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[航星日誌] 1年間、英語を使いながら仕事をしてみて
赴任してからあっと言う間に1年が経った。
順調に経験を重ね、今の責務にも慣れてきた…と思いたいところ。
年の瀬にこれを書いている理由は、おすすめの英語勉強法を紹介するんじゃなくて、英語を使った仕事を通して思ったことを書いておきたかったため。もしかしたら来年は、また違ったことを感じているかもしれないので、その記録に。
ちなみに何か英語の勉強を始めたいなら、とりあえずNHKのラジオ講座かBBCの「6 Minute English」でも聞くと良いと思う。
以上、予めのお断り。
結論、仕事ではなるべく英語を避ける
結論、仕事ではなるべく英語を避ける。身も蓋もない。でも、やっぱり英語で仕事をするのは時間がかかる。読み書きであっても、英語より母語の日本語が得意なのは間違いない。
英文契約を読んでいると、時計の針はどんどん進んでいくのに、残ページは全然減らなくて虚しくなる。で、至った結論は「日本語で仕事しよう」。
機械翻訳を活用してしまう
もらった英語の文書は、翻訳サイトにぶち込む。そしたらすぐに日本語訳ができあがる。それを読んでいく。
たまに変な訳になることもある。でも意外と内容は分かる。自分の場合、おかしな日本語訳の方が、英語原文よりも速く読み進められるし内容も頭に入る。外国人が使うおかしな日本語でも意味は汲み取れるのと同じ原理だと思う。
それでも意味が分からない日本語訳に出くわしたときに、英語原文へ戻って解読するぐらいで良いんじゃなかろうか。(その程度の英文読解力は現代でも必要だと思う。)
そして、そういうときの半分くらいは、英語原文に何かしらのミスがあることも分かってきた(それくらい機械翻訳の性能は上がってきていると思う)。
こんな感じで仕事を進めるようになってから、長大な英文に対峙するのも、あまり苦ではなくなった。
結果として、無理して英語で契約等を読んでいたのは非効率的だったということになるのだけど、自分の英語力の限界を認識できたのは収穫だった。語彙の限界は日々直面しているが、それ以外に2つ挙げたいと思う。
自分の英語力の限界(1): 飛ばし読みができない
英文だと自分の場合、とりあえず頭から丁寧に読まざるを得ない。自分の英語力では読み飛ばして大丈夫かどうか読まずして判別できないからだ。日本語だと無意識のうちに、「ここは重要じゃない箇所だな」って緩急をつけて読めていたことに気づいた。
自分の英語力の限界(2): うっかり誤読してしまう
英語って似ている字面の単語が多いと思う。26字しかないから仕方ないのだろうか。もしかしたら上級者だと違うように見えるのかもしれない。自分の英語力では見間違えて、意味分からん…?ってことが度々。でも日本語なら流石に誤読は少ない。
それじゃあ、いつまで経っても英語力は伸びない?
機械に頼っていたら、いつまで経っても英語力は伸びないと言われるかもしれない。でもそう言われたって開き直る覚悟ができた1年だった。
「良いじゃん、翻訳ソフトがこんなに有能なんだから!」
自分はバイリンガルになりたくて海外の仕事を引き受けたわけじゃない。海外手当のおかげで大阪時代よりも高くなった給料と、タワマン(19階だけど)での暮らしがモチベーションでも良いじゃないか。
ちなみに、こんなチャランポランな駐在員生活でも、英語力は多少伸長したと思う。例えば、語彙。
嫌でも身につく英単語
何回も登場する仕事上の英単語は流石に覚えていく。
繰延税金負債「deferred tax liability」がスラスラ出てくるようになったのは、仕事の賜物である。(シンガポールは珍しく税法上の減価償却期間が短く、税効果会計で繰延税金負債が発生しがち。)
嫌でも身につけなくてはいけない英会話
リーディングは機械に頼れるけれど、リスニングとスピーキングは頑張らなくちゃいけない。むしろリーディングに労力を割かずに、これらに全振りした方が良いと思うくらい。
駐在員は現地スタッフより職級が上であるにもかかわらず、出向先のことは彼らより知識が少ない。それなのに、時にはネガティブフィードバックをすることになる。
理路整然と相手ができていないことを言って聞かせるのは、母語でもハードルが高い。いわんや英語。
ドラフトを用意できるものであれば良いが、応酬になるとそうはいかない。相手の言っていることが分からないとか相手に言い返せないとか、コミュニケーションが妨げられる事態は、なるべく避けたい。
通訳マシンなるものも登場しているが、それを使っていては一部の現地スタッフからなめられてしまうだろう。
慣れるしかないリスニング
リスニングは、相手の英語に慣れるしかないと思っている。一朝一夕ではどうにもならん。
個人的には、BBCの「6 Minute English」でいくら鍛えても、インド英語に対応できる日は来ないのではないかと思う。英語も母語のレベルになったらインド英語も聞き取れるのかもしれないが、先述の通り、自分はバイリンガルを諦めているので、その日はやってこない。
バイリンガルを目指さない以上、その訛り、いや、その人の訛りに特化したリスニング能力を向上させていくのが一番手っ取り早いと思っている。会話する時間を作り頑張って慣れる。今のところシングリッシュに関しては、それでなんとかなっている…と思う。
なんともならないのがオフィスの代表番号に掛かってくる電話。取引先からなのかセールスの電話なのか、セールスの場合は有益かどうかの判断が必要になるが、なかなか難しい。脈絡もなく突然かかってくるから話題も推察できず、リスニング能力が問われる場面だと思う。
あと類似のケースが、普段はメールでしかやりとりしないけど、たまに面談や会食のある取引先との会話。その人の英語に慣れてきたころに、だいたい面談が終わる。そして、またメールでのやりとりになりリスニング能力が逓減していき、次回の面談のときにはまたゼロからのスタート。ちょっと悲しい。
ちなみに日本人の話す英語は、初対面の人のものでも、めちゃめちゃ聞き取れる。仕組みは解明できていない。
頑張ればなんとかなりそうなスピーキング
喋る方は、メールのライティングと一緒で、努力で何とかなる方だと思っている。
頻出フレーズは何度も使えば頭に浮かんでくるようになるし、アクセントはともかく流暢に話せるようになった気がする。
定型外のことを話すときは、日本語を直訳しようとするんじゃなくて、何を主語にしたら英語を組み立てやすいかって考えると、結構喋りやすくなった。
ちなみに、多少のアルコールが入ると流暢に話せる「飲グリッ酒」は確かに存在する。仕組みは解明できていない。
駐在員生活2年目をどんな年にできるのか、来年の自分に期待
シンガポール勤務はこれが2回目だが、前回は1年で帰ってしまったので2年目は未知の領域である。
自分の英語力が増強されるのか、はたまた停滞するのか、温かく見守っていきたいと思う。
なお、ここまで読んでもらったら分かる通り、ほとんど英語の勉強をせずに2022年を終えてしまった。
もし1年間、NHKのラジオ講座を聞き続けていれば、BBCのポッドキャストを聞き続けていれば、英語力も違っていたんだろうとは思う。
このまま勉強をせずに駐在員生活だけで英語力がどうなっていくかを観察するのも良いけど、少しは勉強して自分のスキルを磨くのが、人としては真っ当なようにも思う。
まあ、頭では分かっているのに、継続できないのが人間ですが。
英語力が向上しようがなんだろうが、2023年も素敵な1年になりますように。
I wish you have a happy new year!