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中村憲吉の歌(「私の好きな短歌」より)

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記事一覧

私の好きな短歌、その4

中村憲吉、歌集『軽雷集以後』より(『日本の詩歌 第6巻 p238』)。

病む室の窓の枯木の桜さへ枝つやづきて春はせまりぬ

 『日本の詩歌第6巻』の憲吉の章では最後の歌。「窓前」という題がある。これが憲吉の人生最後の歌なのかどうかは分からないが、この桜が咲いた後、5月5日に死去したと注にある。桜の枝がつやづくとは、どんな感じだろうか。見た目に分かるものなのだろうか。晩年病がちだった憲吉は、自分の

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私の好きな短歌、その3

 中村憲吉、歌集『軽雷集以後』より(中央公論社『日本の詩歌 第6巻』p230』)。

真むかひの山家のなかは西日射しあからさまなる仏壇のみゆ

 「秋の山田」中の一首。憲吉が帰郷して家業(蔵元)に従ってからの作。山間の里では、川に沿った平野部分は水田にして、住家は少し上がった山腹に建っていることがある。家が西に面していると、下の田が山影に入っても、家にはしばらく西日が差し込む。そこに「あからさまな

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私の好きな短歌、その2

中村憲吉、歌集『しがらみ』より(中央公論社『日本の詩歌 第6巻』p203)。

国こぞり電話を呼べど亡びたりや大東京に声なくなりぬ

 「関東大震火災」中の一首。当時作者は大阪毎日新聞の経済部記者として働いていた。詞書に「大阪にて関東大地震を感じたれど、未だ大災害の起れるを知らず。ただ総ての通信機関その活動をとどめ、夜に入るも帝都の音信伝はらざるを怪しみ、人人初めて不安の念に駆らる」とあり生々しい

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私の好きな短歌、その1

 あ、いいなと感じた短歌を紹介し、簡単な評をします。いわゆる一首評。評をすることが、自分の実作の糧となってほしいと思います。
 まずは、中央公論社の「日本の詩歌 第6巻(島木赤彦、古泉千樫、中村憲吉、土屋文明、岡麓)」で見つけた歌から始めます。文中の作者の年齢は数え年。

中村憲吉『しがらみ』より(『日本の詩歌 第6巻 p195』)

樽負ひてはひる人あり小蓑より乾ける土間に雪をこぼして

 「大

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