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「MtGは何故そんなに流行ってないのか」についての分析 ~推測と対策案を添えて~

本note記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。
題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.

ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのファンコンテンツ・ポリシー - 2 に準拠した注意書き

皆さんどうもはじめまして。ヤマセイ@MtGと申します。
名前からも分かる通り、しがないMtGプレイヤーです。
普段はパイオニアで青白人間、パウパーではグリクシス親和をメインに、ゆるーく楽しんでいる程度のカジュアル勢です。
統率者は一応ザクサラ統率者のハイドラデッキを持っていますが、どちらかといえばサシで殴り合う構築フォーマットを楽しんでいる人間です。

「食物&血トークン」と「ゴブリン・シャーマン&宝物トークン」
個人的にもいい感じに出来た、満足度高い奴らです。

あとは気が向いた時に上記のようなトークンを作ったりしている人間です。
(無駄に100枚ぐらい作っちゃった上に、ゴブシャーの方はまんま神河のゴブリンで作っちゃったせいで売ることも出来ないっていう。でもジャンドサクリファイスでめっちゃ使えるから満足)

とまぁそんな感じのどこにでもいそうなMtGプレイヤーが書き殴った本記事、よろしければご一読いただけますと幸いです!!


◆ この記事を書いたきっかけ

早速ですが、本記事を書くに至った経緯をひとつ。
昨年11月頃、X(旧:Twitter)をボケーっと眺めていると、こんなポストが一つ、どんぶらこドンブラコとタイムラインに流れてきました。

引用リポストやらを見るとまぁ色々な意見が飛び交っていたように思います。個人的には引用元noteの記事タイトルに「なんだァ?てめェ……」って愚地独歩状態になったのは内緒。
ただ、そこで感情的になってはいけません。「こういうのは本文を読んでから判断せなアカンで」と言い聞かせ、一通り読んでみることにしました。

……が、個人的な意見としてはそれぞれ以下のような認識に。

【引用元のnoteの内容】
本当に一番最初の視点自体は悪くないけど、それにしては「遊戯王の爽快感仮説」をかなり贔屓してるし、それを補強する「アメリカの通貨単位」にかなり思考が縛られてる節がある。

【国内の流行について】
これを国内で流行らない原因と早合点するにはいささか他TCGとの比較分析も判断要素も少なすぎじゃない?

実際問題、パワー関連の数字において桁数から受ける感覚や認識の違いそれ自体は、自分としてもあるとは思いますし、もしかしたら感性デザイン学とかそのあたりの方向で分析や研究も出来そうな気配もします。

ですが、少なくともMtGにおいては、

といった文化的・歴史的な要素な背景要素があります。

それらを加味すると、あくまでMtGにおけるP/Tなどでの桁数が少ない要因はボードゲーム文化の延長線にある製品という歴史的背景や文化的要素、デザイン上の合理性がかなり強いと考えられます。
そして、この数字の要素が現状の国内シェアやゲーム体験にどれだけ影響を与えてるかと問われたら、多分すごく考慮する必要はない程度には、影響力は低めなように感じます。
あくまで私見ですが、体感では10%~15%ぐらい?

それに、仮にもしこの仮説が一つの通説として通るなら、「MtGと同じ桁数とP/T方式を採用しているDCGのシャドバは、なぜ国内で流行したのか?」という質問には、微妙に答えづらい通説になってしまわないでしょうか?

「根幹にあたるゲームデザインがシンプルで完成度が高かったから」
「カードの美少女イラストがめちゃくちゃ美麗でエロかったから」
「ゲーム画面の演出やUXとかがリッチでボイス付きだったから」

先の質問、個人的には上記のような回答が出てきそうに感じます。
が、これらの答えが並ぶということは結局のところ、
「P/Tの桁数自体は、ゲーム体験にはそこまで強力に作用はしなさそう」
って考察にたどり着きそうに思えるんですよね。ただまぁ「ゲームデザイン上のシンプルさ」って部分に含まれてると言われれば、「そうかな……そうかも……」となりそうでもある。

まぁここらへんの深めの考察については、私が最初期の頃にセラフビショップで軽く遊んでた程度の素人ですので、出来ればちゃんと遊んできているシャドバ勢の意見を伺いたいところです。

あとは実情として先のnoteにおける理論だと、本国アメリカのEDHで《倍増の季節》がめっちゃ人気な理由も説明しづらくなりそう。

私も大好きな一枚。使用時は脳からアカン汁がヌチョッ……デロォ……と出てる気がする。
あとこのイラストもハイドラ好きにはめちゃくちゃたまらん。
んでファウンデーションでの再録ありがとう。パイオニアでもこいつ使えるのマジ感謝。

こちらのカード、書いてあることを分かりやすく言うと、「なんか場に出したり、なんかを乗せたりする効果をなんでも2倍にするよ!」っていう小学生みたいな効果のカードです。こういう脳筋カードめっちゃ好き。
そしてEDHでは同型デザインなどの他カードと合わせてアホほどトークンを並べて気持ちよくなる、といった用途で使われます。めっちゃ気持ちいい。

そしてこのカードの人気度合いですが、手っ取り早く比較する方法として2025年1月現在のシングル価格で確認してみましょう。
通常版・ノンFoilの条件でシングル価格を検索してみると、
Wisdom Guild、日本市場では概ね1400~2000円ほどで推移。
対するScryfall、本場アメリカでは約4500~5000円ほどが相場みたいです。
価格差にして大体2~3倍です。為替を考慮してもまぁまぁエグい差だぁ……

まぁ引用元のnote筆者さんが主にFPSやMOBA界隈のイベント屋らしいですし、記事自体の推敲や実情のリサーチとかも特にしていない点から含め、あくまで「こんな推測たてたで〜」ぐらいのノリだったんでしょう。
そう考えると、MtGのデザイン的な文脈やTCG・DCG界隈のアレコレを知らずに先の仮説に至っちゃったのもまぁ仕方ないのかな、とは思います。

……とまぁ、色々と先の投稿に対して所感を書き連ねましたが、この文章を放り投げているココは悪名高いインターネッツ。混沌渦巻き魑魅魍魎が跋扈す魔境です。
もっと言えば、援護射撃かフレンドリーファイアーか判別のつかない投稿や口撃が止むことのないゲリラ豪雨のように飛び交っている場所です。

そんな場所で一方的にただの感想を言いっぱなしなだけでは、「ダボがァ!なに舐めたこと抜かしとるんじゃ根拠出せやタンカスぅ!!◯にさらせやぁ!!!!」と何も無い行間から悪意を創造し、勝手に激怒した誰かが起爆剤のような一言を私にぶん投げたが最後、口撃の照準は全てコチラを定め、ゲリラ豪雨は意思を持った雹となり、おんどりゃあ消し炭すら残さんぞとばかりに集中砲火を浴びる羽目になります。
うん、余りにも怖すぎる。考えただけでもションベンちびる。

ですので、本記事ではそもそもの「なぜ国内でMtGがそこまで流行ってないのか?」という疑問に対して、自分なりの回答を見つけるためにも色々情報をまとめつつ答えを出してみよう!そういった趣旨の記事になります。

