産業保健に役立つ眼の話(産業医学推進研究会セミナーの個人的なメモのまとめ)
産業保健の勉強に邁進中の理学療法士(第一種衛生管理者・健康経営アドバイザー)の山川青空海と申します。将来、企業の従業員の筋骨格系症状・転倒予防を中心に「予防に貢献したい」という想いの元、活動しております。
本日は2025/1/25 日本産業衛生学会九州産業医部会 産業医学推進研究会 人間工学会 共催の産業保健セミナーの講演で眼科医をされている村上先生の講演の「産業保健に役立つ眼の話」について私がメモ用紙に殴り書きしたものを共有致します。
私も初めて眼科領域の話を聞いたこと・全部メモできる訳もなく個人的に関心が高かった箇所の紹介になります。あくまで参考程度にご覧いただき、詳細はご自身で調べてご確認ください。
視野:目を動かさない状態で見える範囲のこと
「人間は周辺視野で見たいものを発見→中心視野で解像度を高くして捉える」この一連の流れを繰り返している。
視野の補填現象:実際は視野が欠損していても、人間は欠損している箇所を補填する形で視覚映像として捉えている。つまり、本当は視野欠損していても自覚できない場合がある。
ex)お城の景色→視野欠損(ex.お城が映る部分が欠損)していると本来であればお城が欠損している映像として認識されるはずだが、周りの背景情報(今回の例えでは空)から本来視野欠損している部分(お城が映る部分)を空だと認識するような働き。
羞明(しゅうめい):光を当てた際に目がチカチカする現象。眼科検査では診断できない症状。眼科で遮光眼鏡を処方する必要がある。
眼外傷の対応:10分以上、流水で目を洗って、早急に眼科救急を受診する。※特にアルカリ性の化学物質が目に入った場合は流水で目を洗う際に眼球を左右上下に動かしながら念入りに洗顔する必要がある。
講演後、産業医の先生が工場に設置する流水場などで配慮することについて質問されており、流水の強度は強くなくて良いとのことでした。昔の小学校に設置されていたプールが終わった後に流水場の強度は高すぎる。むしろ、あの強度だと涙液が不足し目が乾くため逆効果だとお話されていました(自分も小学生の時、めちゃくちゃ苦手で避けてのは間違いではなかった)。流水場を設置する必要なく?(記憶がうる覚えです)、2Lの生理食塩水を常備し、それで流水するのが良いとのことでした
電気性眼炎:強力な光刺激で目に痛みを生じる。例えば、溶接作業で防護具をきちんとしておらず、直接的に、溶接時の光を見た際に生じる。光刺激が発生した瞬間に症状が出現せず、刺激から6時間後に発現する。対応としては暗い所で休んで目に負担をかけないようにするなどの対応する。
色覚異常:本来の色とは違って見える状態。例えば、色覚異常により、夜中の信号において緑色と赤色の識別ができないなどの問題が発生する場合がある。
眼精疲労:頭痛・吐き気・首肩の痛みが出現し、休息をとっても解消されない状態のこと。眼の酷使で生じる。主に3つの原因で発生する
①ドライアイ:涙液不足が原因。レーシックの術後の方はほとんどがドライアイとなる。治療は点眼薬など。
予防策
・パソコンの画面を目線よりやや低めに
・エアコンの風が直接当たらないような環境設定。湿度を高く保つ。
・瞬きを意識して行うようにする
・原始的だが、目を温めるのが効果的。あずき豆のやつとかでよい。朝夕1回ずつ行う。
②メガネの度があっていない:コンタクト屋さんでなく、眼科でしっかり確認してもらうこと。
③斜視:睡眠不足で悪化する。手軽な確認方法としてスマホカメラでフラッシュを焚いた状態で顔を撮影する。フラッシュの光が黒目の中心にきていれば正常。光が黒目の中心からずれていれば斜視と判断する(後で質問した際には詳しい人に写真を見てもらった方が良いと言われていたので、素人判断は難しいのかもしれません。)
簡便にできる眼位の診察はカバーテスト:前方を見た状態で、片方の目をカバーで隠し、カバーを外した時のカバーで隠していた眼の動きをみる。眼の動いた方で斜視の分類ができる。眼位の異常は適切なメガネの装着が大事。
視覚障害の分類
①緑内障(40%)→治療可能。視野欠損が生じる。40歳以上で徐々に発症してくる。
産業医の先生の質問で「眼底検査などを行った際に緑内障が疑われるようなケースを受診勧奨し、受診に至ったが特に問題がなしと言われ、次年度も疑われる場合はどうすればよいか?」という質問があり、リスクファクターとして近視・高血圧・家族歴・喫煙歴があるので、このどれかを有する場合はもう一度受診勧奨してみては?と返答されていました。
②網膜色素変性症(13%)→治療が確率されていない
求心性視野狭窄が特徴。
ex)ストローでのぞいたような視野になっている→文字などはきちんと見えてるので視力検査では異常なし。周辺視野が極端に悪くなる
明→暗 暗→明の順応が遅い 暗い環境で特に見えない
ex)星が見えない・花火を渡されても掴めない
③DM性網膜症(10%)→治療可能
④黄斑変性(9%)→注射などの治療がある
加齢黄斑変性:リスクファクターは喫煙と紫外線
動的な眼の能力の評価:一つとして、読書速度の評価がある。正常であれば1分間で350字読書可能。100字以下で異常と判断する
高齢者の視覚特性:青色が見えにくいという特徴がある
→道路の標識が見えにくかったり、信号が見えにくくなる。
就労現場での視機能の評価:普段から着用しているメガネを行うようにすること。また、日常生活を送る上で両眼視力で0.7以上に見える状態で生活を送るよう指導する。就労現場では視野の評価が困難であることが課題→視野評価が移動能力に与える影響は視力評価の7倍とされている。
個人的には眼精疲労に関しての原因や対策の整理がついたのが収穫で、斜視が関係しているとは知らず、評価の仕方も勉強になりました。
この記事が産業保健に携わる方々の少しでもお役に立てば嬉しいです。
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