【OW2:コラム】FPSセンス・FPSの基礎
OWってのは対戦ゲームで、FPS。それを忘れちゃあいけねえよ。
◯にじさんじOW杯
先日、にじさんじOW杯ってのが行われた。配信タイトルにあるように、大会というよりは『にじさんじライバーにOWをさせよう!』ってのがメインっぽくて、初心者の方やインストールしたばかりの人もいるらしい。
私は全部見たわけじゃないんだけど、その中に「FPSセンス」ってものを感じるシーンがあったので、それにちなんだ記事。
◇不破湊さん
全然詳しくないので間違ってたり失礼があったら申し訳ないんだけども、参加されてた不破湊さんはOWの初心者らしい。他のFPS経験がどれくらいあるかは知らないけども。
んで、その不破湊さんはかなり動きが良く、解説陣も絶賛されていた。特にブリザードワールドの4キルは目立って良いシーンだった。
(動画は↓。時間指定してあるはず。できてないかも。1:33:32~のシーン。)
この活躍したシーンで私が注目したFPSセンスは、エイムの良さではなく状況把握能力と、それに由来した身のこなしだ。
ここで右の遮蔽物を使い、味方とクロスの射線を組んでウィンストンを前に出させず、奥にいるモイラにも射撃してダメージを与えることで後衛も前に出させない。
「相手に襲われたときに後ろに逃げるのではなく横に避ける」という行為は、できないOWプレイヤーは非常に多い。
ULTを出し惜しみせずに取れるキルは取る。これもできないプレイヤーのほうが多い。
(ULTの使い方はこの記事で書きたいFPSセンスとは異なるので割愛。)
続いて、下がるジュノをキル。
エイムがいいと褒めるのは簡単だが、私が着目するのはそこじゃない。
詰められると見るやいなや、コンバットロールを使ってリーパーと共に前に出てキルを取りに行っている。
ワチャワチャしていてどういう状況かわかりにくいOWというゲームにおいて、こういうキルへの嗅覚はFPSセンスの高さに他ならない。
ジュノをキルし、すぐに室内を通ってモイラをキル。
んでここまでも凄いんだけども、私が特に着目したのはその次のシーンだ。
こういう遮蔽物の使い方は、FPSに慣れてる人だったら当たり前だとは思うんだけども、OWが上手くないプレイヤーにはできない人も多い。
FPSにおいては、前方や相手の近くのほうが安全ということはいくらでもある。
フランカーに絡まれたときは後ろではなく味方のタンクに近づいたほうが安全な場合は多くある。高台から撃たれるならば足元に入り込めば射線も切れるし、次の行動もしやすい。ドラドの第一や第二なんかが顕著だ。
こういうのは、知識でどうこうとか落ち着いて理詰めで一つずつ考えて行うことじゃない。経験や無意識の領域で行うものだ。
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キルを狙いにアビリティを使って前に出て、実際にキルを取り、次のターゲットをすぐさま狙い、移動して、遮蔽物を使ってリロードし、再びキルを取る。
これは教えられてできるようなもんじゃないし、こんなことを教えている人もいないだろう。
私だって書かないよ。「Wキーを押して前に出て、ロールを使って追いかけて、マウスをこんなふうに動かして、遮蔽物を使ってリロードして…」なんて、そりゃリプレイを見ながら後付けの説明・指導ならそう言えるけども、一般論的な初心者向けみたいなもので説明できるはずもない。
上にも書いたけども、知識とかそういうもんじゃないからだ。
不破湊さんがどの程度の状況把握をできていたのかはわからないけども、こんなのは考えてやるもんじゃない。倒せる敵を倒しに行く・的確な位置に移動するってのは、身に染み付いたFPS神経みたいなものによると思う。
残念ながら、現状のOWの多くのレートが高くないヒットスキャンプレイヤーなら、この場面で後ろで撃ってると思う。
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先日配信で見た、レートの高くないプレイヤー。ジュノ。
味方は正面から、相手は画像上側から侵攻。ジュノも横を取ってていいポジショニングに見えるけども、
危ない射線を横切り、見る必要がない後衛の方を見に行き、自ら前線へのヒールが届かないところに行ってしまった。
こういうのはOWのエリア理論がどうこうとか、ヒーローとアビリティがどうこうとかそういう問題じゃなく、FPS的な射線の意識・ポジショニングと視野の問題だ。
もともといた拠点近くの遮蔽物から、全体を見渡してヒールもダメージも出せたし、安全に立ち回れたはずだ。
勝手に比べて申し訳ないんだけど、上の不破湊さんのような、(おそらく)無意識の立ち回り・FPSセンスに比べると、残念ながら少し厳しい。