もちろんしっかりと時間を掛けて調査をしているわけではないので、多少雑な推論、異国の文化傾向に対する大雑把な認識、当時の文化背景を体験していないが故の甘めな推測など、諸先輩方から見ればツッコミ箇所は多分に含まれているかと思います。
余りにも誤った解釈や極端に恣意的な箇所などありましたら、コメントなりでご指導ご鞭撻いただけますと幸いです。

◆ 現状を知ろう! ~23年度国内売上額より~

それではMtGがなぜあんまり流行ってないのかを知るために、まずは現状の国内シェア率を売上額といったわかりやすい指標で把握してみましょう。

ということで、2023年度(大体2年前)のTCGタイトル売上上位15位までを棒グラフにした画像がこちらですドドン。

データ引用元:https://x.com/ikettitencho/status/1781608493545406783

こちら、この手の話題になったときにはまぁよく見る統計資料ですねハイ。
そしてnoteを書いている2025年1月現在の実情とは若干の差異はあるかと思いますが、MtGのおおよその立ち位置を推測するには十分でしょう。
んで、とりあえずこの棒グラフ、作ってみて思ったことですが……

いや1位のポケカ、バブル期を考慮しても売上額えっっっっっっぐ。
OCGからMtGまでの金額足しても届かないじゃん。
あとワンピカードつんよ。上位5位の中じゃ一番新参なのに4位て。
てかMtG、5位のヴァイスに2倍以上も差つけられてるんか……

今だと、ここにホロカ(hololive OFFICIAL CARD GAME)やフュージョンワールド(ドラゴンボールのTCG)が食い込んでくる感じでしょうか。
2024年度のデータではどこまで数字としてそれが現れるのか、ちょっと楽しみです。

個人的には、5月から日本語版が発売されたFlesh and Bloodの位置付けもどうなのか気になりますし、2025年には日本語版ロルカナも発売予定です。
果たして外国産TCGが国内の牙城をどれだけ崩せるのか。数字で出るのは当分先でしょうが、想像するだけでもちょっとワクワクしちゃいます。

・ 売上額ではMtGは中堅か?

閑話休題。MtGの分析に戻りましょう。
先のグラフにおけるMtGの立ち位置を見てみますと、2023年度時点では売上額6位といった具合です。
30年以上続いているタイトルでなんだかんだこの位置につけてるのは個人的には凄い気がします。まぁ単純に下環境向けの単価が高めな商材が多めだったが故に、若干上振れているって可能性もありますが……

参考程度にMtGにおける2023年の発売タイトル一覧。 引用元:https://mtg-jp.com/products/
実際問題、指輪物語で売上額はアホほど上振れてそうな気配がする。

それとは別に気付いた点としては、売上額においてヴァイスとMtG、そしてヴァンガードとデジカの間で、なんとなくですが一つの区切りとなるような差がグラフ上でできているようにも見えます。
この感覚、整理してみますと以下のような感じでしょうかね。

  • 上位グループ:ポケカ、OCG、デュエマ、ワンピ、ヴァイス

  • 中位グループ:MtG、バトスピ、エボルヴ、ユニオンアリーナ、ラッシュデュエル、ヴァンガード

  • 下位グループ:デジモン、ウィクロス、ビルディバイド、Reバース

ということで、MtGの現状における国内でのおおよその立ち位置としては、

売上トップ15位内においては、中位グループのトップ的立ち位置。
めっちゃカッコ良く言えば「古豪」。

といったところでしょうか。

決して流行っていない訳では無いが、かといって超絶大人気とまでは言えない感じ。うーむ、なんとも言えないポジション……
いや、16位以下タイトルのユーザーに比べれば贅沢な悩みかコレ……というか、国内のTCG全タイトルって全部でどれだけあるんですかね?

◆ 現状で甘んじてる原因は?~分析と推測~

では、なぜ現時点ではポケカなどの上位5タイトルとMtGの間でここまで差がついているのかを考えてみましょう。

その上で若干恣意的な前提条件となりますが、よほどデザインが大不評で大コケしたりゲームルールが破綻するような開発運営でも無い限り、先の15位までのカードゲームはベクトルは異なれど、ゲームとしての面白さが保証されているものと仮定させていただきます。

ゲームとして売る以上、そこが担保されていないとそもそも商売になりませんし、楽しい紙での殴り合いに飢えたユーザーは、つまらなければ速攻で新天地へと旅立ちます。消費者はドライです。
もっと言えば、先のポイントを怠ってても売れちゃうのなら、普通にゲーム要素を廃してただのトレカとして売ればいいって話になりますからね。
そう、MtGの30th Anniversary Editionみたいにな!!

また、TCGという存在自体をビジネス的に突き詰めていくと、結局は「主に玩具メーカーが扱う商材のひとつ」と言い換えることが出来ます。
老舗タイトルが跋扈しており振興タイトルが生き残りにくいと言われて久しいTCG業界。それでも新規参入のタイトルが今でも出てきている点は、ビジネスモデルとして多少なりとも利益が出せると判断されている証と見ることも出来ます。
ならば各メーカはあらゆる合法な手段を用い、競合他社との商戦を勝ち抜き、時には別軸でユーザーを確保し利益を得ようとしているはずです。

これらを考慮すると、TCGのシェア率における要素には、ゲームデザインの面白さは当然含まれますが、それとは別にゲームデザイン以外の部分にも流行る/流行らない要因があり、MtGはそこで他タイトルとの差がついているのではないか、と私は推測しています。

では、その推測を踏まえつつ若干ビジネス的な視点で要因を考えてみると、個人的には大きく3つの要素が関係していそうだな、と推測しました。

それは、「現状のIP自体の知名度」「対日本プロモーション力」「出会いやすさ(買う機会)」です。

そして上位5位までのTCGタイトルは、多分ですが上記のうち2つは満たしているんじゃないかと思います。勝手な予想ですが。
ということで、それぞれの要素について、順を追って推測してみましょう。

【推定要素その1】 現状のIP自体の知名度

悪名は無名に勝る、なんて言葉があるように、商売をするうえで知名度はかなりの重要項目です。

なんせ初めましての初心者にゲームをプレイしてもらうためには、まずは知ってもらうキッカケがないとそもそも始まりすらしません。
どんなに最高のコンテンツがあっても、その存在を1ミリでも知らない人間は、スマホで調べる気すら起こしません。
故に、各メーカーはとにかく知名度を得ようと多額の予算や人員を投じて色々画策をしているのです。

ただ、情報やコンテンツが飽和しきった現代において、競合他社の多さや食傷気味なユーザーの増加、消費速度の加速傾向など、知名度を得るための労力や維持コストはどうしても刹那的なのに高くなりやすいのも事実。
そして同時に、ビジネス的な視点でリスクヘッジを取るならば、費用はなるべく最小額、それでいて得られる効果は最大を目指したい、といった効率重視な戦略を選ぶことも、これまた当然の帰結でしょう。

