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#橋田東声
私の好きな短歌、その19
病む母の枕(まくら)にかよふ浪(なみ)の音たかければ母は眠られざらむ
橋田東声、歌集『地懐』(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p85)より。
一首明瞭で謎がない。ごく当たり前の言葉で出来ている。私だったら、海の名前を入れたりして独自性を出したくなるところだが、それは無用なのだろう。
「母」が二度出てくるが気にならない。むしろ全体に母のイメージが濃くなり、効果的。波の音が「かよふ」とい
私の好きな短歌、その20
嘶(いなな)けばいななきかへすこゑごゑの村に響(ひび)きて馬市(いち)たつらしも
橋田東声、歌集『地懐』(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p88)より。
歌材が古くて新鮮だ。おそらく自動車など村にはなかったであろう時代、馬のいななく声が辺りに響いている。馬が交通手段として乗られていたのか、農耕用だったのか、あるいはその両方なのか。いずれにしても馬の市が立つくらいであるから、生活の中で一