初心者の自費出版、自分史の書き方

初心者の自費出版、自分史の書き方

第二回
★これは書き方講習会用に作成したものです。

【読んでもらえる自分史とは……シナリオ的自伝表現】     
 この稿は。読んでもらえる確率の高い書き方です。
 書く事は考えることで、特に青春期の回想などを繰り返すことで脳回路が活性化されます。その意味でも、有意義な人生を過ごすことができるのではないでしょうか。

 それでは、はじめましょう。
 私の書き方は、この後書く予定の「改訂復刻版」でもご説明しており重複しているところもありますが、先ずお読み頂ければ幸甚です。
 
★これは、私が4ヶ月間毎日現地取材し併せて主人公にも克明に語ってもらったテープ40巻をもとに最大限真実描写することに重きをおいて書いた児童向け図書です。国立国会図書館納本(400字詰原稿約500枚)

【物語全体の最初の部分】
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 台風の季節がきて雨が多くなった。本宮村のまん中を流れる音無川の水かさも、すこしずつ増えてきた。この時期には、川の流れを利用して、山奥から木材を運び出す刈川という作業が多くなる。松一の出番だ。

 その日、朝早く、松一は仕事仲間と一緒に、数週間の予定で山に入った。家には、母もとゑと要、おさむ、祥子、それに公がいた。

 日中に降った雨は、夕方にはあがっていたが、空には一面黒い雲がはりついている。風もなく、爽やかな秋には、につかわしくない、むし暑い空気がただよっていた。

 要は、竈の口で、火を起こす。きのうまで父が座っていた場所だ。おさむは、納屋から薪を抱えてきて、竈の横に置く。妹の祥子は、奥の四畳半で公とあそんでいる。もとゑは、流し元に立って、茶粥の用意をする。それぞれがささやかな、夕げの支度にかかった。

 終戦からまる二年が経って、中岸家の財政もすこしは、もちなおしていた。母の神経痛も発病当初からみれば、かなりよくなっていて、以前のように藁草履作りがぼちぼち出来るようになっていた。
 それに加えて、父松一の仕事もだんだん増え、バクチを止めたこともあって、その分のお金が家計をうるおすようになっていた。だが、約二年にわたり嫌な顔一つせず、掛売をしてくれた請川の食料品店をはじめ、他の店にも借金がたくさん、たまったままだった。その支払いを少しずつすることで、あいかわらず、電灯がつくところまでは程遠かった。

 おさむ(主人公)は二荷めの薪を取りに外に出た。秋の日は暮れるのが早く眼下の大川がほとんど見えない。
 そのとき庭先に一人の黒い影が、いきおいよく現れた。急いで石段をかけあがってきたのか、荒い息づかいだ。手に懐中電灯を持っている。おさむは、それを見て、村の人ではないな、と思った。村の人は提灯を使っていたからだ。

 黒い人影が足早に近づいてきた。つぎに、その正体が確認できた。
――警察官だ。
「ケイサツ、きたぞ!」
 おさむは、家の中に飛び込んだ。母と要が顔を見合わす。一瞬動きが止った。
「御免!」
 懐中電灯を灯し黒い人影が土間に立った。これまでまったく縁のなかった警察官のおでましだ。
 要はもとより、おさむも、こんな近くで警官と向い合ったことは初めてだ。祥子も驚いた顔で警官を見つめる。

「中岸もとゑは、おまえか」
 警官は、それほど大声ではないが威厳のある口調で、台所に居る母にいった。
 彼女は大柄で、一見気丈夫そうにみえたが、たいへんな怖がりだった。それで、いきなり警官が飛び込んできて、自分が名指しされたことで、立っているのがやっとの状態だった。
 もとゑは、声を出すことも忘れて、ちいさく頷いた。