それらを踏まえ、先のTCGタイトルと上記の内容を重ね合わせて見てみると、現状は大きく分けて2つの軸で商品企画がされているとでは?と考察できます。
それは、「既存IPを使用したタイトル」「完全独自開発のタイトル」の2軸です。順に説明しましょう。

■ 軸1:既存IPを使用したタイトル(自社IP or 他社IPでゲームを作る)
基本的には既存のキャラクターや世界観、設定などを用い、ゲームシステムやカードデザインなどは自社で企画・開発するタイプのTCG。

【該当TCG】
ポケカ 遊戯王(OCG、ラッシュデュエル)
※1 ワンピカード ヴァイス
シャドバ エボルヴ
※2 ユニオンアリーナ デジモンカード Reバース

※1 OCG独自のクリーチャー・魔法・罠カードなどは多数存在しますが、あくまで最初は原作漫画である点を考慮し、こちらに加えております。
※2 エボルブはDCGのIP知名度を踏まえての企画タイトルであると考慮し、暫定的にこちらに加えております。

こちらは言わずもがな、知名度獲得の労力をお借りするIPのパワーで賄っちゃおう頼っちゃおう!って考えのもの。
もちろん使用時にはライセンサー(IPの権利保持企業)への一定のライセンス料はかかりますが、完全新規タイトルで戦うために必要な人件費や所要時間などをスキップし、その分の資金・人的リソースをゲームデザインに注力できる!と考えれば、大抵の場合は安い買い物となるでしょう。
ちなみに自社orグループ内の保有IPであれば、おそらくライセンス料もかかりません。シャドバエボルブとかは多分このタイプになるかと思います。

■ 軸2:完全独自開発のタイトル(ゲーム自体がオリジナルのIP)
一部のコラボ商品を除き、基本的にはそのゲーム専用の世界観や設定、キャラクターからゲームシステムやカードデザインまで、とにかく全部をゼロベースから企画・開発するタイプのTCG。

【該当TCG】
デュエマ
 MtG バトスピ ヴァンガード ウィクロス ビルディバイド

※デュエマは漫画もありますが、既存IPからの使用というよりは販促を主軸としたタイアップ的な関係と考え、暫定的にこちらに加えております。

こちらは前者に比べ、そのカードゲームのための物語を1から作るため、知名度も最序盤では当然0からのスタートです。
それをカジュアル層レベルまでとは言わなくても、一般TCGプレイヤー層に存在が届くまでにかかる労力や時間は、既存IPのものよりも長く厳しく、そして予測もしづらいでしょう。
また、設定や世界観をしっかり作り込むほど、要する時間や人材、労力は既存IPを用いるよりも高くなりやすいと考えられます。
しかし逆に見れば、イラストや世界観などで他社との独自性を出せるなら、それだけでもかなりの差別化が図れますし、もし唯一無二で魅力的な世界観とキャラを構築できれば、作品として惚れ込む可能性も発生します。
そうなれば、ゲームだけでなくストーリーやキャラをも愛する強力なファンを獲得できるといったリターンも見込むことも出来ます。

さて、この2軸に上位15タイトルを分けてみましたが……ここで今度は2つのポイントで先のタイトルを再度見てみましょう。
一つは、上位15タイトルにおける既存IP系タイトルの比率
もう一つは、上位5タイトルにおける既存IP系タイトルの比率です。

まず前者の比率ですが、その数は9/15。
上位15タイトルでは約64%が既存IPを用いたTCG
といった具合です。
そして後者の比率ですが、脅威の4/5で80%。
上位5タイトルにおいては、デュエマ以外は総じて既存IPを用いたTCGとなっております。

つまりは、現状のTCG市場においては多少高いライセンス料を払ってでも、既存IPを用いたタイトルで行くほうが売上(一定の市場シェア獲得)が見込めるといった傾向が伺えるわけです。
おそらく後発のメーカーはこの傾向をある程度踏まえて企画を立案しているところも多そうで、現に昨年の目立った新規タイトルを振り返れば、コナンやウルトラマンと言った既存IPを用いたタイトルが殆どのように思えます。

ではここで、上位5タイトルの扱っている既存IPはライセンス料を払ってでも使いたくなるパワーを持っているのか、今一度見てみましょう。

【ポケモンカード】
言わずと知れたゲームソフト「ポケットモンスター」が原作。日本人なら大体知ってるレベルの国民的IPで、外出すれば絶対にピカチュウか御三家はどこかしらで見かけるレベル。
93の国と地域で売られた関連ゲームソフトは24年3月末時点で累計4億8000万本以上。
全世界累計市場規模は、17年3月末時点で6兆円。

【遊戯王 OCG】
週刊少年ジャンプにて1996年~2004年まで連載していた漫画「遊☆戯☆王」が原作。原作人気はもちろん、ネットミームとしても有名。
電子版を含めたシリーズ累計発行部数は22年7月時点で4000万部を突破。
アニメ作品はTVシリーズだけでも基本長編かつ9シリーズ。何なら最新シリーズは(ラッシュデュエルではあるけど)25年1月現在も絶賛放送中。
メディアミックス(全世界総収益)は19年時点で2兆7000億円以上。

【ワンピースカード】
週刊少年ジャンプにて1997年から現在にかけて連載中の漫画「ONE PIECE」が原作。現在のジャンプでは絶対に外せない超看板作品。
国内累計発行部数は22年時点で4億1000万部を突破(国内最高数)。
なお全世界だと、累計発行部数は5億1000万部を突破。
国内の経済効果は19年末当時で年に1,000億円超えとも推定。
また、1999年から現在に至るまでTVアニメが放送されておりNetflixでは実写ドラマが配信そしてリメイク版アニメの企画が現在進行中。

【ヴァイスシュヴァルツ】
と に か く た く さ ん 。コレでもかってぐらい沢山。
その数、公式サイトで確認できるだけでも149タイトル。
単体のIPに頼るのではなく、旬のIPをとにかく使うゴリ押しスタイル。

出典元は太字に埋め込んだリンクから飛べます。

……うん、まずはヴァイス以外に言いたい。
なんだこの怪物コンテンツたち。どいつもこいつも規格外すぎる。
そりゃたっっっっかいライセンス料払ってでも上記IP使いたくなるわ。

あとヴァイスもヴァイスで借りてるIPが多すぎる。脳筋にも程があるって。
公式サイトのコピーライト表記、あんなに分厚いの初めて見たよ。

ヴァイス公式サイトでのコピーライト表記。画像中央部の白い文字は全部コピーライトです。

……といった感じで、IPだけの視点で見てみても、上位5タイトル中3タイトルはそもそも世界規模でのトップランカーなバカ強IP、もう1タイトルはIP数の暴力で勝負するというストロングスタイルでした。

それと比べると、商業関連での出版・映像コンテンツがほぼ皆無なMtG、非TCGプレイヤーにおける知名度なんて、想像しなくても低いでしょう。
体感にはなりますが、基本的な認識は「なんかクッソ高いカードがある」とか「紫のお花がなんか高くて凄い強い」とかぐらいで、もし知ってるキャラ名やカード名を言った瞬間、マジックおじおばの面々は心を捕まれニッコニコになるぐらいには、MtGを知ってる非TCGプレイヤーは希少種です。

