見出し画像

万引きGメン

万引きGメンのアルバイトを始めた。
主な業務内容としては万引きGメンらしい振る舞いをすること。各々の心の中のGメンを開花させて全身を使って表現し、気が向いたら万引き犯を捕まえてほしいとのこと。

時給は600円。最低賃金を大きく下回るが、捕らえた万引き犯が盗もうとしたものが報酬として僕のものになるらしい。ただ交通費は2000円出るとのこと。僕は徒歩2分のところに住んでいるというのに。店長は計算が苦手だ。

それでも時給が低すぎるので、「万引き犯がいないと僕の給料は低いままじゃないですか!」と僕は詰め寄ったが、

店長は、「ふん……勘の良いズィーメンは嫌いだよ……」の一点張りであった。

店長がハガレンを通ってきたことよりも、Gメンのことをズィーメンと呼んでいることが気になり、もうそれ以上の追及をやめた。なんか醒めてしまった。後から聞いたことだがパートさんがすぐ辞めるらしい。納得である。


勤務初日、僕は胸に大きくG!と描かれたユニフォーム(店長考案)を着て店内をウロウロしていた。小学生にGメンさんこんにちは!と声をかけられたが、

思わず「万引きGメンだってバレるだろうが!気でも触れたんかこのクソガキが!」と怒鳴ってしまった。万引きGメンは難しい。

すると、牛乳を赤子の様に抱きながら万引きしているおじさまがいた。あまりに幸せそうに抱いているので僕は声をかけなかった。父性の中で母性が爆発していた。ただやっていることは不正である。ふっせーわ(笑)

次は、普通におばさまがカゴにパンパンに食料を詰めて万引きしていたので、「え!?万引きしてるの??」と声をかけた。なんか逆に疑問形になっちゃった。驚きすぎるとね。

するとおばさまは「に…キャン……なん……キャンなん…で...」とか細い声で言うので、「え、南海キャンディーズの二階堂ふみさん!?」と聞いたら、「あ、違います、普通に2回目なんです...信じてください…まだ2回目なんです…」と言っていた。全然ダメだよ。

僕はおばさまのカゴを奪い店を去った。


その後の行方は、誰も知らない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?