このまま多くのマッチを経験したりOWの固有の知識を仕入れたとしても、上手くなる・勝てるようになるには苦労するだろう。
◯OWの能力
OWの能力として色々あるんだけども、私は大まかに「基礎・個人・集団」の三段階で考えている。
私は一番下の「OWの基礎」て部分に関して言及することが多い。これができていないと、個人の能力も集団の戦闘力もクソもない。
基礎ってのは色々とあるけども、代表的なのはリグループとか、高台を取りましょうとか、ウェーブに勝ったらポジショニングしに行きましょうとか、正面・後ろで撃ってるだけじゃ一生攻められないよとか、戦う気あんの?とか、そのレベルの話。
他のFPSはそこそこ上手いはずなのにOWはあんまり上手くないプレイヤーがいたりする。それはOWの基礎がわかってないから。
撃ってちゃダメなんだよ、OWって。他にも色々あるけど。
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んで個人の能力の話になったときに、もちろんそれも内容は様々なんだけども、その個人の能力の基礎にFPSセンス・FPS神経ってものがある思う。
「センス」って言葉だとなんか生まれ持った天性のもの、ってニュアンスに感じられるかもしれないので、「FPSの基礎」でもいい。
どんなに表面的なOWの能力を鍛えようとしても・理解しようとしても、基礎的なFPSの能力・FPS神経がなければそれを発揮することはできない。
あるいは、そのFPSの基礎ができていないことを自分で理解できていないと、上達しようとしても間違った手段を取ってしまうだろう。
例えば道の真ん中で撃っててデスしちゃうようなプレイヤーは、それはもうOWの能力がどうこうじゃない。
あるいは表面的なプレイングだけでなく、対戦ゲーム・FPSとしてのメンタリティもだ。やっぱり向き・不向きはある。
特にOWは他のFPSと比べてもガンガン突っ込んで攻めて行くゲームだ。Valorantと比べてもあんなに緻密じゃない。雑でいい。
なんだけども、そうじゃないプレイヤーはたくさんいる。攻めたり戦ったりしちゃダメだと思ってるんじゃないかというような。
あんまり言うとアレなので、割愛するけども。
◯指導・成長
この記事の目的は、そういうプレイヤーをディスることじゃない。重要なのは、「FPSセンス・FPS神経・FPSの基礎ってものにちゃんと向き合いましょう」ということだ。
OWには様々な要素があり、様々な言説で溢れている。ヒーローの強さだとかアンチピックだとか構成だとか戦術だとか。
なんだけども、それらを知るだけでは何も上手くなれないし、プレイングに反映されることはない。
重要なのはそれらを受けてプレイヤーが何をするかってことなんだけども、それを考える上ではFPSの基礎に目を向けなきゃならない。
もちろん人によって何ができているか・何ができていないかは異なるが、FPSの基礎的なセンスがないプレイヤーには、必要なのはその部分だ。
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OWってのは他のeSportsタイトルに比べれば比較的シンプルなゲームだ。要素が少ない。少なくとも、ValorantやLoLよりは。
それは参入ハードルが低く遊びやすいという良い要素でもあるんだけども、逆に言えばその少ない要素で勝負が決まるという意味でもある。
ストッピングもない、リコイルもほとんどない、ヘッドラインを合わせてプリエイムしてピークして、なんてこともない。
上にも挙げたキャスディは、グレネード一つとギュッと動くロールだけ。あとは撃つしかない。
だからこそ、その能力で勝っていかなきゃならない。座学して知識を手に入れてもキャスディの戦闘力は上がらない。
んで、その撃つしかないヒーローで勝てないとき、多くのプレイヤーの問題点はエイムじゃない。
不破湊さんの例で挙げたように、エイムではなく判断能力・キルへの嗅覚のようなFPSの基礎的なセンスに基礎づけられたものがないとエイムもクソもないし、立ち回りもクソもない。
「立ち回りは身につけられる」というかもしれないけども、それはFPSの基礎があっての話だ。
ヒットスキャン・射撃系ヒーローでいえば、後ろの方で撃ってるだけのプレイが推奨されるようなFPSなんてほとんどないと思う。
それはOWの立ち回りが間違ってるわけじゃない。FPSの基礎的なことが身についていないのが原因だ。
FPSとは書いているけども、それはマウスを動かして照準を合わせて射撃するってだけの意味ではもちろんなくて、この手の対戦ゲーム全般のことだ。
どうやって交戦して勝つのか。自分は何をしていくのか。何をするつもりなのか。
