「横丁ZINE文学フェスタ」参加レポ
あるいは、値段のつかない物語を交換するということ。
テキレボわくおたパックの〆切に追われていた、ある日。こんなイベントを発見しました。
私は小説やエッセイを書き、同人誌を作ることが大好きなオタクです。
同人誌を作り読むことは多々あれど、ZINEってやつは作ったことも読んだこともないな……えっ、飲み屋街のイメージが強いハモニカ横丁で物語を交換するんですか? その上、書き出し縛り? お題は「好きな人に振られ」? なるほど。「〇〇で100のお題」と共に青春を駆け抜けてきたオタク心をくすぐられるわね……。
そんなわけで初ZINEを作り、参加してまいりました。とても楽しかったので、記録を残しておこうと思います。
「横丁ZINE文学フェスタ」とは
ざっくり言うと、「書き出し縛りで創作物語ZINEを作り、持ち寄り、他の人の作ったZINEを10冊持ち帰ろう!(一般参加者さんも500円払えば7冊もらえる)」という企画です。
主催は「BOOK CULTURE CLUB」様。プロフィールの一節を引用させて頂くと、「本のある空間を増やす活動」をしていらっしゃるクラブです。
ブックマンション、お客さんとして中を覗いたことがある。会ったこともない主催さんへの信頼がぐっと増す。このあたりで参加費の決済を終えました。
さて作るか。
そこで発生したのが次の疑問。
ZINEって同人誌と何が違うの?
雑にぐぐってみる。明るくない分野の検索ワードを得るのに最適な、かのWikipediaによると──
ZINE:少部数で自主制作された出版物で、文字と画像で構成されていることが多い。一人もしくはごく少人数のグループで作る。~中略~ ある分野の愛好家が自分の趣味趣向を他の人と共有し楽しむために制作される。(引用:Wikipedia「ZINE」/ざっくり英訳)
同人誌:同人(同好の士)が資金を出して作成する、同人雑誌の略語。(引用:Wikipedia「同人誌」)
困った、違いがわからない。
五秒くらい困った後、「つまり同人誌を作るノリでやっちゃってイイってことですね」という結論に至りました。
さすがにガバ理論かなと思い、ZINEについてもう少し深掘りしてみたのですが、「ZINE(同人誌、ミニコミ、リトルプレス)」という表記が散見され始めたのでそっとブラウザを閉じた。
有識者各位、もし明確な定義とかご存知でしたら、こっそり教えてくれると嬉しいです。
さて「いつもの同人誌と同じノリでやっていく」と方針が決まったところで、実際にZINEを作ってゆきます。
仕様を決める
今回の企画、持ち寄るZINEの条件は以下のようになっていました。
・好きな人に振られ、から書き出す。
・140字~2000字くらい(ゆるい)
・基本は新書サイズ以下(ポストカードラックに差して展示できる大きさで)
・納品部数:50部
参加を決めた段階で、当日まで十日を切っている。コンビニコピーが楽か? いや50部も切って折ってしてたら、わくおたパックの原稿が落ちる(制作が間に合わない)。
ならどうする?
そうだね、おたクラブさんの翌日引取だね。
「おたクラブ」さんは、少部数が安い、なのにやたらと印刷が綺麗なことで有名な印刷所さんです。
しかも翌日引取というプランを使うと、超最短で完成品を受け取れるのだ。
お引取り予定日の午前10時までにご発注とご入稿を頂いた場合
弊社側でデータチェック→製造までを一貫して行い、完成後にご連絡を差し上げますので、商品を店頭にて引き取ることが可能です。
(引用:翌日引取について)
サイズは新書以下、となるとA5フライヤー・ペーパーのプランで両面印刷した紙を半分に折って、A6文庫サイズにするのが一番らくちん。あっ、タブロっていう新聞紙に似た質感の紙が使えるんだ。それってすごく「MagaZINE(雑誌)」っぽい。紙はソレにしましょう。
フルカラー原稿を作ってる暇はないからモノクロ印刷で……あれ? モノクロも単色インクも値段一緒じゃないですか? わーい単色にしよ。タブロが薄い青みの灰色だから文字色も寒色系がいいナ(おたクラブさんの印刷見本をめくる)、よし紫紺で。
次は文字数。
文庫サイズってことは、私の文体だと1ページに400字~500字くらい入る。調整にあまり時間をかけられないから、文字数はちょっと足りないくらいで書くのがよろしかろう。
繰り返すが調整にあまり時間をかけられない。楽しげな企画につられてうっかり〆切が増えたが、実はこの人、別原稿の〆切にも追われているんですよ。
そんなわけで、ZINEの仕様はこんなふうに決まりました。
【仕様】
・A5タブロ紙両面印刷、単色紫紺
・800字~900字くらい
物語を書く
今回は「好きな人に振られ」で書き出すという縛りがあります。
まずはテキストエディタを開いて、「好きな人に振られ」と書いてみる。
「振られる」「振られた」「振られるとき」「振られなかった」「振られそう」etc.
10個くらい出したあたりで、ピンとくるものが出てきた。そのまま書き進めてゆきます。悩まない、捻り過ぎない、欲張らない(自戒)。なぜなら時間がないからだ。
体裁を整える
書き上がったので、体裁を整えていきます。
まずは今回印刷をお願いする「おたクラブ」公式HPから入稿データのテンプレートをダウンロードする。今回は両面印刷なので、「うら.psd」「おもて.psd」の2つのデータを作ります。
裏面データにテキストボックスを作り、さきほど書いた小説を流し込む。一行の文字数と行間をなんとなく整える。紙の中央は他の場所より一行多く開ける。ここで紙を半分に折るからね。
表面データにはタイトル、筆者名、ちょっとした周辺情報(TwitterIDや筆者の簡単なプロフィール)を。
小説のモチーフに合わせてフリー素材を探し、タイトルの下に置く。小説側の空きスペースにも、同じシリーズの関連素材を配置する。データをガッと25%くらいに縮小して、全体のバランスを見る。ちょっと直す。
できた!
