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「命なき生命体。」
ストランドビーストを見た私が一番に思った感想だ。プラスチックチューブと結束バンドで作られた無機質な物体。しかし、ひとたび風を受けると生命が宿り、輝きだす。
彼らにとって風とは「食」であり、生命の根幹だ。
しかし、彼らが風にあたり輝ける時間は限られている。なぜなら彼らの命の時間を決めるのは生みの親であるテオ・ヤンセンだからである。彼が「ビーストから全てを得た」と感じれば丘の上の墓場へとビーストは連れて行かれる。そして、再び陽の光を浴びる日まで、安らかな眠りにつく。
つまり、私が目にしたストランドビーストたちは、既に「生命の終わり」を告げられていた。だが、生命が終わっていても亡骸や剥製になるわけでもない、等身大のストランドビーストがそこには存在していた。いや、佇んでいたという方が適切だろうか。テオ・ヤンセン展に来ていたビーストたちは皆、静かな表現者として私たちに「何か」を訴えていた。私にはその「何か」が「乾いた渇望」のように感じてならなかった。彼らから受け取る「何か」は人それぞれ違うだろう。しかし、それもまたテオ・ヤンセン展の魅力だ。
ぜひ一度テオ・ヤンセン展に足を運んで頂き、無機質な彼らから感じる神秘的なエネルギーを感じてほしいと思う。
文・写真:氏原陽菜(山梨県立大学国際政策学部1年)