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高校生へのメッセージと教員のプロフィールです〜人間福祉学部 人間形成学科
こんにちは。山梨県立大学の広報担当、兼清慎一です。人間福祉学部人間形成学科の教員から高校生のみなさんへのメッセージを順次掲載していきます。教員のプロフィールとして読むこともできます。人間形成学科は教員の数が9名と、本学の中でいちばん小さい学科です。しかし先生方の専門はむしろバラエティに富んでいます。ぜひご一読ください。
教育を比較する|池田充裕
池田 充裕(イケダ ミツヒロ)教授
教育学(比較教育)
専門は教育学ですが、その中でも、比較教育学という分野で研究を行っています。出身は山形県・酒田市です。日本海から吹きすさぶ地吹雪に叩かれて育ちました。しかし比較教育学という分野に足を踏み入れてしまい、長年研究しているのはなぜか赤道あたり、東南アジア地域の国々の教育です。2月生まれの雪国育ちの人間にとって、四季のない常夏のシンガポールでの2年間の留学生活は改めて自分の人生を見つめ直す良い機会となりました。
比較教育学という分野は、教育制度や学校経営、教育方法といった聞き慣れた分野と違って、まだ十分に社会的な認知を得ているとはいえないかもしれません。比較教育学という分野は、一言でいうなら、さまざまな国や文化圏、民族・宗教コミュニティ、社会体制等の間で、歴史的・現代的な視点から、教育にまつわる現象を比較し、その違いや独自性を見いだして、教育の本質や日本の教育の特徴についての認識を深めることを目指しています。
そう言うと難しく聞こえるかもしれませんが、例えば、日本の教育様式の代表的なものの一つとして、学校での「掃除」があります。欧米の人たちが、日本の学校で行われている「掃除」を見れば、体罰、または児童虐待と見なす可能性大でしょう。「掃除をすることで心も磨かれます」と話しても、大方は「ナンセンス」と失笑されてしまうでしょう。私たちは掃除を行うことで、清潔への意識や自己管理、集中力や忍耐力、友だちと協力してやり遂げる協調性、公共心などが培われると思っていますが、それは優れて日本的な掃除観・教育観であり、タイやミャンマーなどアジア諸国の一部でも行われているということから仏教由来の考え方なのかもしれません。また、海外の方達は、日本の「登校班」にも驚きます。子どもたちだけで学校の登下校を行うという行為は、多くの国では危険極まりなく、親の責任放棄と見えるでしょう。実際、日本でも子どもたちが登下校の際、事故や事件に巻き込まれる悲しいニュースをよく聞きます。それでも、なぜ私たちは「登校班」を止めないのでしょうか?地域の方に見守られながら、子どもたちの育ちを地域社会全員で担うということに、安全・安心以上の教育的・社会的意義を見いだしているかもしれません。さて、このような視点を、教育の内容、教員の仕事、学校の経営、国の教育政策と広げていくと、どうなるでしょうか?このように比較教育学は、教育を相対化、客観化して眺めることで、そのあり方を深く考察しようという学問分野です。おもしろそうですか??
私が担当する本学の「多文化教育論」という授業では、『世界の学校』(学事出版)や『世界の校則』(メディアファクトリー)というテキストを使用しています。興味のある方は、図書館などで読んでみてください。私はいずれもシンガポールの章を書いています。
保育・教育にいかす心理学|太田研
太田 研(オオタ ケン)准教授
発達心理学
皆さんは、心理学というと何を思い浮かべますか? 血液型性格占いや心理クイズなどのマスメディアを通したイメージ、不安や悩み、カウンセラーなどの学校生活によるイメージ等、学問的な正しさを問わなければ何かしらのイメージを持っていることでしょう。心理学には多くの分野がありますが、私の専門は臨床発達心理学です。臨床発達心理学とは、誕生から老人にいたるまでの人の心の育ちを心理学の知見を生かして支援する学問です。