印刷所さんに発注する
「おたクラブ」HPで製品、紙、インク、部数を指定してカートに入れる。ブラウザからデータをアップロードして、決済。データチェック完了メール、のち製品完成のお知らせメールを受信したら、あとは店舗で受け取るだけです。
このとき、わくおたパックのデータも一緒に入稿しています。なぜなら〆切がギリギリだったため……。
受け取る
店舗へ出向く! 受け取る!!
やった~~~!
写真では伝わりづらいのですが、紫紺インクがタブロにめちゃ映える。細かい文字の輪郭もくっきり、美しい!
会場で「印刷綺麗ですね~」と複数の方にお褒め頂いたので、最後にもう一度推しておきます。
少部数ならおたクラブがオススメ。
おたクラブがおすすめ。
おすすめだぞ!!
折る
こつこつやる。
タブロはざらざらふわっとした紙なので、きっちり押さえつけないほうが、かえって可愛らしいかもしれない。
伝わるだろうか、ざらふわ感。
当日(一日目)
会場の吉祥寺ハモニカ横丁チャレンジマルシェに、折ったZINEを持ち込みます。当日はあいにくの雨でしたが、午前中~午後早い時間はぎりぎり小雨でした。
ポストカードラックにZINEを入れてポップをつけると、こんな感じ。
ネコチャンが隠れてしまったので、あわてて補足の宣伝ツイート。ポップのこと考えてなかったな……。
これが参加者分揃うと、こんなふうになります。
た、楽しい~!!
わさっと集まった小さな紙たち……愛……。
一般のお客様は入場料500円で7冊もらえるのですが、ZINEを納品した人は同じく参加費500円で10冊もらえるのです。参加したほうが絶対オトクなイベントってわけ!
当日(二日目)
私のやることは終わっているのですが、あの楽しげな場をもう一度見たくて会場へ。
主催さんや他の参加者さんとちょっとしたお喋りをして、なんとなく撤収のお手伝いをして帰りました。「ZINE読みました。面白かったです!」と言って頂けて、ウフフと笑みがこぼれました。ウレシイ~! 自作を褒めて頂くことによってのみ摂取できる特別な栄養素がある。
物語のブッフェ
今回の「横丁ZINE文学フェスタ」は、ZINEの販売ではなく「交換」をするイベントでした。
作品を販売するときって、やっぱり「できるだけたくさん捌けるように」「多くの人が手に取ってくれるように」工夫をするんですよね。
そして買う側にまわれば、どうしても「面白いと知っている」、もしくは「ぱっと見で惹かれた」作品を手に取ってしまう。
でも今回、お金がかかるのは入場するときだけ。作品ひとつひとつには値段がついていないんです。そうすると、不思議なことに「よくわかんないけど冒険してみるか」と、タイトルも何も自分の琴線に引っかからない、未知の作品を気軽に手に取れる。物語のブッフェ。食べ放題って何故か、見たことのない、味も想像できないようなモノほどお皿に乗せちゃったりしませんか? あんな感じ。
そういうのに限ってびっくりするほど面白かったりするんだよなあ!
なんだか、幼稚園とか小学生低学年くらいの頃の読書体験を思い出した。まだ読んだ本の総数が少なくて、「本を読む人としての自我」が形成されていない頃の、目についたものをなんとなく手に取る読書。
私のZINEも、普段ああいうの絶対読まないような人の元へ渡っているのかしら……と、楽しい気持ちになりました。
Thank you !
改めて振り返ると、参加を決めてからイベントが終わるまで、今までにない楽しい時間を過ごせました。いつもと違う読書体験ができたし、可愛いタブロ紙をいっぱい折れたし。
「ZINEってなんかもっとおしゃれ感ある人々が作って小粋な雑貨屋さんとかで委託販売してるアレじゃないの~~???」ってイメージが覆りました。折れば本だし、プロっぽい人も初めて本を出した人もいるし、読者から直接感想を伝えられると舞い上がるくらい嬉しい。ZINEイベ、ほとんど同人誌即売会。だけど、きっと同人誌即売会とは少し違った体験ができます。
同人誌しか作ったことなくても大丈夫。あなたも、どうぞ臆せずZINEイベに参加してみてください! 楽しいぞ!!
今回あまったZINEは、上記の本屋さんで不定期販売されるそうです。
私の手元にも少し残っているので、先着順ではありますが、やまおり亭の新作『杯傾ける縁側』を通販でご購入くださった方にもお配りする予定。
(白壁庵の主人がちらりと登場しています)
短編をイイ感じに印刷した小さき紙、自作ながらはちゃめちゃ愛おしくなります。お手元に短いおはなしがある方は、ぜひ印刷して愛でてみてください。
そして、もしよろしければ、「おたクラブ」さんでちょっと可愛い紙に印刷してみてください。(なんどでも推します)(推しなので)(いっそ経営が心配になるくらい印刷費が安いため、みんなも気軽に刷ってほしい)
さて、初めてのZINEイベントが無事に終了しました。終了しましたが、すでに次の創作短編ZINEを作りたくてうずうずしています。
次があれば、絶対また参加したいです! ありがとうございました!