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【#一分小説】適音《第十三話》

 体がとにかく熱い。
 体内の血液がマグマのように這いずりまわっているのがハッキリと感じられる。
 しかし、しばらく目をつぶり観察してみると、それは南国の吹き抜ける風を全身に浴び、流れにまかせて漂えるような程心地よかった。
 もしや、私は、いや、私こそが、太陽なのだ。私自身がこの宇宙を照らし、命を萌やし、中心に鎮座しているような思い上がりさえ成り立つような気にさえなるような錯覚を抱いてもよさそうだった。
 というわけで、そのような、つらつらとした説明をしたくなるような意味で「あったかい」と独り言を言った。

 「あったかいのにゃあ。」

 …………時間が止まったか、大分流れたかのどちらかだったのだろうか。
 ――あったかいの、にゃあ??――
 にゃあ、とは何だ。そんな猫の化け物みたいな声を上げて、何をつまらない悦に浸っているのか。
 しかし、そこからまたおもむろに傍の姿見を覗き込んでみた。
 ――何だ?この大猫は???――
 その姿見の中の大猫は、驚いた表情でこちらを窺っている。
 ――どうする?話しかけてみるか?――
 寝ぼけ眼の中、半ば絶体絶命感漂うより先に、無意識に声が出ていた。

 「にゃあー。」

 …………………………。

 「にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ、…………にゃあーーーーーーーーー。」

 ついに私は観念した。
 私は一寝入りしているうちに、どこかの拍子で夢と現実がワヤクチャになり、体長2mは優に越える化け猫へと変貌を遂げていたのだ。

(つづく)

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