人間形成学科に興味を持った皆さんは、子どもの笑顔にひきつけられた経験があると思います。あのときの笑顔を守り、心身の健全な発達を支えるためには、子どもの心の発達過程と援助方法を専門的に学ぶ必要があります。現代社会では、保護者の育児不安や子ども虐待、不登校、いじめ、非行、障害など、子どもの心の発達には、さまざまなリスクが伴います。皆さんには、これらのリスクに早期に気づき、適切に対処できる実践力を身につけてほしいと願っています。
保育の心理学や教育心理学に関する授業では、具体的な例を取り上げ、学生の皆さんと一緒に、子どもの心身の健全な発達を促すために、教師や保育士にはどのような援助が必要なのかを検討しています。研究指導では、乳幼児や児童生徒の心の育ちを支える援助について探求するために、地域の幼稚園や保育所、小学校等に訪問し、インタビューや観察する方法を重視します。心理学は行動の科学であるため、現象を客観的かつ科学的に検証するための資質や態度の育成を目指しています。
地域という広大なキャンパスに出向き、子どもたちの未来を支える保育・教育について、心理学の視点から一緒に学びを深めましょう。
幼児とともに生活を営む保育者になるために| 奥谷佳子
奥谷 佳子(オクヤ ヨシコ)講師
教育学(幼児教育)
私は高校生の頃、「小さい子は無邪気で可愛いな、将来は幼稚園の先生になりたいな」と思っていました。その夢を実現するために、幼稚園教員養成課程のある大学に進学し、心理学や幼児教育の歴史、造形表現、幼児体育、音楽など、幼児の生活や遊びを支える保育者に必要とされる専門的な学問を学びました。学びの総まとめである卒業論文では、幼稚園で幼児が片づけをしているときに保育者はどのような声かけを行っているのかについて研究しました。卒業論文の提出期限は1月上旬だったのですが、クリスマスや正月を返上し、同じゼミ生とワープロ(今ならパソコンですね、時の流れを感じます)を持ち寄り、必死で論文を書きました。そのときの仲間とは今でも連絡を取り合っています。
大学を卒業後、幼稚園の先生となりました。幼稚園の現場では、先生の一言が幼児の行動や考えに大きな影響を与えることを実感しました。その経験をもとに、現在は、「保育者の声かけ」の研究をしています。保育者は、保育のねらいや幼児の発達に応じて声のかけ方を変え、幼児に問いかけることで、幼児同士で思いやイメージを共有しながら一緒に活動することを支えています。
幼児とともに生活を営み、その経験の中で子どもの発達を促す保育者の仕事はやりがいがあります。「子どもが好き」「幼稚園や保育園の先生になりたい」と思っている皆さん、本学で幼児教育について学んでみませんか。
子どもたちが自然に集まる先生の存在、うれしくありませんか?|里見達也
里見 達也(サトミ タツヤ)准教授
保育学、教育学(特別支援)
子どもたちが自然と集まる先生の存在、うれしくありませんか?自分もそのようになれたら…と感じている皆さん、ぜひ一緒にそのメカニズムを解明してみましょう。実際の教育・保育や療育現場で観察したり、模擬体験をしたりして五感で感じる研究を大切にしています。身体の動きを通した心理的な変化から見た教育支援のあり方についても共に学んでいきましょう。
専門は、「保育学・教育学(特別支援教育)」です。特に「あそびの発達」という観点から「障害児のあそび」を段階的にとらえる実践研究を行いたいと考えています。
また、教育・保育現場(幼稚園、小学校、特別支援教室・学級、特別支援学校、保育所、認定こども園、学童保育、放課後児童クラブ、放課後等デイサービス)における個からクラス全体の支援へつなげる「教育支援」や「授業・活動改善」についての方法論も探っていきたいと考えています。
これまでの現場経験を活かし、教育・保育学理論の実践化をめざし、授業の中で学生たちに現場の様子を自分のことばで伝えていきたいと考えています。子どもたちとあそぶ経験を通して学ぶ楽しさを味わいたいと思っている皆さん、お待ちしています。一緒に学んでいきましょう。
子どもたちと動きでコミュニケーションが図れるように|髙野牧子
髙野 牧子(タカノ マキコ)教授
身体表現、舞踊教育学
皆さん、こんにちは。高い野原の牧場の子、ハイジのような名前の髙野牧子です!