最近でこそMtGも他界隈のインフルエンサーやVtuberを使ってのメディア露出に励んではいますが、それでもやっぱり限界はあるよなぁ……と、ユーザー側からしても感じる次第です。
(ここらへんは次の項目でちょっと掘り下げるつもりです)

それくらいには普段の生活圏からは遠い存在だと考えれば、むしろMtGの国内売上額6位という地位はかなり健闘しているレベル、といっていいのかも知れません。

【推定要素その2】 日本用のプロモーション力

さて、先の要素では「IPの知名度」といった観点で各タイトルを見てみましたが、上位陣とのパワー差はそれはもう圧倒的でした。
しかしこの「知名度」、なにも現状から上げることが出来ないわけじゃありません。IPに根ざしたユーザーのコミュニティパワーが強いのは言わずもがなですが、企業側にも出来ることはまだあります。

それはプロモーション。分かりやすく言えば広告や宣伝活動です。
とにかく一般人とのエンカウント率を一瞬でも増やす。それだけでファンになる可能性は増える訳です。
昨今ではネットの広告は忌避される傾向が強いですが、それでも単純接触効果の力を諦めるほどのデメリットではないでしょう。
手法もWebサイトやYoutubeに流す広告、街中のポスター、コラボ、インフルエンサーや配信者への案件など、手段自体は多岐にわたります。

……が、ことホビー大国でもある日本において、よく取られるプロモーション戦略がひとつ存在します。それはアニメ・映像コンテンツです。

ヒーロ戦隊モノや仮面ライダー、プリキュアといった、いわゆるニチアサ枠が分かりやすい例でしょう。ヒーローやプリキュアがいて、そのグッズをバ◯ダイが売って、その他中小企業が許諾を得て雑貨を売る。
要はIP使用料や玩具で利益を上げるために、宣材としてアニメを作るといった構図です。

そしてそのアニメは少年少女だけでなく、大きなお兄さん&お姉さんも夢中にさせるパワーがあります。
そしてそんな大きなお友達はお金を持っています。
欲しかったグッズ、今は買えます。
買えちゃいます。
いや、買います。
さてプレミアムバ◯ダイ、何気なくちらっと見ました。
めちゃくちゃいい、ニッチなグッズがありました。
あの頃好きだったあのアニメの、めちゃくちゃいい"ブツ"がありました。
……。

……「ある」のがいけない!!!「ある」のがいけない!!!!
(抽選受注生産を大人買い&クレカ決済)

そうして世界は回っているのです。多分。しらんけど。めいびー。

逆に言えば、「アニメはあって当然」な環境で育ち、成人でもオープンな趣味として言える環境である現代日本だからこそ、多くの企業が戦略として挑戦出来る手法なのかも知れません。

そしてこの「アニメを用いた販促プロモーション」の例は、先のおもちゃと同じくホビー枠として括られているTCGにも結構当てはまってたりします。
そう、遊戯王とかデュエマ、ヴァンガードなどのTVアニメですね。

「小さい頃にTVで見て、そこから気になって始めた」
「なんとなくYoutubeとかで配信されてるのを見たらドハマリした」
「推しキャラの切り札で遊びてぇ~!!!となって始めた」

これを読んでいる方も、そんな経験はありませんか?

そしてこのアニメ作品の有無、地味に勧める側にも恩恵があったりします。
どんな恩恵?では次の例を想像してみてください。

  1. いきなり相手をカドショに連行させてデッキを握らせる

  2. 10冊以上ある漫画をドカンといきなり貸して読ませる。

  3. 「このアニメ見てくれ!」とdアニメのリンクを送って鑑賞させる。

この3つの沼引きずり込みルートでしたら、仮に話数が多くても3のハードルは比較的低いと思いませんか?
他の選択肢は相手も含めかなり能動的に動かなければいけませんが、アニメは再生さえすれば後は受動的。もっと言えば、ながら作業で鑑賞することも出来なくはない媒体です。
そしてそれでハマったならそのまま一切の容赦なく全身全霊で沼に押し込んで沈めればいいし、微妙な反応なら潔く諦めればいいわけです。
結果、相手の財布も時間も無駄に消費せず、こちらからも対応がしやすい。
Oh……なんて平和的でWin-Winな提案方法なんだ……

あとは、アニメコンテンツがあると「滅びの爆裂疾風弾!!!!」とか「当然正位置!!!」とか「ファーーー!!甘い甘い!!」とかのなりきり系でデッキを組んで楽しんだり、単純にミーム遊びもしやすくなる、といった点も挙げられます。
対戦するうえで相手とのポジティブなコミュニケーションが欠かせないTCGにおいては、そういった要素も相手との距離を縮めるのに一役買ってたりもするでしょう。
まぁやり過ぎは逆効果だったりしますし、人によってはそれ以前にコミュニケーションが壊滅している場合もありますが……

・国内TCG、圧倒的な映像コンテンツの保有率

長々と話しましたが、売上上位15タイトルを今度はアニメコンテンツの有無でどうなっているか、ここで改めて見直してみましょう。
ということではい画像ドン。

MtG君、想像以上に孤軍奮闘してた。よく6位にいるね君……

……なぁにこれ。MtG以外全部あるやんけ。
上位5タイトルに至っては、遊戯王以外ほぼ通年みたいなもんやんけ。
ラッシュデュエルも大枠で遊戯王として見れば、上位5タイトルはすべて今も放送中の通年状態、って状況やん。やっべぇ!!!!!

……とまぁ、ちょっと大袈裟に驚きはしましたが、これに関してはWizardsに非は一切ないし、正直言えば仕方ない事だと思います。

なんせ販促目的でのアニメ企画自体、言ってしまえば日本寄りのプロモーションにおける最終極地みたいなものです。そしてMtGの本場はアメリカ
一応日本もMtGにおける売上地域的には2位の市場らしいですが、それでもコアの購買層はやっぱりアメリカユーザー。そりゃ商品単位では日本向けの製品が出ても、プロモーション戦略はアメリカ向けにローカライズされるのが普通です。

仮にアニメ1シリーズを作るにしたって、日本の業界基準でも1話あたり約2000万円、12話1クールなら約2億4000万円ぐらいの制作費がかかるそうです。作画とかキャストにこだわり始めたら多分もっと費用は増えそう。
いずれにしろ、いちコンテンツのプロモーションとしては大企業でも踏み切るには結構覚悟がいる額なのは事実。そしていくら売上2位の市場とは言え、一支部にそんな予算は割けないのは想像に容易いです。
というか、売上上位かつ独自タイトルのTCGメーカーは委員会製とはいえ結構な額の予算、ちゃんと捻出できてるんだよね……なんで????????
てかそうなると通年放送してる企業、組織としての体力エグくね?????

