詩「レモンひとつ分のレモン」
「レモンひとつ分のレモン」
レモンひとつ分のレモンの黄色
そのまま、逆立ちして見ていろ
あなたのことばを逆さまにして
吐き出す、曝書。
よく焼けた書物のかさかさとした薫り
そのまま、逆立ちして見ていろ
奥付けをはがして、逆さまにして
読み返すレモンの詩
レモンひとつ分のレモンの重さ
いぶされた紙の、黄色い気泡が
逆立ちの食道を引っ掻く
わたしのレモン、わたしの本
わたしのことばが逆立ちして
見ている。すえた匂いが
逆立ちの食道を引っ掻く。
もう出て来ないのか?
いぶされた紙が果たして焼ける、
サテンの熾のような火に。
レモンひとつ分のレモンの黄色
そのまま逆立ちして見ていろ!
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