うっせえ、俺が「世界観」だ。 _#5 不都合 (つどう)
#だからそれはクリープハイプ
更新日: 2023/04/09 (締切4月10日まで加筆する)
#5 不都合 (つどう)
ベーシストは変えたかった。彼は明らかにボーカルを希望しており、同時に華やかさを備えた彼はとても邪魔に思えた。クリープ・ベーシスト長谷川さんは妖美な雰囲気の持ち主であるから、問題はクリープ以外の曲を強く歌いたがることだった。ぐずぐずやっていると、彼の方から新しいバンドを作り、脱退した。ところで関係のない話だが、彼とはまだ仲良くやっている。
僕と塩見のクラスメイトに一日中ペン回しをやって過ごせる猛者がいた。休日朝に回し始め、気付いたら夜になっているのだという。僕は彼、高橋くんに対し「一日中ペンを弄るより、ベースを弄っていた方が面白いよ」と言い寄る。どうやらそれが効いたようだ。彼は一日中ベースを触るようになる。彼を幸福にしたはずであるから、感謝してもらいたい。同時に、空きになったドラマーの代わりも必要であった。超高音を歌うロックバンド男性ボーカルと言えば、クリープハイプ尾崎さんともう一人存在する。そのもう一方のバンドが好きな原くんを見つけた。彼を上手く騙し、大して興味が無いらしいドラムを任せた。ちなみに、後に多少のトラブルとなる。
高校3年生になると、生徒はみんな受験モードになる。いや、4人とも浪人した話は置いておくが…。できるだけ早くライブをやっておきたかった。僕らは「五校戦」に参加を決め、そしてまた「合同ライブ」を企画した。五校戦は少々歴史のあるイベントであり、地元の高校5校の軽音楽部が集まり、ライブを行う。一方、五校戦を参考に、我が部活内の1年生から3年生を集め、ライブを行うことにした。それが、合同ライブである。事務的な役はすべて原に任せた。適役だった。彼は公務員になった方が良い。
学校の中ではクリープハイプのコピーをやっていることで、若干名が知れていた。あの声で練習していると目立つのだ。ちょっとしたファンもいた。元々クリープハイプ好きだったのだろうが、少し気にかけてくれる生徒がいた。その子とクリープハイプが載っている雑誌を共有していたのだが、その現場をみんなに見られてしまい、クラスがどよめいたことは秘密である。また、彼女というものもできた。興奮した。いや、その意味ではない。これで、ロックバンドらしくなる。
… クリープハイプは尾崎さんだけがボーカルではない。長谷川カオナシさんもベースやキーボード、バイオリンを弾きながら歌う。彼の曲がこれまた不思議な世界観である。童謡のような優しさに、カオナシのような暴力的な側面がある。また、尾崎さんが高音を歌うので、長谷川さんが少し低い音となり、まるで男女二人のデュエットである。これは新鮮だ。
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