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【#一分小説】適音《第六話》

 熱を冷ます事が、もはや目的となりつつあって、人と関わりたい、人と交わりたいなどという妄幻を振り払うことに腐心するばかりである。

 例えば、この雨の折にも出現する、傘立てストゼロ置きオヤジ。傘立ての穴に入れてあった自分の傘を取り出す際に、そのストゼロを倒そうものなら、そのオヤジは自分の酔いに任せて、私をタコ殴りにしようと試みることだろう。それだけでも、この人生に辟易してしまうこともあるのだ。

 さらには、皆様ご存知『ロンハーサシ飲み無断帰宅事件』。
 これに関してはその瞬間の記憶が全てスッポリ飛んでいるので詳細を語ることは控えたいが、なんとなく。
 「そのとき」の直前までで覚えているのは、私が魚骨しか残ってない粗汁の入ったお椀の中身を無心にかき混ぜるという作業をしていた。
 そうして気がついたら、某ホテルの一室の椅子に、風呂かシャワーを浴びた直後のようなバスローブ姿で鉛ばりに沈んでいた。
 聞くところによれば、用を足す振りをして、ロケ先の居酒屋の厨房裏口から出て行ったらしかった。

 FUNして寝て待てとでも。

(つづく)


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