シダネルとマルタンの光の表現
〝シダネルとマルタン展〟が山梨県立美術館で開催されています。
シダネルとマルタンは、フランスで19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した画家です。
この展覧会では、シダネルとマルタン、2人の画家が描いた絵を一度に鑑賞することができます。
では、いざ展示室へ。
どんな作品が待っているのか、ドキドキしながら進んでいきます。
展示室では、解説とともにシダネルとマルタンの作品を鑑賞することができます。
作品が時代や作風ごとにまとめて展示されていて、それに対応する解説が、第1章、第2章…と進んでいきます。その解説に沿って鑑賞していくと、彼らの物語を追っているような気持ちで作品をみることができました。
ここで、私が特に心を惹かれた作品を紹介します。
これは、シダネルの「ビュイクール、月明かりのなかの教会」です。
この薄暗さ。
月明かりに照らされてぼんやりと輝く教会が幻想的ですよね。そして、光が当たらない場所の暗さが少し不気味です。
暗くひんやりとした空気が絵から滲み出ているようで、この独特な雰囲気の絵からしばらく目が離せませんでした。
次に紹介するのは、マルタンの「ガブリエルと無花果の木」です。
とても鮮やかであたたかみのある絵です。なんとなく、この場所はポカポカとしていて穏やかな時間が流れているんだろうな、というのが伝わってきませんか?
陽の光に明るく照らされている中央の木が、この絵全体のやわらかくてあたたかな雰囲気につながっているように私は感じました。
薄暗い夜の風景と、鮮やかであたたかな風景。2人の作風は違いますが、どちらも光の表現が印象的ですよね。
シダネルは月夜や夕暮れ、食卓などの静謐な風景を描き、マルタンは明るい陽の光に照らされた風景や人物を描いたそうです。
そんな光の表現で特に印象に残ったのが、シダネルが描いた、夕暮れや薄暗い夜の中で淡く輝く光です。
この作品は、シダネルの「ヴェルサイユ、月夜」
絵であるはずなのに、本当に目の前に優しい光があるかのようで、実際に自分がその風景の中にいるような不思議な感覚を覚えました。
ほかにも、夕暮れの中の灯りを印象的に描いた素敵な作品がありました。
本当に素敵な作品だったので、ぜひ実物を見ていただきたいです。
私はこの展覧会で、時間を忘れるほど作品の世界に没頭してしまいました。
実際に絵を鑑賞すると、これは…!と感じる作品があるはずです。
〝シダネルとマルタン展〟は、2022年1月10日まで開催されています。
ぜひ美術館に足を運んで、その目で作品を見てほしいです!
文・写真:秋山遥南(山梨県立大学国際政策学部1年)