そう思うと、Netflixで3DCGベースのアニメ化企画の立ち消えが2度繰り返されているのも、なんとなく仕方ないかも……と思ったり思わなかったりしますね。フルの3DCGだからアニメ以上に金かかってそうですし。
……いや良くないんだが?今度こそちゃんと配信まで漕ぎ着けてよ?

【推定要素その3】 出会いやすさ(買う機会)

さて、ここまで2つの推定される要因を見てきましたが、先の2点はひっくるめて言うと「知らない人がIPとエンカウントする確率」になります。
では、知った結果興味が湧いたユーザーの次の行動は?そう、購入です。

「ぶっちゃけ何にも分からないけど、でも何か買ってワクワク感は得たい」とか「なんかカッコよくて光ってるカード欲しい~!!!」とか、個々人によって理由は違えど、試しに一パックぐらいは買いたくなるのがハマりかけのオタクの性です。多分。
そうなると、そのTCGがどこで買えるのかはかなり重要な要素となってきます。それに興味の程度は低くても単純接触機会が高ければ、それだけ手に取る確率も上がりますし、コンビニレベルで売っていれば買うハードルはそれだけでもアホほど低くなります。

では実際のところ、MtGとの出会いやすさはどうなのか。
コンビニどころか家電量販店でもあるか怪しい、カードショップなどの専門店ですら置いてない店のほうが多いのが現状です。

ここからは体感にはなりますが、少なくとも印象としては以下の認識です。
(実際に実地調査をした訳ではないので、ネットの落描き程度に見て頂ければ幸いです)

こちらの図、厚かましくもn=1かつ多分に私見が含まれている図になります。
複数TCGを遊んでいる諸兄諸姉、実情など伺えますとめちゃくちゃ助かります……!

コンビニでは御三家とも言えるポケカ・デュエマ・遊戯王は言わずもがな、それ以外はたまーーーーに置いてる店舗を見かけるか、期間限定の販促キャンペーン時だけ店頭にあるといった印象です。
また、MtGを除いた上位5位以下は、基本的にカードショップでも総合店での取扱がメイン、そのタイトルだけの専門店を構えるのはネットショップぐらいかなぁーといった印象です。

それでも、上位5位(もっといえばポケカ・デュエマ・遊戯王の御三家)とMtGにおいて、小売店での遭遇率は明確に差があることは、あくまで私の体感ではありますがそこまで実情と乖離していないのではと思います。

・ユーザーからの視点と専門店における実情

さて、ではなぜこのような事態に陥っているのか。
これらの問題については、有り難いことに以下の2名の方々がそれぞれの視点にて詳しく考察されている動画がありましたので共有します。

ユーザー視点:アシム様(https://www.youtube.com/@アシム/videos

カードショップ経営者視点:遊楽舎ちゃんねる 店長様
https://www.youtube.com/@tentyou

さて、上記の動画の内容を簡単に要約すると、以下のようなものです。

【新規ユーザー側】※MtGを売ってる場所に遭遇した場合
・そもそも新弾ごとの商品が多すぎて何買えばいいか分からない
 (「これ買えばええ!!」な初心者向け商材が現状ほぼない)
・シングル購入でもカード枚数が多すぎて、何買えばいいか分からない
(1パック内の種類が国内TCGが80~120種、MtGは270種+基本土地)
・どの遊び方で遊べばいいのか、商材での導線もほぼないので分からない

【カードショップ経営者側】※店で取り扱うかを検討している場合
◆仕入れ

・そもそも新弾ごとの商材が多すぎて、仕入れるべき商品が分かりづらい
・新弾発売のスパンも国産TCGと比較しても短い
◆商材への知識
・遊び方が多すぎてシングルの需要が読みづらい
・カードの真贋鑑定が出来ないと、モノによっては損失額がかなり大きい
◆在庫管理
・遊び方が多すぎ&歴史が長すぎて、そもそもの必要在庫が膨大
・新弾ごとのシングルカード枚数が多いせいで、場所も人件費もまぁキツイ
・同名カードでも、収録パック・特殊枠などのバージョン違いが多すぎる
・そもそも多言語版があるので、言語数を増やす≒必要在庫が増える
・シングル販売時、店頭での面積占有率が高い
・店頭面積に対しての回転率が(おそらく)かなり悪い
◆業界的な問題
・競合他社として、晴れる屋の存在がどうしても強い
 →国内市場の基準ポジ&専門店ゆえの最適化価格に対し対抗しづらい
・そもそも回転率がいい商材(ポケカ、デュエマ、遊戯王)だけだったり、
 コレクターアイテム系メインにした方が初期投資の敷居が低い

加えて、両動画内ではあまり語られていませんでしたが、個人的には以下の要素も追加で加えられるのかなーと感じました。

【カードショップ経営者側のみ】
・買取・値付け判断のできる知識を有した人材がそもそも確保できない
・無人自販機でやるにも、回転率の低さや利益率の低さがネックに

【ユーザー・カードショップ経営者の両者】

・そもそも商材の単価が高い!!!!!

・じゃあコンビニとか家電量販店はどうなのさ?

さて、上記の原因などは主にカードショップの視点からではありましたが、個人的にはシングルの取り扱いをしない家電量販店やコンビニと言った小売販売店でも、殆ど同様の理由で取り扱いを控えるといった状態になっているように考えられます。

実際問題として、コンビニで見かけるポケカや遊戯王、デュエマなどは、基本的に「新弾 ≒ 1パック or 2パック」がデフォルトで、構築済みデッキは完全に別商材として需要を共食いしないよう、リリース時期や流通販路などで明確に分けられているように感じます。

対してMtGは「新弾 ≒ 通常パック、ハイエンドパック、多人数戦用の構築済デッキ2~4種、ちょっとお得な詰め込みセット」がデフォルト構成、かつ時期によってはここにもう2種類ほど商材がぶっ込まれます。
また各商材ごとの流通販路も、コンビニ向けの特殊パックを作るなど色々施策をしてはいますが、どれも正直イマイチな手応え、といった印象です。

さて、これらの特徴を試しに回転率至上主義のコンビニ店舗側からの視点で見比べると、それぞれ以下の様に認識されると私は思います。

【ポケカ】【デュエマ】【遊戯王】
・新商品 ≒ 商材が1つなので、これさえ取り寄せればOKという安心感がある
・1箱単価も安いから、お試しで一箱ぐらいは取り寄せられる
(1箱30パック入りで5000~6000円程度)
・小売単価が安いから、レジ近くに置いとけばついで感覚で買われやすい
(基本的に約200円、年2のハイエンドパックで約600円)
・場所もそんなに取らないし、回転率も良い

【MtG】
・商材多すぎてそもそもどれが良いのか分からんのだが?ってなる
・通常パックの1箱単価がそもそも高いので、明確な需要が見込めないと
 1箱でも手を出しづらい

(1箱36パック、霊気走破からは30パック入りで13000~16000円程度)
・小売単価が高く、ぶっちゃけついで感覚で買える値段ではない
(基本600円、ハイエンドで3000円、特殊パックなら1200円/6000円)
・一般的に知名度が微妙&手が伸びづらい価格ゆえ、回転率が悪い

