その街を知るために夜中の酒場に行く話【こだわりの習慣】

昔からなるべく働く場所に近いところに住むのが好きだった。それで、転職するたびに引越し先を探していた。
なんども引越し先探しをするうちに、住む家も大事だが住む街がそれ以上に自分にとっては大事なことに気が付いた。夜帰ってきたときのワクワク感が違う。朝起きたときの清々しさが違う。生活の活力が変わってくるのだ。

そして、そういった街の魅力を効率的に確認するためにたどり着いた手法が「夜中の酒場」である。終電前の時間における酒場の賑わいは街の違いよりもその店の違いが色濃く出る。ところが、12時を過ぎたあたりから、店内にいる者のほとんどはその街に住む者と近隣の飲食店で働くような「街の住人」で占められる。そんなときの酒場に流れる空気にその街の味がにじみ出ることが多いのだ。

そんな、街観察を繰り返す中で、私の街を見る目もだんだんと視点が定まっていく。それはまとめれば下の3点になる。
1.一見客に対してオープンかクローズか?
要は、内輪ノリの強さであり、逆に公共感覚の強さでもある。ただ、単に一見客を大切にするとかとは違う。理想は、客が一見か常連かとは無関係に鋭くその客の人物を見抜き、面白いと思えば面白がり、そうでなければつまらんとするような、なれ合いがないにもかかわらず人肌感のある関りである。
2.見慣れぬ文化や感性、価値観に対する好奇心は強いか?
面白い街は混とんとした文化の錯そうがあり、それぞれが生き生きと脈づいているそんなかつての香港やオランダのような魅力があるのだ。
3.人生を直接楽しもうとしているのか、「そのためのなにか」に対する意識しか働いていないのか?
「そのためのなにか」とは例えば資産や年収の多寡であったり、勤める会社のブランドや知名度であったり、着ている服やバッグであったり、美貌度であったり、著名人にどれだけ知り合いが多いかとか業界での影響力の大きさだったりする。そういったものに心が奪われ人生そのものを楽しむ余裕を失った人々の多い酒場ばかりの街はつまらない。

ふと気づいたことがある。考えてみればある会社の魅力を見抜く際もやっていることは同じだった。ひょっとしてこれが今はやりのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という要素なのかもしれない。

#明日のライターゼミ

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