#創作にドラマあり
自費出版挑戦者に福音
3
第四回
これまで扱ってきた生原稿(既刊本含む)、そのほとんどがこのような書き出しになっている。
自伝・自分史だからこの書出しは正しい。
自分の歩んだ道程を記すのだから先ず自己紹介から始まり、順序を追って書き綴るのは当然だ。それで、著者のみならず自伝づくりに携わる者は、このやり方を疑いもなく当然のこととしてやってきた。謂わば、自伝・自分史づくりの正道といえる。
こうして作られた本は、その出来栄えも立派でケチのつけようがない。書いた本人も満足。印刷業者・出版社も能事足れりということで代金を貰う。一応成功裡に出版祝賀会となる。
★ところが、ここからが問題なのだ。
著者は得意満面で各所に寄贈したり、場合によっては知人・友人に買ってもらう。が、その先までは予想がつかない。何十年もこの仕事をつづけてきた私の感想だが「殆ど読まれていない」という実際がある。
多額のお金を払って出版した立派なハードカバーの自伝。書いた本人は、皆が読んでくれていると思い込んでいる。ところが実際は本棚の隅っこにきちんと行儀よく納まっていているだけ。これが、一般的な出版数(百冊余り)ならまだ救われる。ところが、出版社のなかには常套的甘言、「これは素晴らしい! もしかすると作家になれるかも!」と作品を褒めちぎり、作者を高揚させ、多量の本を作ってしまう例が多い。
はっきり言って、余程のことがない限り個人の自伝は売れない。今の時代、プロ作家でも返本がでる。
それで、出版社から戻された返品の山を見ることになる。
数年前のことだが、
「狭い家に山積みされた返本の山を毎日眺めることに耐えられなくなった」
といって、自分史の著者(甘言に乗っかって自費出版した人)がわたしの事務所に来たことがあった。
「○○出版社で、言われるまま多量の本を作ったが、まったく売れない。何とかしてほしい」
と泣きついてきた。わたしは即座に破棄処分をすすめた。どうにもならないからだ。
これらを見聞きするたびに胸が痛む。
私は、伝記や、それに類するものが好きで、商売プラス趣味の境地でこの仕事をしている。魅力は何と言っても(本当にあった人生劇)という最高の舞台だ。
そこで、これから自分史をつくりたい方々に「安全・安心の自分史出版」の手段として先ずは電子書籍出版から始めることを提案する。
電子書籍のメリットは、自分の書いたものが適正に評価されることだ。そこには悪徳業者の甘言もない。良いか悪いかはデータとして示される。
当編集室では出版先をAmazonKindleにしている。Amazonの電子書籍サイトに書籍をUPしておけば自動的に全世界に向けて宣伝してくれる。もう一つメリットとして出版が紙本出版の一割程度で可能となることだ。この意味では自費出版・自分史挑戦者には福音といえる。
そこで当編集室では現在下記に掲げるチラシを作成し、地域を選別して6万枚ほど新聞折り込みしてみた。結果、現在多くの手応えを得ている。
このチラシは画像が小さく読みにくいと思われるので書き出してみる。
●チラシタイトル……【自費出版に警鐘 ご当地から世界へ発信――自分史をアマゾン電子書籍で――】
●内容……★その前に、自費出版に関する国民生活センター発表のトラブルデータを転載します。(転載文……太字)
★自分の書いた詩や小説、自分で撮影した写真などを本にまとめたいという人が、自分で費用を負担して本を出版する自費出版に関する相談が増加している。
自費出版に関する相談は「自分の作品を褒められて、気持ちが高揚して契約したが、あとから考え直して解約したい」「出版の契約がきちんと履行されない」などがある。自分の作品を出版することに興味を持っている消費者が、事業者の主催するコンテストに応募したり、広告を見て問合せをするなど消費者のアクセスが契約のきっかけとなっているケースが多いが、事業者が作品を褒めて消費者の気分を高揚させて勧誘している場合も少なくない。消費者は、出版に関する知識が必ずしも十分ではないため契約するにあたっては注意が必要である。
【以上、国民生活センター広報の一部抜粋】
※なお、同センター別記データを見ると、被害相談の半数以上が女性となっている。
激安出版などとネットなどで広告している業者に自分史原稿を見せると異口同音「これはスゴイ、素晴らしい。全国の書店に並べるとベストセラーになるかも!」などと大量出版を促す甘い言葉が返ってくる。――要注意だ。
●チラシ2段目小見出し……【編集室より】
無名の一般人が、自費出版(自分史等)でベストセラーになるかも? などという甘言は、宝くじで高額当選するようなもの。つまりは余程の内容でない限り見込み無しだろう。にもかかわらず業者は巧みなセールストークでおだてあげ客を夢の世界へと誘導する。決めゼリフは『全国の書店に配本するため大量の製本が必要』とくる。 自費出版は原則全額前払い制であるため確実に利益を生むからだ。
トラブル実例としてブログやツイッターをはじめホームページなどで繰り返し注意喚起してきた。その実例を紹介。
――初夏のある日一人のご婦人が事務所に来た。話を聞くと「広告で見た大手出版に電話した。そこで先方の案内を聞き自費出版を依頼した。その結果【出版後全国選り抜きの書店に配本したが一冊も売れなかった。私共も精一杯頑張ってみたが駄目でした。それで、今回出版した書籍を引き取って欲しい。】と連絡が来た。「今、我が家には大量の返本が山積みです。何とかならないですか」と泣きついてきた。私は「今更どうにもなりません。破棄する以外方法はないでしょうね」とお答えした。
このケースでは、出版契約書の類いはゼロ。口約束の契約だった。結果として[百数十万の高額な夢]を見ただけだった。
私はこれまでSNSなどで発信してきた事だが、現在社会はスマホゲームや無料ライン全盛時代だ。最早一昔前の〝行間を読む〟などという言葉さえ死語になっている。活字を読みその情感を味わう時代は過去のもの。正直、プロ作家の著作でも返本が出る昨今。
それでも「何とかして自分の足跡を残したい」という人が居る。自伝を本職としているものにはありがたい事。それで[安心・安全の自分史づくり]提案を続けている。
編集室では必要経費のみで約四十年間やってきた。一昔前の全盛期と違い現在では「電子書籍出版」が急速に広がりをみせている。これは自分史愛好家には福音だ。何故なら安価で自分の作品を全世界向け発表し、評価してもらうことができるからである。
次は第五回へ……
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