私の好きな短歌、その6

まくらべの障子一日しやうじいちにち曇りたりまなこをあげてをりをり見るも

 島木赤彦、歌集『氷魚』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p29』)。

 「病床」中の一連。この次の歌から、季節は冬とわかる。何もすることがない病床で、視線だけが部屋の中をさまよい、ときおり障子を見ている。それだけの歌だが、写生であるがために、実感がこもっている。「一日」によって時間の幅が生まれ、長い退屈が表現された。

 1916年(大正5年、41歳)作。作者生没年は1876(明治9)ー1926(大15=昭元)享年51歳。

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