美術館が気になるそこのあなたへ
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先日(2021年11月10日)に山梨県立美術館で開催されている「シダネルとマルタン展 最後の印象派」に行ってきました。
アンリ・ル・シダネルとアンリ・マルタンは19~20世紀のフランスで活動しました。今回はそんな二人の作品を比較しながら紹介させていただきます。画面越しでは伝わりにくい芸術の魅力を最大限伝えられたらと思います。
こちらは、シダネルの「ビュイクール、月明かりのなかの教会」という作品です。
この作品は、少ない色数で夜の淡い光と影を対照的に描いています。
作品名に「月明かり」がついているのに月を描かず、あえて月光のみを描いているのはどうしてだろう?疑問に思いました。
こちらは、マルタンの「マルケロル、テラス」という作品です。
この作品は、テラスに並ぶ植物とテラスから見える景色を色の濃淡を分けることで距離感を表現しています。
テラスの床に光がよく反射していますが、これは床の材質によるものなのか?はたまた霞んだ空模様ということから雨に濡れているからなのか?様々な考え方ができますね。
それぞれの作品を比較してみると、シダネルの作品は大胆かつ粗いタッチで描かれているのに対してマルタンの作品は繊細かつ細かいタッチで描かれているように感じました。
別の視点から見てみると、さらなる発見がありました。
こちらはシダネルの「エタプル、砂地の上」という作品です。
この作品は、砂地に佇む男性と女性、草を食む動物たちとその風景を切り取ったものです。辺りにいる生物、草木、空。風景すべてを一つの作品のテーマとして描いているように思えます。
続いて、こちらはマルタンの「野原を行く少女」です。
大迫力ですね。(写真ではわかりづらいかもしれませんが)
とても大きなキャンバスに描かれた少女はまるで等身大かのように思える作品です。
先ほどのシダネルの作品とは対照的に、この作品は、奥にあるものほど淡く描き、手前にあるものほどはっきりと描くことで、風景全体ではなく一人の少女を力強く際立たせているように感じます。
同じ画派の作品は、一見同じ作風のように見えますが、よく観察してみると違いが見えてきます。作者によってタッチや描く対象、そして切り取り方は異なってくる。それぞれを比較して違った良さを発見するのは楽しかったです!
美術館には目を奪われる素晴らしい作品が多くありましたが、ここでは紹介しきれないので、気になる方はぜひ足を運んでみることをおすすめします。
インターネットの普及した現代、絵画はいつでもどこでも好きな時に見ようと思えばいくらでも見ることができますが、実際に見てみないと味わえない感動があります。ぜひ味わってみていただきたいです!
文・写真:山之口祐矢(山梨県立大学国際政策学部1年)