Nakabito 起業する女性について
かつて群馬県では女性が養蚕や繊維業で家計を支え、たくましく生きる女性の姿が一つの文化となり「かかあ天下」という言葉が生まれました。それから時代は戦後から高度経済成長期を経て、女性の働き方は時代と共に変化していきました。
私は広島県の公務員社宅が立ち並ぶ団地で生まれ育ちました。母親は主婦として家庭を支え、大学進学のため上京する際は、内職やパートなどで経済的に支えてくれていたことを覚えています。近年はジェンダーフリーという考え方が一般となり、女性が男性と同じように活躍する時代へと社会は変貌を遂げました。私の育った環境のように、いつも母親が家庭にいるというのは、いまでは珍しいことになったのだと思います。
現在、パンデミックや戦争といった不穏なことが世界を取り巻いている中、多くの非正規雇用の女性達が失業するといった、まだまだ女性の立場が弱いということが露呈しました。
暮らす地域によって産業構造が異なる為、多様な職業や働き方があるとは思いますが、特に少子高齢化が進む地方では、その選択肢が一層狭められていると感じることがあります。
約12年前、空き店舗が目立つようになった市街地活性化を目的として「ふるさと交流センターtsumuji」を立ち上げる仕事のため、私はこの町に移住することになりました。施設内のテナントの入居募集を行ったところ、多くの女性から出店希望があり、その夢に向かうエネルギーには圧倒されました。その後もイベントや商品委託販売でも、多くの女性が関わってくれることになり、女性の力で地域はさらに良くなるのだと確信しました。
今回のナカビトで「起業する女性達」をテーマにしたのは、不穏な時代と人口減少が進む地方でも、自分のやりたいことを仕事として、力強く前向きに歩み続けている女性達の姿を紹介したいと思ったからです。この町に関わってからの十数年間、輝き続ける女性たちの姿を見続け、そのエネルギーが町の風景を少しずつ変えていると実感しています。
上州の風土で力強く生きる女性たちの血は、いまでもこの地に脈々と生き続け、新たな「かかあ天下」が地域を明るく照らし続けているのだと思います。
2022年3月 山重徹夫
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