うん、MtGユーザーの自分から見ても、店頭に置くとなると問屋から仕入れる前から不良在庫になる未来が見える。
ただでさえ店舗面積が狭くギッチギチのコンビニです。パックを置く面積すら吟味する環境では、淘汰されてしまうのも仕方ないね……

そして、これが新宿にあるようなアホほどでかい家電量販店の場合は、
・そもそも取り扱う商品数が多い
・来店者数がそもそもバカ多い
・家電自体の単価がふつーに高い
MtG君が多少不良在庫として残り続けててもそんなに痛くない
(言うて最新弾の数箱を最低限だけ取り寄せているぐらいで抑えていそう)

逆に片田舎のワンフロア程度な家電量販店では、
・来店者数がそもそもの人口母数的に少ない
・面積比に対して利益率を高める必要がある
回転率or高単価の二点特化をする上でMtGに割くだけの予算がない

といった具合で、同じ家電量販店でもMtGの取り扱いに差が生じている、というのが実情に近いように思えます。

そんなこんなで「商業的に扱うには色々難しいよね……」がどの小売店の媒体でも起こった結果、売上上位のTCGに比べて買いやすさ(遭遇難易度)が下がっているのが現状といった感じでしょうかね……

逆に言えば、晴れる屋が今なお展開出来ているのも、業界黎明期からシングルの取引価格が高い点に商機を見出し、結果としてそれが現在においても維持されているが故なのかなぁ、と。
それでも、晴れる屋2(ポケカ)や晴れる屋3(デュエマ)と市場シェアが高いタイトルに新規展開したり、初心者へ現金1000円プレゼントキャンペーンを実施している様子を見るに、最近は以前のような成長曲線を維持しづらくなって来ている、といった様子がなんとなーく伺えます。

◆MtGを流行らせるには? ~新規層を獲得するために~

さて、ここまで長々と「なぜMtGはそんなに流行っていないか」を要素ごとに分析してきたわけですが、原因ばっかり考えてちゃ面白くありません。
ここからは先の原因などを踏まえつつ、「どうすればMtGは流行するのか」を考えてみたいと思います。
勿論、ここから書かれる内容もあくまでいちユーザーである経営戦略素人の浅く狭い見聞から出力された案になります。その為、実情とは大きく乖離した内容になるかもしれない旨、ご了承の上読んでいただければ幸いです。

・現状のWizardsがしている主なプロモ周りを雑に分析

まず初めに近年のMtGにおけるマーケティングを振り返って見ましょう。
個人的には、大きく分けて以下のユーザー層に向けたマーケティングを行っているように思えます。

・昔(いわゆる旧枠あたり)にMtGをしていた引退ユーザー
 
2019年頃配信のアリーナのCM(『さぁ、マジックしよう』)
 →『イニストラード:真夜中の狩り』のパロディCM
 →漫画『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』

新しくやるTCGを探しているTCGプレイヤー&TCG自体が初めての初心者
 
PUNPEE & JJJコラボのアリーナCM(ギャザギャザギャザギャザのアレ)
 →稲葉浩志と凛として時雨のコラボ(ネオ神河のアニメトレーラー)
 →灯争大戦以降からの日本人アーティストの積極的な起用
 →有名タイトルとのIPコラボ(FFFalloutカウボーイビバップなど)
 →他コンテンツのインフルエンサーとのコラボ動画・コラボ配信
 →大型イベントなどでの大規模初心者講習会

これらのプロモーションにおいて、過去にやっていた引退勢を狙う戦略は決して的外れではないでしょうし、MtGの現状を踏まえても理にかなっていると強く感じます。

というのも、MtGはそもそも商品の単価が競合他社である国産TCGよりも高く、市場のシングル価格に関しても平均値自体が高めです。
また、ここ数年はコレクターブースターやSecret Lairなどの高額商材、そして他社IPとのコラボ商品を積極的かつ矢継ぎ早に出す戦略を取っています。
それらを考慮すると、近年のWizardsが指標として定めているモデルユーザーの平均購買額は以前よりも高めに設定されているように感じます。
結果として、メーカーの希望をある程度満たせる層を考慮すると、一定額のまとまったお金を趣味に回せる社会人が対象になるわけです。
そう考えると、そこに的を絞ったプロモーションもまぁ納得ですよね。

しかし、この戦略は言い換えれば30~40代のオッサン特化。こればかりに注力していては、ただでさえ年齢層が高めなユーザー層の高齢化が今以上に加速するのは目に見えてます。
長期的な商売をするうえでコミュニティの維持や新陳代謝を考慮すると、結局のところ若年層の新規プレイヤーをどれだけ増やせるかを考えなければなりません。

その観点で見ると、IPコラボで初めてMtGをプレイした!友人がコラボきっかけで遊んでくれた!といった声をSNSではちらほら見ました。
コラボは実を結び、しっかりと新規ファンは流入しているようです!!!
凄いぞWizards!!!!!!!

じゃあ最近コラボしてるIP、一通り見てみっか!!

【MtGがコラボした&コラボするIP】
・スパイダーマン
・FINAL FANTASYシリーズ
・Assassin’s Creedシリーズ
・カウボーイビバップ(プロモーションのみ)
・Falloutシリーズ
・MARVEL作品(Secret Lair)
・初音ミク含むピアプロキャラクターズ(Secret Lair)
・ストリートファイターシリーズ
・ドクター・フー
・指輪物語
・Warhammer 40,000
・ダンジョン&ドラゴンズ
・ゴジラシリーズ(柄違い収録でのコラボ)

う〜ん!!どいつもこいつもすげぇIPばっかりだぁ!!

……でも私、上記のコラボ作品群を見て気づいたんです。
各IP、なんか全体的にユーザーの年齢層高い気がする。
なんなら比較的若い人が多そうなミクちゃんとMARVELコラボ、両方ともSecret Lairだったから、コレクターでもないと買いづらそうな気も。

……ただ!!!今年は!!!FFとスパイダーマンがある!!!!
てか東映版スパイダーマッとかSecret Liar Dropで出そうな気がするな。
ともかく、我々は心より歓迎します!!!!ようこそMtGに!!!!!

とまぁこんな感じで、プロモーションやコラボでの施策自体はちゃんと実を結んでいるものの、若年層のユーザー獲得に関してはやや不明瞭、今後のコラボIPに期待したい、といった印象を受けるというのが個人的な感想です。

ただ、これって結局のところ「他社IPに若年層へのアプローチを依存している」って状況なので、この一本槍だけではちょっとなぁ……とも思ったり。

・若年層や完全新規プレイヤーなどを狙うには?

