売り場面積とオンライン販売と
昔から取ってあったトレーディングカードを中野のブロードウェイに売りに行った。カード専門店を二軒回ったが売れなかった。理由は、「お値段がつけられません。」「もう売れないんですよね。」だった。諦めかけたが、メルカリで出してみたら、すぐに売れた。
このカード専門店の店主が言った「売れないんですよね。」この言葉を紐解いてみると、「売れない」=「価値がない」という意味ではない。店主の言う「売れない」=「当店では、この売り場に置くコストに対して、この手のカードの売り上げがあまり伸びない為、当店では取り扱わない方が賢明だと思うので、いらないです。」という意味であって、そのカード自体の価値が失われきってしまった訳ではないという事。
店舗には、敷地面積に限りがあり、物を置くのには物理的な限界がある。そして、中野のその店を目掛けて全国から訪れる人が、毎日大勢いる訳ではなく、"店舗での"売り上げを元に、取り扱うものを慎重に査定して、通過した物だけを置く。
対するメルカリ、ないしは、ネット販売には、敷地面積も店舗を訪れる時間や労力もない。そして、全国、全世界から、ピンポイントで欲しい人を見つけ出す機能がある。インターネットの普及、ネットビジネスの向上により、欲しい人と売りたい人をマッチングさせる事が可能となり「誰でも最高の一品に辿り着ける様になった」インターネット上には無数の個人商店が並ぶ。探しているニッチな商品に、ボタン一つで辿り着ける。
カードが地方の方に売れた時に、これらの事に実感を持てた。
最近は、ジモティーも積極的に使って、欲しい人とあげたい人のマッチングのデータを足を使って取っている。手渡しで行われるマッチングの瞬間に立ち会う実感は言葉や文字だけでは得られない学びがある。
役者にも言える事。
言葉は汚いが、役者は掃いて捨てるほどいる。本当に沢山いる。そのほとんどが、芸能界の仕事を取りに行っている。これが先ほど述べた店舗にカードを売りに行く事に似ている。店舗はぎゅうぎゅう。店舗では時代にあった売れるものしか並べたくない。
でも、そこに並ばなかったものには、本当に価値がないのだろうか?
地方や海外に、お金を出してでも、店舗に並ばない商品を欲しい人はいないだろうか?
モンゴルの奥地に住む無名の少年が吹く口笛のCDがあったとして、店舗に置けなくても、ネット上で絶対に売れないと言い切れるだろうか。
そんな事に気が付き、「今、売れていない僕には、本当に役者としての価値はないのだろうか?」と実験してみたくなったのが一昨年。舞台をお休みして、ネットだけを使って年間100本オーディションを敢行。ネット市場で自分を売りに出してみた。地方の人がカードを買ったのと同じように、店舗に並んでいなくても、ネットの先にはその魅力を見出す人が世界中に潜んでいる可能性がある。僕の出演作に海外作品が続いた理由はここにある。
物置の奥にしまわれ、カード専門店がいらないと言ったカードは今地方で欲しい人の手に渡り、お金を支払われ、喜ばれている。
売れない。売れたい。という言葉をよく聞く。
だけど、まだまだ欲しい人は世界中にいると思うんです。売りに行こう。ネットがある今、役者個人や役者の発想、役者の商品は可能性がある。世界中の全員に会って「いらない」と言われたら、その時は潔く諦めよう。と思ってる。
飲食業界には、ぐるなび、食べログがある。美容師業界には、HAIRという美容師個人が移転しても勤務店が表示される個人にフォーカスを当てたポータルサイトがある。各種業界に個人商店と買い手を繋ぐ総合サイトがある。
役者がもっともっと欲しい人に出会える、役者のスキルがもっともっと誰かの役に立てる役者専門アプリ製作に興味があるんですが、今度、アプリ開発の方に会いに行ってみます。
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