ギタリストのつめみがき Vol.3
クラシックギターに限らず、楽器を人前で演奏するときに少なからず"緊張”はするものである。プロの奏者であっても緊張するだろうし、ましてアマチュアの場合は良く聞く話である。
普段ギターを販売していて、そんな話になることがある。「人前で弾くときに、緊張しない方法はないですかね?」
私なりに半世紀近くクラシックギターを演奏してきて自信を持って言える方法がある。それは、
①演奏すべき曲を通常の倍以上のスピードに落として”とにかくゆっくり弾いて練習すること”。本番で焦らないように、自身の体や指先に一音一音記憶する。
②本番と同じ環境を想定して「リハーサル」を行う。これは、例えばオーディションやコンクールの会場を想定して、自分が司会の方から呼ばれてステージにあがり、お辞儀をして演奏を始めるまでのしぐさを本番に近い形で何回も繰り返す。ステージ上が薄暗ければ同じように自分の部屋を薄暗くして本番同様の雰囲気を作り出す。
これらのことを本番前に真面目に何度も私はかつて行ったことがある。
そのうちの初めての経験が、1983年日本国内のクラシックギターのコンクール関連では新人の登竜門と言われている、神奈川ギター協会が主催する「第12回神奈川県新人ギタリストオーディション」に出場し、優勝した17才の時になる。
プロではないアマチュアにとって、「オーディション合格」は一つの大きな冠を得ることであり、そのためにすべての力を集中させた。
まず、自由曲でJ.S.バッハ作曲BWV1001からフーガを弾いたのだが、同じフレーズが何回も出てくるので、完全に暗譜していないと途中で止まる。”絶対に止めない!”という信念のもと、とにかく繰り返し練習した。
その結果、本番のオーディションが始まってから、わずか5分の曲だが、弾き始めと弾き終わりあたりしか自分の記憶にない。弾き始めてから突然あがってしまった(-_-;)。でも"体が覚えていた”ため、その本番の演奏を聞いた父親から「ノーミスだった」という言葉を後で聞いた。
それ以来様々な形で、”ゆっくり弾くこと”を頭に入れながら練習をしてきた。
するとアメリカの著名なクラシックギタリストアンドリュー・ヨーク氏他数多くのプロが、形こそ違えど「ゆっくり弾くことの大切さ」を唱えているのだった。ぜひ、ステージ上であがって仕方がない方は一度お試しいただければと思う。ただし、通常スピードの倍以上、極端にゆっくり弾かないと効果は出にくいという点だけ申し上げておく。
因みに、この私のアドバイスを聞いていただいた私のお客さまは「全日本アマチュアギターコンクール」に毎年出場しているのだが、この「ゆっくり練習を実践して、4回目にして初めて「本選に残った」という嬉しいお言葉を頂戴した!(^^)!ご本人の努力がまず第一であるが、少しはアドバイスが役にたったのかな?と思うと少し嬉しい気持ちになった!(^^)!
(Arcangel アルカンヘル)