目的探しの旅
妻が妊娠した
僕は自給自足を決意した…
このフレーズをテレビCMで聞いたことがある人もいるだろう。
妻の妊娠は何か夫を突き動かすものだったらしい。
二人目の子供を授かった時、夫は34歳で、得体の知れぬ野望を胸に突然千葉県に通い始めた。
最初は夫もその衝動の正体が分からないままであったが、とにかく足を動かしていた。
畑の横の日当たりの良い斜面、農地付きの古民家、雑木林付きのうらぶれた空き家、バブル期に建てられた荒削りの別荘…あらゆる物件を巡って答えを出したらしい。
何もない雑木林を自分の満足行くまで便利に、快適にしたい。自分の手で。
そういうことらしい。
目的が定まったところで夫が購入したのは、沢が近くに流れる少しじめっとした雑木林だった。