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【#一分小説】適音《第十一話》

 「指宿マーチ」の流れる季節になってきたが、この曲が「四つんばいのブルース」として、一人の女性シンガーソングライターによって作られたことは、あまり知られていない事実。

 曽根崎清美は、親友が男にされた数々の仕打ちを見聞きし、「四つんばいのブルース」を書いた。テレビでサザエさんが流れる頃にこれを書き始め、一睡もせず書き上げたときには、その次の週のサザエさんが終わるところで、曽根崎が「サザエさんが1日に2回もジャンケンしてる」と錯覚したエピソードだけは周知の通りだろう。

 ところが、いつの間にやら「どどんかどん、どどんかどんどん」ブルースとも、マーチとも似つかわしくない歌詞から始まる曲に変貌していった。一体なぜか。

 そして、曽根崎は「路上ブルースシンガー」から「バッフンおねえさん」として、結婚式余興界を席巻するまでに至ったのか。

 私は、今までそれだけに心血を注いで調査していたのだが、突然、委員会から調査費打ち切りの一報が入ったのが、今朝の事だった。

(つづく)

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