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「日常のなかで自然をもっと身近に感じてもらう作品を」 木工作家 野田沙織さん

山梨移住計画の鈴木啓太です。
僕が山梨に来てから出会った、ちょっと個性的なIターン・Uターン移住者の方々を紹介していきます。

今回は、富士山を模した一輪挿しやバードコール、現実にはない山を形にした妄想mountainという作品など、山梨や自然を感じさせる木工作品を創り出している木工作家の野田沙織さんに、山梨にいる経緯や作品について聞きました。

南アルプス市出身の野田さんは、学生時代に一度東京に出て、山梨へUターン。僕がはじめて出会ったのは、彼女がDEPOTという甲府のプランニング会社のスタッフとして働いているときでした。

とりあえず戻った山梨

子どもが好きだった野田さんは高校卒業後、保育士を目指すため山梨の実家を出て東京の大学に進みます。しかし途中で進路変更。なんとか両親を説得してインテリアデザインの学校と美大に入学し直し、デザイン・空間・木工を学ぶことに。卒業後はアルバイトをしながら木工作品を制作しつつ、2016年にはドイツに渡ります。(この辺りの紆余曲折は「にらレバ」のエッセイにて)

その後日本に帰ることになるのですが、ドイツに行く際に東京で借りていた住居は引き払っていたため、「とりあえず」という気持ちで山梨の実家に戻ったそうです。今のように山梨で木工作家として活動する姿はまったく想像していなかったとか。

山梨で出会った人々のおかげで

山梨に戻ってからは、知人の紹介で前述のプランニング会社でスタッフとして働き出します。その時のことを聞くと「パソコン作業が苦手なので役に立っていたかわからない」と言いますが、そこで出会った建築家から家具の製作を依頼されたり、後に木工作品を展示販売してくれる店舗とつながったりと、細々と並行して続けていた木工に、少なからず影響を与えた環境だったようです。

本格的に木工作家として活動をしようと意志を固めた野田さんは、少しずつ木工作品の製作に比重を移していき、富士山型の一輪挿し「ふじりんざし」や「バードコール」といった木工作品を生み出しました。「この頃は少しでも多くの人に自分と作品を知ってもらうため、県内外のイベントにとにかく出店しまくった。」と積極的にイベント出店していた当時を振り返ります。

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そんなプランニング会社やイベント出店でできた人とのつながりから、家具や什器の相談が少しずつ増えていきます。そんなタイミングで2021年からはたまたま見つけた韮崎の倉庫を工房として借り、家具を作れる本格的な木工機械も導入(これも人とのつながりで入手)。ここ最近は受託製作で自分の作品を作る時間もないほどだとか。

▼受託仕事で製作した家具や什器

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Photo: 土屋誠(1・2・4枚目)

もっと身近に自然を感じられる作品を

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野田さんが作る木工作品は、山や自然がモチーフになっているものが多く見られます。単純に登山が好きということもあるものの、じつは東京にいた頃から作品に対するコンセプトは変わっていないそう。それは、作品を通して「日常の中でもっと身近に自然を感じてほしい」ということ。美大の頃から地層、風、光などを形にした家具をつくっていたと言います。

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「”妄想mountain”(実際にはない山を彫った作品)とかはわかりやすく山の形ですが、自然界で見るようないびつな形だったり、自然で見る景色や感じたものを抽象的にして作品に反映しています。都会や室内にいても、ふとした時に自然を感じたり考えてほしくて」

今までの作品の中で、そのコンセプトをいちばん表現できている作品を聞いたところ、河口湖の宿のために製作した「壁掛けのオブジェ」ということでした。六角形の鏡に植物を挿せる穴があいた作品で、鏡は水に映る自然の景色などをイメージしているそう。

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今後は、家具の製作やワークショップも

今は受託の仕事で忙しい野田さん。自身の作品「ふじりんざし」や「バードコール」を量産する時間もないほどということですが、今年はいろいろやりたいことを考えているそうです。

「今年の後半は自分の作品を本格的につくっていきたい。特に家具。本棚はずっとつくりたいと思っていたので。あとワークショップや木工教室もこの工房でやっていけたらいいなぁ」

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野田さんは「今山梨で木工作家としてやっていけてるのはここで出会った人のおかげ」と言いますが、ご本人の話を聞くと「好きなこと(木工)を続け」「それをまわりの人に知ってもらう」という努力をしたからこそ、今にいたる、という印象を受けました。
そして都会と比べて人とつながりやすく、自然が豊かな山梨という環境が、そんな野田さんの想いや作品の味方になってくれているような気がします。

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野田沙織|Atelier Bond
Instagram: @atelier_bond
Online Shop: https://atelier-bond.stores.jp/

取材: 鈴木啓太


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