専門は舞踊教育学。ダンスを教育学の立場から研究する領域です。特に幼児期は身体表現によるコミュニケーションが重要な役割を果たしています。子どもたちから創造性豊かな身体表現を引き出し、表現することの楽しさ、自己表現する素晴らしさを実感できるような指導体系を構築してきました。
2003年には半年間、文部科学省在外派遣研究員として、ロンドンにて親子を対象としたクリエイティブ・ムーブメントなどを学びました。帰国後、山梨県内で親子での身体表現あそびを中心とした子育て支援活動に携わる一方、全国各地で保育者、学校教諭、子育て支援者向けの講習会講師として飛び回っています。
また、「踊るおばあちゃん」を目指し、ダンサーとしても活動、大学時代の友だちと一緒にT.Blendを結成、年1回パフォーマンスを行ってきました。写真は、昨年9月に甲府で行った公演です。ピアノ演奏を人間形成学科学科長の村木洋子先生にお願いし、舞台美術は同科の古屋祥子先生が担当してくださいました。一緒に人間形成学科の学生たちも共演してくれました。
大学時代は、これまでとは異なる学びや体験を得ることができます。そして、一生の友とも出会える場所です。子どもたちと動きでコミュニケーションが図れる保育者、教育者になれるよう、一緒に学びましょう。
(写真:20199.7.甲府桜座 T.Blend Act.6 『満ちよ あさき夢』より 同科学生2人と共に)
食を通じていろいろな人と関われたら|鳥居美佳子
鳥居 美佳子(トリイ ミカコ)准教授
栄養学
専門は「栄養学」です。食育や子育て支援にわたり、食に関すること全般です。本学では、保育や初等教育の家庭科、看護、介護福祉など、様々な領域において食に関する科目を広く浅く担当しています。
高校生だった私が進路を決めるときに栄養学を学びたいと考えたのは、食を通じていろいろな人と関われたらいいなと思ったからです。大学の卒業研究で生理学の研究手法と出会い、人が何かを食べたときに体がどう反応するのか、研究しました。生体信号を表現する美しい波形を見ながら、生体で起きる現象は神秘であり、真実だと感じました。「もの言わぬ者の声を聞くのが我々の使命だ」と、恩師はおっしゃっていました。その研究が興味深く修士課程に進学しました。いろいろ遠回りもしましたが、いつも出会う人と私の間には、「食」がありました。また、どのようなときも、関わる人の食卓がイメージできるように意識して学んできたつもりです。そして、食を通じて多くの人たちと関わる機会をいただいて仕事をしている今日の私がいます。
この大学に来るまで山梨には縁はありませんでした。山梨にご縁があったのは、仕事のことだけではなく、「どのような生活ができたら、私や家族の心が豊かでいられる?」と、よく考えていたからかもしれません。山梨は、自然は厳しいかもしれませんが、魅力もたくさんあります。人々は心が豊かで温かいと感じています。本学は、そんな山梨県全体をキャンパスとして学べるのが特色です。地域で人と関わりながら、あなたの学びを、人間性を深めていきませんか?
音楽の力|村木洋子
村木 洋子(ムラキ ヨウコ)教授
音楽、ピアノ
「みなさんは、どんな音楽が好きですか?」と聞かれたら、推しのアーティストや好きなジャンルなど、きっといろいろ語ってくれるでしょう♪ 音楽を聴いたり歌ったりすることで、いろいろな効果を感じられるのは、子どもたちも同じです。子どもたちの成長にプラスとなる音楽体験を提供できる先生になってみませんか。
私はピアノ演奏・ピアノ教育を主な専門としています。テクニカルな演奏だけではなく、聴いてくれる子どもたちの気持ちに沿った演奏が必要とされていることを実感しています。たとえば大学に入って初めてピアノを始める人でも山梨県立大学では個人指導なので、ひとりひとりのニーズに合わせてレッスンを受けられます。楽譜に伴奏が書かれていなくても伴奏が弾けるように和声学やコード進行法も学べます。なんだか専門的で心配? いえいえ、その反対で、難しい曲を簡単に変換するワザを大学では教えちゃいます。歌いながらピアノを弾いたり、子どもの様子を見ながら、臨機応変にやらねばならぬことはたくさんあります。だからこそ、広く浅く音楽を学び「使える音楽」を自分のものにしてみませんか?新しい時代の合唱や合奏の形態を工夫しながら、一緒に楽しく♪学んでいきましょう。
学べば学ぶほど分からないことが増えてくる・・だから楽しい|山崎宣次
山崎 宣次(ヤマザキ センジ)准教授
理科教育、教育工学
高校生の皆さん、大学には何を求めて入学したいと思っていますか。専門的な知識を学びたい、幼稚園や保育所、小学校の先生になるための資格を取得したい、仲間と楽しく大学生活を送りたい、部活やサークル活動で高校以上に自由な活動を思いっきりしたい、高校時代では出来なかった活動をとことん突き詰めたい・・。など、様々な思いがあるかもしれません。
しかし、新型コロナウイルス感染等によって、大学も変わろうとしています。いや、それ以前から変わりつつあります。学びたい専門知識などはネット上にいくらでもある時代です。大学に行かないと専門的な知識は学べないような時代は終わりました。要は何を学びたいかを模索しつつも、貪欲に自ら学ぼうとする意識をもち続けることが大切になってきます。文部科学省も「学びに向かう力、人間性等の涵養」を言っています。そのことが深い学びにも繋がっていきます。先生に教えてもらう、教えられたことをひたすら暗記して覚える、過程はともかく結果(正解)だけを求める、といった時代の終焉です。
主体的・対話的な学びはどちらかというと分かりやすいですが、深い学びってどんな学びでしょうか。各教科の見方・考え方を使って思考することが深い学びだというレベルでは、大学での学びには当てはまりません。
最近、この「深い学び」について調査しています。大学生も、小学生も、幼児もその発達段階に添った「深い学び」があるはずです。理科教育や教育工学、生徒指導なども調査研究しています。そして、この「深い学び」になるように、教育をparadigm change(パラダイム シフトではなく)することを追い求めています。
学べば学ぶほど、分からないことが増えてくる・・。だから、楽しいという学修の醍醐味を求めて、本学に入学してください。