じゃあ若年層の新規プレイヤーを狙うにはどうすればいいか。
これ、要はMtGに関するキャラとかが「見たことある!」となる作品になって、その後に迷わず買いやすい商品があるといった状態になればいいのではないでしょうか?
ということで、個人的に考えた案が以下の通り。

  1.  2Dアニメを日本の地上波含めて配信

  2. 上記アニメとタイアップした製品をリリース

まぁ言ってしまえば、完全に販促スキームに沿った単純な案です。ただ、単純だからこそ、成功例・失敗例ともに先行事例が日米どちらでもアホほどあるプロモーションでもあります。
では、それぞれの項目を順に説明していきましょう。

《新規取り込み案その1》 2Dアニメを日本の地上波含めて配信

まず1つ目のアニメ作成案ですが、これは完全にプロモーション特化な案。
ただし、この案の肝となる部分は「2Dアニメ」「地上波含めて配信」の2箇所です。

というのも、事前調査でMtG日本語公式Youtubeチャンネルを調べた際、ちょっと気になるデータがありまして……ということでまたまた画像ドン。

サムネイル画像等引用元:https://www.youtube.com/@wizardsmtgjp/videos
アニメトレーラーとPUNPEE & JJJのコラボCM、数字がスッッゲェや。
エルドレインの王権と灯争大戦のトレイラーは、アリーナリリースのタイミングに加えて、
トレーラー自体が3DCGの本格アニメに切り替わったのが要因としても強そう。

上記画像は、MtGの日本Youtubeチャンネルに投稿されている動画のうち、直近5年で10万再生を超えている動画をすべてピックアップした画像になります。
そのうえで、先の画像で注目していただきたいのは、以下の2点。
・日本専用チャンネルで10万再生以上を超えている動画が8本しかないこと
・それでもアニメPVが両方とも100万再生を超えていること

これらが意味するところですが、そもそも該当のYoutubeチャンネルはいつからあるのか、投稿動画数なども含めおおよその情報をまとめてみました。

【MtG 日本公式チャンネル】※25年1月時点(一部抜粋)
開設日:2014/01/14
登録者数:約3.5万人
動画本数:706本

https://www.youtube.com/@wizardsmtgjp/community

そして比較対象として、開発元が同じWizardsであるデュエマの公式チャンネル、『デュエチューブ-DM公式-』のデータも引用してみましょう。

デュエル・マスターズ 公式チャンネル】※25年1月時点(一部抜粋)
開設日:2021/01/28
登録者数:約15.6万人
動画本数:2338本

https://www.youtube.com/@-dm-1351

うん、……すっげぇなデュエマ!!
ということで、このデータから見ても、正直MtGの日本公式チャンネルは国内プロモーション窓口として発信力は弱い、と言っちゃってもいいのではないでしょうか?
いやまぁ、かたや世界規模IPにおけるいち地域用のサブ的なYoutubeチャンネル、かたや日本特化でタカラトミーとかもバックに付いて予算もあるチャンネルを比較するのもどうなのかとは思いますが、MtGの半分の年数で4倍の登録者を得ている光景をこうして見せられると、仕方ないとはいえ流石に諸々の事情を踏まえても国内でのプロモーション力は弱いなぁとは思っちゃいますよ……

ですが、そんな比較的発信力が弱めであるチャンネルであっても、先の画像で分かる通り、アニメトレーラー2本とPUNPEE & JJJのコラボCMはちゃんと100万台の再生数を叩き出せているんです。
つまりは、ちゃんとしたアニメ作画で各メディアを巻き込んでの映像コンテンツを制作すれば、知名度が薄いMtGでも国内のライト層まで訴求できる可能性はあるのではないでしょうか?

ちなみに本家アメリカ向けのMtG公式Youtubeチャンネル、10万再生も100万再生もゴロゴロとありますが、その中でも神河のアニメPVは451万再生エルドレインの森のアニメPVは35万再生といった数字をちゃんと出しており、決して本国でアニメ絵のウケが微妙といったわけでもなさそうです。

ただ、この案を見た方の中には「2Dアニメ?コネクションも無いのにアメリカのIPで日本作画なんて無理でしょ?」と思う方はもちろんいらっしゃるでしょう。
ただ、ことWizardsの現状においてはワンチャン可能な案だったりするかもしれないんですよ、これが……!

というのも、WizardsとNetflix間で3DCGアニメの企画が2度も頓挫しながらも今なお動いてるということは、Netflixとの関係は多少悪くとも最悪まで行ききっているわけではなく、コネクション自体も維持できるぐらいには色々しているものだと考えられます。楽観的な見方ではありますが……
そしてそのNetflixですが、実は2018年からProduction I.Gとボンズと包括的業務提携を結んでいたりします。
んで、Production I.Gは『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』、ボンズは『僕のヒーローアカデミア』や『鋼の錬金術師(原作を最後までアニメ化した方)』など、海外でも根強い人気がある作品を手掛けている、名前が通っているスタジオです。

つまりはもし予算がつくのであれば、日本市場へのいち要素としてNetflix資本でProduction I.G、もしくはボンズ作画でのアニメコンテンツという可能性は決して無理筋ではないと言えそうなんです。

ちなみに仮に2Dアニメを作ることが出来るのなら、アメリカでも先のPVで一定の印象が出来ているネオ神河を舞台にしたうえで、おおよその方向性は『新Φ侵攻後、復興中なネオ神河を舞台にしたオリジナルストーリー』あたりが無難な所でしょうか。
下手に他の次元をやるよりかは、サイバーパンクで外連味のある2Dアニメに振り切りやすいネオ神河のほうが色々融通もききそうですし。
それこそゲーム『Cyberpunk 2077』とアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』のような類似したケースが先にあるのも含め、この路線ならアメリカ本国でもまだ受け入れられやすそうな気もします。

ただ、この案もちゃんと懸念点が存在してます。
わかりやすいポイントとしてあげられるのは以下の2点。

  • 2DアニメからMtGを知って紙を始めた場合、絵柄が違いすぎてコレジャナイ感が凄いことになる

  • 単発1クールだと一過性の話題で終わる可能性が高く、新規層へのイメージ定着に繋がらない恐れがある

そもそもMtGがアメリカユーザーがコアユーザーのコンテンツであるため、特に1つ目の懸念点はめちゃくちゃ大きい要素ではあります。
また、2つ目の懸念点も長期クールで制作するとなると、それこそ本流であるMtGのストーリーと使えるネタを取り合う形になるかも知れませんし……(パラレルストーリーで行けそうな気もするけど)

事実として、英語Youtubeチャンネルに投稿されている灯争大戦のシネマティックトレイラー団結のドミナリアのシネマティックトレイラー、1000万再生の数字付いてたりしますし、もしかしなくてもWizardsも1つ目の懸念点を考慮して、なるべく紙とアニメでのギャップを減らすために3DCGに拘っている可能性があるのかも知れないですね……。

《新規取り込み案その2》 アニメ作画の商品やデッキを出す

ということで2つ目の案ですが、まぁ分かりやすく「初心者向けの明確な入口」を作ることがコンセプトの案です。
ただ、この案の本質的な要素は、「プロモーションと同時期にやる」ことと「衝動的な欲しい!を刺激する」ことの二点が肝になっていると考えています。

まずはじめに、基本的に公式から発売される構築済みデッキのニュアンスは、おおよそ「初心者向け製品」「環境へのテコ入れ」のいずれかに属するものだと思います。そしてMtGにおいては過去のプレインズウォーカーデッキなどからも分かる様に、概ね前者の文脈で発売されていると考えていいでしょう。

そして現在、MtGで発売される構築済みデッキ ≒ 初心者向けの入口商品は統率者向けの構築済みがほぼデフォルト状態になりつつあります。
これは単純に本国アメリカの需要を10^5000%反映しているもので、公式も初心者も結局は統率者しかせんやろガハハ!!!って感じなんでしょうね。
まぁ現に日本でもちゃんと売れるからね、人気なのは事実!!!

