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米倉壽仁の歳月をたどって… 

みなさん、こんにちは。私は2022年12月7日、山梨県立美術館の特別展『米倉壽仁展 透明ナ歳月 詩情(ポエジイ)のシュルレアリスム画家』の取材に伺いました。幅広い年代の方が来館されており、とても賑わっていました。ここでは、私が米倉壽仁展を見て感じたことを紹介させていただきます(一般の方は、カメラマークの付いている作品のみ撮影可能でした。本記事は一部、特別な許可を得て撮影させていただいています。)

入るとすぐにこの3つの垂れ幕がお出迎えしてくれます。この3つの垂れ幕は、今回の展示会のテーマである「透明ナ歳月」の絵の一部です。これらの絵を見て、米倉壽仁の絵に対する第一印象はとても特徴的で癖のある絵だと感じました。これから始まる米倉壽仁の世界に早く入りたい!というワクワクでいっぱいになりました。

米倉壽仁 《光》1938年 山梨県立美術館蔵

まずは、こちらの写真。題名の《光》のとおり、一目見ただけ明るいイメージが伝わってきます。真ん中の女性の両脇に咲いているハイビスカスの花があることから、夏に書いた絵だと考えました。また、植物が上に伸びていることがわかると思います。太陽(光)に向かって何かを訴えているのでしょうか。色合いのほかにもこの絵の中のすべてのものが光にちなんでいると感じました。ここで私は《光》と対になる「影」の絵はあるのか気になりました。

米倉壽仁 《翳》1938年 山梨県立美術館蔵

《光》と対になる《翳》の絵が隣にあり、比較しながら鑑賞することができました。やはり《光》とは違い、色合いが全体的に暗めです。視点も低めになっており、女性がうっそうと生い茂った草むらに座り込み何か悩んでいるような雰囲気が伝わってきました。作者の心境の変化がこの二つの絵を見て感じることができました。

このように、米倉壽仁展では対になる絵がいくつか展示されているため、比較しながら楽しく鑑賞することができます。

右:米倉壽仁 《破局(寂滅の日)》1939年 東京国立近代美術館蔵
左:米倉壽仁 《早春》1940年 山梨県立美術館蔵

こちらの絵も対となっていました。展示の仕方がとても引き込まれますね。

右の《破局(寂滅の日)》という絵から見ていきましょう。どちらの絵にも存在している卵ですが、こちらは米倉壽仁の心を表しているのでしょうか。破局ではまだ完全に割れてなく、割れている部分を包み込むように布が巻かれています。花や鳥、人の手など完全に傷ついた心を助けるように多くのものが寄り添っているかのように感じました。

では《早春》はどうでしょうか。卵の半分以上が割れ、中には包帯で巻かれた人のような形をしたものがあります。そばに寄り添っていたモノたちが旅立っています。このことから、これから訪れる春のために準備している、覚悟ができたという作者の心境の変化を感じることができました。

米倉壽仁 《花のフェアリーランド》1947年 山梨県立美術館蔵

これまでの絵には人が多く書かれていなかったので、とても奇妙に感じ、思わず見込んでしまいました。題名のとおり、小人たちの世界が繰り広げられています。それぞれの頭には花の帽子、個々の表情が面白く、ジブリ映画の「借りぐらしのアリエッティ」を思い出しました。

米倉壽仁 《イロハ唄》1966年 山梨県立美術館蔵

最後はこちらの絵です。今回の展示会の中で一番心に残った作品です。今まで私は絵の中に文字がある作品を見たことがたかったので、驚きと感動で胸がいっぱいになりました。花の下にある「MEMENTO MORI!」ですが、ラテン語で「死を思え!」という意味です。この言葉のとおり、白い枠組みにはひびが入っており、背景のイロハ唄はぼやけているように見えます。とても興味深い作品でした。

いかがでしたでしょうか。このほかにも米倉壽仁の個性があふれた作品が数多く展示されていました。それぞれの作品は直接的であるにもかかわらず、繊細で儚さが伝わってきました。楽しんで観覧することができると思います。ぜひ、足を運んで米倉壽仁を感じてみてください。

『米倉壽仁展 透明ナ歳月 詩情(ポエジイ)のシュルレアリスム画家』は、2023年1月22日(日)まで開催されています。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

取材をさせていただいた山梨県立美術館の関係者のみなさま、ありがとうございました。

文・写真:大森美季(山梨県立大学国際政策学部国際コミュニケーション学科1年)

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