神秘的な印象派の世界
街の木々が色づいて、食べ物もより一層美味しく感じる季節になりましたね。
運動の秋、食欲の秋、、、
どれも捨てがたいのですが、今回は山梨県立美術館で開催されている「シダネルとマルタン展」で芸術の秋を堪能して来ました。
本展は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したアンリ・ル・シダネルとその友人のアンリ・マルタンの作品を見ることができます。
最後の印象派と呼ばれたこの2人。
生涯にわたって親交を結んでいたため、絵画において共通点が見受けられます。
生涯にわたって親交を結んでいた2人の共通点や違いが見えてきます。
野原を行く少女(アンリ・マルタン)
エタプル、砂地の上(アンリ・ル・シダネル)
2人の作品からは、印象派の特徴である鮮やかな色彩や粗い筆のタッチが見受けられます。
私が今まで美術館などで見てきた作品は、人や物を細かく描写し、リアリティのあるものばかりでした。ですが、この2人の作品からは、今まで見てきた作品とはまた違った穏やかさや春の昼間のような温かさを感じました。
細かく描かれていないからこそ、そのぼんやりしている部分を想像しながら鑑賞するのも面白いかもしれません。
さらに、作品を見進めていくと、生涯にわたって親交を結んでいた2人の作品を比較しながら見ることで共通点や、違い、作風の変化に気づくことができます。
ガブリエルと無花果の木(アンリ・マルタン)
ビュイクール 月明かりの中の教会(アンリ・ル・シダネル)
マルケロル・テラス(アンリ・マルタン)
ヴェルサイユ、月夜(アンリ・ル・シダネル)
先程の作品とは異なったマルタンの身近な情景を描いた作品や、シダネルの人を描かずに卓上の食器や窓の灯りなど生活感が漂うものから人の存在を暗示する作品など2人の作風の変化がうかがえます。
マルタンの作品は月夜などを抑えられた色彩で描いているのに対して、シダネルは鮮やかな色彩で人物や昼間の風景を描いていることが分かります。
こうした2人の作品を比較しながら共通点や違いを見つけるというのは、本展ならではの楽しみ方かもしれません。
この他にも多くの風景画家たちが各地を旅して風景を描いていた頃の作品や、肖像画なとが展示されています。
ぜひ、みなさんも穏やかでありながらも神秘的な2人の作品を見比べながら楽しんでみてください。
文・写真:佐野里帆(山梨県立大学国際政策学部1年)