そしてこの統率者、カジュアルフォーマット故にヴォーソス的な楽しみ方も出来るフォーマットとしてその地位を確立している側面もあります。
そう、これを日本的に言い換えれば「好きなキャラのなりきりデッキで遊びまくれる環境」な訳です。

つまり、先の2Dアニメとタイアップさせた統率者デッキを売ることができれば、アニメを見終えて、一番推しグッズに飢えているけど何を買えばいいか分からない時期の初心者ユーザーに対して、明確に「あんさんが買うべきなブツはコレだぁ!!!」と言える商品を勧める事ができる訳です。

逆に言えば、現状のMtGでは既存のキャラクターについているコアなファンだけでなく、アニメを見た初心者ユーザーも含めて、ライト層を明確に取り込むことが出来るかな〜りぶっとい導線が残念ながら無い、ということでもあるんですけどね……

もちろん、決してMtGとタイアップした漫画や映像コンテンツが劣っているわけではなく、むしろそれぞれの作品完成度はめちゃくちゃ高いとは思います。
ただ如何せん、その漫画や映像コンテンツの次に来る商品までの販促企画がうまく組み立てられない、ないしは組み立てづらい状況を繰り返しているのが、今のMtGの様に見受けられます。

例えば、漫画『デュエル・マスターズ』も元々はMtGを扱ったバトル漫画として連載が始まった作品でした。
しかし、パックの発売間隔とゲーム環境の変化に対して、肝心の漫画の連載速度の帳尻など合わなくなっていった結果、完全新規TCGであるデュエマを扱うに作品に切り替えるといった形になってたりします。(それで押しも押されぬメチャ強コンテンツとして大成功してるのも滅茶苦茶凄いことなんですけどね?

また、漫画『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』も構成上過去の歴史をなぞる物語という点は、過去ユーザーや作中時期にプレイしていた引退勢にはそれはもう強くブッ刺さる作品の強みです。
ですが販促的な側面で見れば、キャラの握っているデッキを売るなどの商品展開をしようとすれば、下手すればレガシーやヴィンテージの土を踏ませるようなものを売る羽目になりかねないというジレンマが発生してたりするわけです。

そういった諸々の観点を踏まえると、先の2Dアニメ案とタイアップさせる形で商品を展開する手法は、単純にメディア露出を増やすだけで終わらない企画としてWizardsから見ても悪くない案なのではないでしょうか?

……とまぁ、ここまでちゃくちゃいい感じに書いてみましたが、この案にももちろん弱点はあります。

  • キャラ人気が爆発した結果、キャラ推しの既存ユーザーと商品の奪い合いになりかねない

  • ただでさえ国内流通量や再販頻度が国産TCGに比べ薄め弱めなのに、需要のあるコラボ商品だけ転売ヤーに目をつけられるリスクがある

言ってしまえば、注目度が上がれば悪い意味でも人が寄ってくる、それに起因する問題が懸念点です。
もしアニメがメガヒットして覇権コンテンツにでもなろうもんなら、他の国産TCGでは良くあれど、MtGユーザーが経験したことのないような問題が店舗やユーザー間含めて発生する可能性も否定は出来ません。
でもそんくらい新規層がやってきて盛り上がっている光景、一度くらいは見てみたいんよ、マジで……楽しいんよ、MtGって!!!!

◆さいごに

ということで、最後に要約をするならば、
【MtGが流行ってない理由】高い、知らない、売ってねぇ……!
【MtGを流行らせるには?】バズるアニメと関連商品でゴリゴリ販促する

といった、まぁ身も蓋もない結論となりました。

そして、ここまでとにかく楽観的かつご都合主義な仮説を展開してきましたが、結局は競合タイトルが多くIPパワーの時点で強敵ばかりな日本という特殊環境において、それ相応の腹を括ったテコ入れがないと新規層の獲得はかなり難しそうというのを強く感じた次第です。
というか、そもそも日本はサブカル系の娯楽が多すぎるんじゃ。

また、国内のMtG界隈において最前線を走っている晴れる屋も現状できることを色々と模索はしておりますが、やはり小売店は小売店、どれだけ国内での存在感が強くても、やれることには限界があるなぁとはユーザーからも強く感じますね……
むしろ身銭切ってまで新規層を得ようとしているのエグすぎる。アイデアとしてあっても小売業じゃ普通やらんてんなこと。

あとは、数年前にKAI-YUさんがプロモーション周りでディレクションをしていた時期には、ストリート系やヒップホップ系にアプローチをしていたのも今となっては懐かしいです。個人的にマジック環境分析ラボをはじめとして、あのコラボCMなどの映像コンテンツ、今でも好きです。
ただ、もし本腰入れてその層を取り入れるとするならば、それこそカジュアル&雰囲気寄せたイベントを毎年恒例レベルまで定期的に開催したり、相手側のカルチャーに乗った販促も上手いこと絡めないと難しかったかも知れないですね……(あともう少しBRAIN DEADとのコラボが早ければ……)

そして私も含め、今のMtGを遊んでいる現役ユーザーが出来ることといえば、やっぱり「安心して気軽に顔を出せるような雰囲気」を育てるに尽きるんじゃないかなと強く思います。
初心者が来たら、まずは懇切丁寧に教えたりしてぬくぬくにさせる。
決してオタサーの姫にするわけじゃないけれど、少なくとも「対人関係でそんなに不快感もないし、そういう人ばっかりだからやってみようかな」ってなるぐらいの土壌を作る。
そしていざというときは初心者を助け、守りやすい環境にしてあげる。

結局は面と向かって遊ぶコミュニケーションが必要なゲームですから、そういった基本的なことがいちばん大事なのかもしれないですね。
それを行動で示すのはめっちゃ難しい事だとは思いますが。自分も含めて。

そして願わくば、願わくば……Netflixの3DCGアニメがちゃんとローンチまでこぎ着けて、一気にMARVEL並みの爆発的なムーブメントが起きてくれないかなぁ……いやマジで起きてくれねぇかな。

といった感じで、長々と書いてきましたが、本記事は以上となります。
この分量での執筆が初めてなのもあり、読みづらい箇所多々あったかと思いますが、楽しんでいただけたのであれば嬉しく思います。

改めまして、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
もし記事をスキしてくれた方ッ……!!そこの貴方ッ……!!!
よろしければッ……チップもッ……!!!!
出来ればでいいのでッ……お願いしますッッ……!!!!!

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