「きのう、川のむこうの畑で、サツマイモが盗まれてな。おまえが盗んどるの見たいう者がおるんじゃ。ちょっと調べるから一緒に来い」
「えっ!」

 もとゑは、はじめて声を発した。自分の意志でいったのではなく、からだ全体からわきおこる、身震いにちかいものだった。反射的におさむは、母の前に立った。要も、土間に下りて、おさむの横に並ぶ。二人して、母を守る体勢をとった。それを見た警官、急に表情をくずして、
「あのなぁ、つまり、あんたに疑いがかかっとるだけなんじゃよ、なっ、わかるか。……本官は逮捕にきたわけじゃないんじゃ。あんたが畑から芋盗みよるのを見たという届出があったから、その真相を調べるのに、ちょっと署まで来てほしいというておるんじゃ。きみたちも、わかるな」

 警官といえども、同じ本宮村の住民で、都会のように高圧的ではない。つとめて職業的にならないように説明する。

「今すぐ、行かな、あかんのかのお」
「うむ、そうしてほしい。一刻もはように事の真相をさぐりたいんでな。あんたも、身に覚えがなかったら、早いとこ疑い晴らしたいじゃろうが」
 気のよわいもとゑではあったが、まったく身におぼえがないだけに、急に怒りがこみあげてきた。
 二人の息子を脇に押しやり、土間の戸口で仁王立ちの警官めがけて、勢いよく五、六歩詰め寄った。警官は、突然態度が変わったもとゑに、「なんだ」という体勢で身構えた。
「わたしは、……わたしは貧乏しとるけど、他人さまの物盗んだりした覚えないさかのお!」
 そういって精一杯の大声をはりあげた。
「うっ、」
 警官の顔が、きびしい表情に変わった。
「こどもに、聞いてくれんかのお。このところ神経痛わるいさか、遠いところへ行けんの知っとるさかいに」

 警官は、要とおさむを交互に見た。ふたりは同時に首を縦にふった。
「よし、それじゃったら、なおさら来てもらおう。ここじゃ取り調べできんからのぉ」
「だれが、……どこのだれが、わたしが盗んどるの見た、いうんですかいの!」
 もとゑは、警官の言葉を、はねのけるようにいった。
「それも、来ればわかる。とにかく、届出があった以上調べにゃならんのじゃ。支度してくれ」
「なにを、支度するんかいのお」

 もとゑは、なかばケンカ口調になった。自分でもふしぎなほど度胸がすわった。こうなったら相手は誰であれ、松一と夫婦喧嘩するのと同じだと思った。
「とにかく、ついて来い!」

 警官は、そういって外に出た。
 もとゑは、タスキと頭の手拭をはぎとるようにはずし、くるくる丸めると板間の部屋めがけ投げつけた。それを見た要とおさむが、母のそばに駆け寄る。祥子は家の奥で弟の公をしっかり抱きしめて、かたまっている。時ならぬさわぎに放心していたのだ。もうこれまでかと、心に決めたもとゑは、
「すぐ帰るさか、祥子と公をたのむぞ」
 母はそういって玄関の敷居をまたいだ。またぐとき、神経痛のせいで左足が敷居に引っかかって、あやうく、ころびそうになる。

「母やん!」
 おさむが母の後を追う。要も出てきた。が、何もいわず突っ立っている。
 警官の懐中電灯がゆれて、二つの黒い影が、急な石段をおりて行った。
「だいじょうぶや……すぐ帰ってくる」
 母が見えなくなって、要が、はじめて口をきいた。
「母やん、なにも悪いことしてないもんな。誰が警察にウソいうたんやろ、……どいらい腹立つな、ちくしょう!」

 兄弟四人は、母のいない夕飯を食べた。腹が減っているのに、あまり食えない。腹立たしさと、やり場のない悔しさのためだ。運悪く、松一が泊り山に出かけた日に、よりにもよって大変なことになった。父を呼びに行くにも道が分からない。「すぐ帰る」といった母の言葉を信じるほか方法がなかった。
 その夜、おさむは、なかなか眠れなかった。
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これが、「自分史 ど根性中岸おさむ土方半生記」巻頭部分の書出しです。いかがですか? 通常の自分史とはちょっとちがいますね。

この状況を仮に漫画化するとつぎのようになります。(協力:漫画家、さいわい 徹氏)
つづく

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