俳優エピソード本「#テニミュ出てない人あるある」
これは僕が芸能事務所に所属していた若き日のお話。その日は珍しく担当マネージャーさんに個別に呼び出された。そんな事はなかなかなかったので、なんだろうと思って向かってみるとマネージャーさんは真剣な顔をして、しばらく僕を見つめた後、静かにこう言った。
「山岡、お前、坊主にできるか?」
何か重要な坊主の役があるんだと察した僕はすぐさま「はい!」と答えた。
そして返ってきた言葉は
マ「出るぞ。テニミュ。」
僕「え、、テニミュってあの漫画の?」
マ「そうだ。テニスの王子様のミュージカルだ。」
僕「えーすごい。何の役ですか?」
マ「南米帰りのお前にぴったりの役だ」
僕「誰ですか?」
マ「ジャッカルだ!」
僕「ジャ、ジャッカル?」
マ「準備しとけ!」
僕「は、はい!!」
マネージャーさんは、ニヤリと誇らしげな笑みを浮かべて立ち去って行った。
あとでジャッカルという僕がエントリーされた役を調べてみたら、顔の濃い黒人系の留学生らしき役だった。僕は顔の薄い日本人。どうしてこの役でいけると思ったのだろう。似ても似つかない。南米帰りだけを武器に丸裸で戦場に乗り込むマネージャーさん。結果はどうなったかと言うと、10年が経ち、未だ書類審査待ちを続けている。スケジュールはいつでも空けられる様にしてある。ちなみに同じノリで、出演がほぼ確定であると伝えられ、今も書類審査待ちを続けているドラマは「ごくせん」。撮影がすごく楽しみです。どちらも準備は充分すぎるほど出来ていて、もはや準備が通り過ぎてしまっているほどだ。僕の戦いは続く。
※こちらの文章は、山岡竜弘のエピソードトークを書き起こしたものです。実際に話し続けているうちに、尾ひれはひれがついて、もはや原型を留めていません。当時を知っている方は個人連絡にてご指摘下さい。
※登場人物の名前は全て偽名です。これらのエピソードを集め、いずれ製本して、一冊の本にする事を目指しています。製本の際は、全登場人物をご協力下さった方々のお名前にしたいと考えています。
※映像化、漫画化したい方がいらっしゃいましたら、僕までご連絡下さい。
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