『英国式庭園殺人事件』映像美と画家の奇妙な契約(1982/英)
イギリスの映像作家ピーター・グリーナウェイ監督の長編第1作。画家出身で映像美と奇妙なストーリーの映画で知られる映画監督の初期の作品です。「コックと泥棒その妻と愛人」「レンブラントの夜警」「枕草子」などが有名でしょうか。音楽はマイケル・ナイマンでこの頃のグリーナウェイの作品では重要な役割を担っています。
舞台は1960年代のイギリス。画家ネヴィルは、ある館主人の夫人と12枚の館と庭園の絵画制作にまつわる奇妙な契約をします。主人の留守中の12日間の期限や報酬、食事などの滞在中の待遇に加え夫人との密会も契約に含まれていました。
導入部が終わると、ナイマンの独特な音楽とともに画家ネヴィルの絵画制作や館に関係する貴族との食事、会話、そして夫人との密会などが軽快に描かれていきます。絵画製作が進んでいくにつれ、描いている風景に些細な違いがあらわれます。前日までなかった梯子、シャツ、マント、乗馬靴…それらは後に続く事件の暗示のように受け取れます。そしてネヴィルが目に見えたまま描いた数々の暗示は、館の貴族たちや夫人やその娘も関係する陰謀へと発展していく。
館と庭園の美しさだけにとどまらないグリーナウェイ独特の映像美、ナイマンの音楽、奇妙な筋立て、画家や貴族の暗示に満ちた会話、様々な魅力に満ちた映画になっています。(ちなみに原題は「画家の契約」)