金井美恵子のA感覚
「尼」と「尻」とを取り違えるということの滑稽さは、頭蓋骨によってなだらかな起伏を与えられた剃髪の頭の骨ばった丸みと、他方で、なべて老若を問わず、脂肪を蓄えてでっぷりと張りだしているはずの臀部の丸みとが同時に想起され、あたかもそのふたつの対蹠的な丸みがあべこべになってしまうかのような錯覚に囚われてしまうことにあるのだが、スタンダールの『カストロの尼』がそのような書字の形態的な取り違えによって、いっそうおかしく書き換えられてしまうのは、たとえば、あのキューバ革命の指導者がカーキ色