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したがって、成長・指導という観点から考えたときも、そのような要素を考慮に入れていなければならない。
上の方に「教えられてできるようなもんじゃない」とも書いたが、だからといって無視できる要素なわけではない。
教えるとき・教わるときに、書いてきたような基礎的なFPSのセンス・FPS神経のようなものがある前提で話を進めると、上手くいかない場合は多いと思う。
下手なプレイヤーに対して私がよく思うのは、ヒーローの問題じゃないということだ。
戦闘能力が低いならば・対戦が下手ならば、どんなヒーローを出しても同じだ。
それはプレイングだけでなく、考え方もだ。
対戦ゲームでFPSであるOWというゲームで勝っていこうとするときに、対戦ゲームやFPSで勝つためにはどうすればいいかという観点を持っていないプレイヤーは、何を考えても無駄だ。
それはメンタリティの問題でもある。「積極的・主体的ではなく消極的・受動的」「味方に怒られないように」というようなメンタルでは、対戦ゲームが上達するはずもない。
「勝ちたい」「ゴールドに・プラチナに・ダイヤになりたい」というようなプレイヤーは山ほどいるが、どうやってするつもりなのか。
申し訳ないんだけども、そういうタイトルの配信を見ると、「何もしてねえじゃん」と思うことは非常に多い。
プレイしてたら自動的に勝ったりレートが上がったりすると思っているのならば大間違いだ。
自分のおかげで勝てる試合を増やさなきゃいけないし、レートは上がるんじゃなくて上げるんだ。
そういうのは、まさに対戦ゲーム・FPSのメンタリティであり、FPSセンスがあるか、向き・不向きという話になってくる。
「おめぇも頑張んだよ!」のセリフが有名なあの動画でも、忘れてはならないのは冒頭のセリフだ。「AKちょうだいAK、Mac10と交換しよ」。
これは、「自分の弱い武器とお前の強い武器を交換しろ」と言っているのだ。
こういう気持ちでプレイできないのであれば、それは残念ながらFPSセンスがないと思う。
◯じゃあどうするのか。
やる。それだけだ。
FPSだけでなく、あるいはゲームだけでなくスポーツなんかでも、初めから運動神経がいい人なんていない。スポーツをやっていくから運動神経が良くなるんだ。
私だってFPSセンスは皆無だ。年老いてからOWを初めたし、今でも酷いもんだ。
なのでエイムを初めとしたファーストパーソンシューティングとしては未だにゴミカスなんだけども、対戦ゲームとしては養われて・培われていったものがたくさんある。
上に挙げた不破湊さんのようなキャスディでのプレイは私にはできない。エイムがゴミだから。
しかし、例えばウィンストンやモイラではできる。遮蔽物の使い方、あるいはエリア・射線の意識、お互いのアビリティ・ライフ状況、それらを加味した戦闘能力・キルへの嗅覚は、もちろん上手い人たちに比べたら全然ダメだけども、昔に比べれば、あるいは多くの戦えないプレイヤーよりは、多少はマシになっている。
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これは自分がプレイする場合だけでなく、指導をする・受ける場合においても同様だ。
この記事に書いたようなFPSの基本的なセンスのようなものについて、足りていないんだったらその部分を考えなければならない。
いくらOWの表面的なことを教えても・教えられても、基礎的なFPS能力・センスが足りていないんだったら何の意味もない。
私は個別に指導したことはないけども、多くの低~中レートのプレイヤーに指導するならば、言うことは「戦え」しかないと思う。
OW的な要素以前に、対戦ゲーム・FPSの基礎的なセンスを養う必要があるプレイヤーは多いと思う。
どうやって戦っていくのか、どうやってキルを取っていくのか。
これらは、OW特有の何かがどうこうじゃない。ヒーローも構成もアビリティも関係ない。
そういう要素以前の、対戦ゲーム・FPSとしての基礎・センスだ。
OWってゲームは、ヒーローの相性やアビリティのような要素は非常に大きい。弾を頭に当てればキルできるゲームでもない。
なのでどうしてもそういう要素に目を向けられがちだ。どのヒーローが強いとか、アンチピックはどうするかとか、それぞれのロールがどうこうとか。
もちろんOWとしては、そういう話にはなる。なんだけども、それぞれのプレイヤーの能力においては、そこで重要なのはOW的な要素以前に、対戦ゲーム・FPSの基礎的なセンス・能力という要素が大きくあることを忘れてはならない。
そしてそれらが足りないのであれば、それを養わなければならない。戦闘センスは、戦わなければ身につかない。タンクやろうね!