに出場でき、この記事を書いている時点ではWeek4なんですが、どのチームがGRAND FINALに出場できそうなのかも確認できません。
一応、各配信の最初の方とかに前日までの結果が映ったりしています。そこをシークしなければならないのでしょうか。
トップページに戻って、「Esports」のところをクリックすると、「ESPORTS NEWS」のページに飛べます。それが、コレです。
なんだこれ。
とにかく、説明不足で、わかりにくい。大会の仕様も、出場チームも、出場選手も、そして試合結果も。Twitterで報告してるんですが、それを見ながら逐一自分で記録しろってことなのでしょうか。今、PWSの各試合の結果と、GRAND FINALにどのチームが出場できそうかということを知ろうと思ったら、どうすれば良いんでしょうか。試合のアーカイブを全て見直して、自分で集計しろってことでしょうか。
これでは、応援のしようがありません。チームも、選手も、大会全体も。応援やらについて書いたのは、ここに繋がるんです。
以前にも書いたんですが、「わかりやすさ」ってのは、こういうことだと思うんですよ。「わかりやすくないと、eSportsは応援できない」っていうのは、こういう意味でもあると思います。競技性が単純かどうかって意味ではありません。「どのような試合であり、どのような状況であり、どのチームを応援すればいいか」が、「わかりやすい」ならばeSportsは応援できます。そうでないならば、応援することは困難です。
PUBGの初期、αリーグのころに、「スタヌは?」みたいなコメントが多くありました。視聴者も運営もまだまだ未熟だったので仕方ないでしょうが、その頃から、なんにも変わっていません。
そして、このような苦情を、どこに送ればいいのかもわかりません。TwitterにDMで送ればいいのでしょうか。PWSの主催は「KRAFTON」という、韓国の会社です。しかし、KRAFTONのページにも、そこから飛べる「PUGB Global Esports」のページにも、PWSについてのページは見当たりません。
eSportsを応援できないってのは、こういうとこやぞ!と言いたくなります。しっかりしてくれ。ヤフーのSportsnaviほどの充実は流石に無理でも、せめてそれまでの試合の結果ぐらいは、試合の次の日までにはまとめてほしいもんです。
2021/08/12 山下